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IT・科学

中学生の「コンビニ昆虫」研究が話題 立地と照明、執念の調査

 虫が集まるコンビニと、集まらないコンビニの違いは何か――。三重県の中学1年生の調査研究が「すごい研究だ」とツイッターで話題を呼んでいます。

津市内のコンビニ店で採集された昆虫の標本
津市内のコンビニ店で採集された昆虫の標本 出典: 三重県立総合博物館提供

目次

 虫が集まるコンビニと、集まらないコンビニの違いは何か――。三重県の中学1年生の調査研究が「すごい研究だ」とツイッターで話題を呼んでいます。津市内の延べ60店舗以上のコンビニを調査。採集した昆虫を会社別に分類した標本を完成させました。大阪で今月開かれる日本昆虫学会でポスター発表を行います。

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きっかけは父の車に付いた「触角」

 調査したのは津市立橋北中学校の1年生、西川充希君。大の昆虫好きです。自宅近くの県立総合博物館にある林で、毎月、昆虫の観察や採集、標本づくりに精を出しています。

 そんな西川君が昨年の夏休みの自由研究で調べたのが「虫が集まらないコンビニのひみつ」。同じ津市内のコンビニでも、たくさんの虫が集まってくる店舗と、そうでない店舗があることがわかり、その理由を調べました。

 今月、博物館で研究を紹介したところ、ツイッターで「中学生の研究が面白かった」と一気に拡散。「すごい研究だ」などと大きな話題を呼んでいます。

津市内のコンビニ店で採集された昆虫の標本
津市内のコンビニ店で採集された昆虫の標本 出典: 三重県立総合博物館提供

 きっかけは昨年6月、夜にコンビニに寄って帰宅した父親の車に、昆虫の触角が付いているのを見つけたこと。父が立ち寄ったコンビニを訪ねてみると、店前には確かにたくさんの昆虫が飛び交っていました。「ほかのコンビニでもいっぱい見つけられるかも」。そう思って別店舗を訪ねましたが、ほとんど採集できませんでした。「なんでやろ?」。そこからこの研究が始まったのです。

延べ60店舗を調査

 夜の「コンビニ昆虫」観察は午後8時ごろからスタート。父親は車の運転係、母親は記録係として西川君をサポート。雑木林に近いところにあるコンビニや池に近いコンビニ、田んぼに囲まれたコンビニなど、さまざまな立地環境にある延べ60店舗を訪ね回りました。

 見えてきたのは立地条件の違いによって、集まってくる虫の数や種類が違うということ。ふだんから西川君の指導にあたっている県立総合博物館の昆虫担当学芸員・大島康宏さん(38)はこう話します。

 「街中のコンビニだと、近くに昆虫が住める場所があまりないということでやっぱり昆虫は少ない。でも近くに林がある場合だと虫がコンビニに一極集中してきますので、多くなります。また、近くに池があると水生昆虫も多く見られました。こんな風にコンビニの立地条件よって集まる虫の数や種類が違うことがわかりました」

虫が多かったコンビニは…

 それだけではなく、コンビニ各社の店舗で使われている照明の状態も「コンビニ昆虫」の多寡に影響しているのではと西川君は考えました。

 西川君はまず、簡易分光器を使って光のスペクトルを調べました。すると、いつも昆虫が少ないコンビニはLED電灯を多用しているなどの理由で光がとても弱いことがわかりました。

 次に紫外線透過フィルターでも調べました。紫外線のほかに青、青紫に敏感な「虫の目」になってコンビニの光を検証してみたのです。結果、虫が少ないコンビニは店内の照明だけが青っぽく目立ったり、外の看板も店内も暗く見えたりしました。これは、セブン―イレブンやローソン、ファミリーマートがそうでした。

 ただ、一つだけ全体が青っぽく浮かび上がるコンビニがありました。「サークルK 津大里店」です。同店で採集できた昆虫の数は他店よりずっと多く、西川君は「神コンビニ」と命名。周囲は山や池、田んぼに囲まれていますが、海辺でよく見られるコガネムシ科のシロスジコガネもたくさん発見できたそうです。

紫外線透過フィルターでコンビニの外観を撮影した写真。左端が昆虫がよく集まる店舗
紫外線透過フィルターでコンビニの外観を撮影した写真。左端が昆虫がよく集まる店舗 出典: 三重県立総合博物館提供

 研究報告のために作ったパネルでは、こう締めくくられています。

 「今後、コンビニの虫対策が進んでいくと、コンビニに虫が集まることはどんどん少なくなっていくかもしれません。でも、コンビニに集まる虫を採集観察することでその地域の自然環境や昆虫の分布状況などを知ることができると思います。そしてそのことをもとにして、昔と比べて環境の変化が激しい現代において、それぞれの地域の自然保護に必要な対策を考える足がかりにできると思います」

 「虫が集まらないコンビニは掃除も楽で便利かもしれませんが虫が集まるコンビニもずっとあって欲しいと思いました」

採集できた昆虫で1ケース埋まってしまうほど、たくさんの昆虫でいっぱいだった「サークルK 津大里店」
採集できた昆虫で1ケース埋まってしまうほど、たくさんの昆虫でいっぱいだった「サークルK 津大里店」 出典: 三重県立総合博物館提供

 今回の「コンビニ昆虫」の中では、コガネムシ科のミツノエンマコガネの老化した珍しい個体を発見しました。今月27日には、大阪府立大学中百舌鳥キャンパス(堺市)で開催される日本昆虫学会大会で、コンビニ昆虫研究のポスター発表を行います。西川君は「たくさんの人に話を聞いてもらいたい」と意気込んでいます。

 学芸員の大島さんは「自分も小学生のころから博物館に通って虫好きになってこの仕事をしています。西川君も将来は学芸員になるのかな」とぽろり。同館では急きょ、3月10日から4月10日まで西川君の標本を展示することを決めました(3月26・27日は学会出展のため、写真展示)。

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