お金と仕事
ブラック企業を見抜くには? 就活生が見落としがちな「あの資料」
2016年春に卒業する学生の就職活動がスタートした3月1日夜、東大生らによるブラック企業を見抜くイベントが開かれました。
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2016年春に卒業する学生の就職活動がスタートした3月1日夜、東大生らによるブラック企業を見抜くイベントが開かれました。
2017年春に卒業する学生の就職活動がスタートした3月1日夜、東大生らによるブラック企業を見抜くイベントが開かれました。「売り上げと利益だけで判断できる?」「財務指標の見方は?」「中期経営計画ちゃんと読んだ?」。大企業に入っても安心できない時代、熱を帯びた議論が交わされました。
東大本郷キャンパス近くの会場で開かれた今回のイベント、合同説明会を終えた東大生ら約30人の学生が集まりました。イベントは、『進め!!東大ブラック企業探偵団』(講談社)の出版を記念して開かれました。
『進め!!東大ブラック企業探偵団』の著者は現役の東大生、大熊将八さんです。経済学部4年の大熊さんは、京都大学客員准教授の瀧本哲史さんが主宰するゼミで企業分析の手法を学びました。
『進め!!東大ブラック企業探偵団』では、財務指標など公開情報を使ってブラック企業を暴く架空のサークルを舞台に、企業の実名をあげながら、銀行やメディアなど業界の実態に迫りました。
イベントで大熊さんは、売り上げと利益だけでは企業の実態がつかみにくいことを指摘しました。例として、2015年4月に民事再生法の適用を申請した東証1部上場の商社「江守グループホールディングス」の事例を分析。売り上げと利益だけ見ると順調に成長しているように見えたのが、実態は中国での事業に失敗。債務が膨らんでいました。
実は、「江守グループホールディングス」の実態にいち早く気づいたのが、瀧本ゼミのメンバーでした。イベントでは、就活でも、売り上げと利益だけでなく、財務指標を調べて、企業がどれだけ資産を持っているか把握する大切さが話し合われました。
次に注目したのが、「中期経営計画」です。多くの企業は投資家向けに、自社の成長戦略を説明した資料をネットで公開しています。会社案内と違って、実践的な情報が多く、学生が抱くイメージと企業が重視している事業に差がある場合も少なくありません。
例えば、パナソニックは一般的に電機メーカーと思われていますが、「中期経営計画」を読み込むと、住宅関連の事業を強化していく記述が目立ちます。
広告会社の電通は、海外の会社の買収を積極的に進めており、国外の事業に力を入れています。テレビコマーシャルを作る会社という意識で採用試験を受けると、ミスマッチが起こりかねません。
裏技として「IRに電話をする」手法も紹介されました。上場企業には、投資家の質問に答える「IR」の部署があり、電話で応対してくれます。
「投資を考えている」という意味では学生も社会人も関係ありません。就活イベントで説明される情報だけでなく、投資家向けの詳しい情報があれば、ブラック企業かどうか、見抜く手がかりが増えます。
イベントの最後には、実際に、学生たちがスマホを片手に企業分析を行いました。
食品業界を調べた学生は、寿司の味が「まずくなっている」と感じていたある回転寿司チェーン店を調べました。公開資料から、カラアゲやスイーツなど、寿司以外のメニューを充実させていることがわかり、「本業の寿司の味に変化が起きたのでは」と結論づけました。
イベントを企画した大熊さんは「就活だからといって、就活サイトの情報だけに頼る必要はありません。転職サイトには、給料への不満など赤裸々な情報があふれています。経済誌のジャーナリストのように、利害関係のない立場からの情報を意識的に集めることが重要です」と話していました。
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