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ボードゲームファン急増中 電気使わない、渋すぎる世界の魅力とは?

電気を使わない「アナログゲーム」の人気が高まっています。昨年11月に開催された国内最大規模の展示会「ゲームマーケット」には、最多の9500人が来場しました。

ゲームデザイナーの佐々木隼さん(左)と、長男の吾朗くん。第1回「ゲームマーケット大賞」に輝いた「海底探険」を発案した
ゲームデザイナーの佐々木隼さん(左)と、長男の吾朗くん。第1回「ゲームマーケット大賞」に輝いた「海底探険」を発案した

目次

 「渋すぎるボードゲーム」として話題になった「枯山水」をはじめ、ボードゲームやカードゲームなど、電気を使わない「アナログゲーム」の人気が高まっています。国内最大規模の展示会「ゲームマーケット」は、2015年から「ゲームマーケット大賞」を設立。第1回の大賞に輝いた「海底探険」は、ゲームデザイナー佐々木隼さん(36)と、長男で小学2年生の吾朗くん(8)の初めての合作です。吾朗くんが隼さんに話したストーリーを元に、このゲームが誕生しました。お二人に、受賞への思いや今後のゲームづくりについて話を伺いました。

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アナログゲーム人気、SNSが一役?

 2015年11月に開かれた「ゲームマーケット2015秋」には、408ブースが出展。2013年の開催時には5000人だった来場者数は、過去最多の9500人に達しました。ゲームマーケット事務局の責任者を務める、株式会社アークライトの刈谷圭司さんによると、かつては来場者のほとんどが男性だったそうですが、ここ数年で徐々に女性やファミリー層が増えてきているそうです。

 アナログゲームファンが拡大している理由について、刈谷さんは「SNSの発達」を挙げます。SNSで気軽に連絡を取り合えるようになったことで、ファンが集まって様々なゲームを遊ぶ「ゲーム会」の調整が楽になり、特に首都圏ではたくさんのゲーム会が開かれるようになっているといいます。


 またSNSが普及したことで、かえって直接顔を合わせて遊べるアナログゲームの価値が高まり「良質なコミュニケーションを促すボードゲームが、世の中に好意的に受け止められているのではないか」と、刈谷さんは見ています。更にアナログゲームで遊んだ人が「楽しかった」などの感想をSNSで発信することが「ボードゲームユーザーの拡大につながり、ひいてはゲームマーケット来場者の拡大につながっているのではないか」と推測。SNSを通じて、アナログゲームが広がる好循環が起こっているのでは、と指摘します。

 ゲームマーケット事務局は「日本のボードゲームデザイナーさんの努力に報いたい。また普段ゲームを遊ばないような方々が、何で遊べばいいのか迷わないよう、一つの指針となれば」という思いから、2015年に「ゲームマーケット大賞」を設立。500作品を超える新作の中から第一回大賞を受賞したのが、ゲームデザイナー佐々木隼さん(36)と、長男・吾朗くん(8)が作者の「海底探険」というゲームです。

「海底探険」の作者、佐々木隼さん(左)と吾朗くん。吾朗くんが将来なりたい職業の候補はたくさんあるそうですが「ゲームを作る人」もそのひとつ
「海底探険」の作者、佐々木隼さん(左)と吾朗くん。吾朗くんが将来なりたい職業の候補はたくさんあるそうですが「ゲームを作る人」もそのひとつ

小1発案のアナログゲームが初の大賞に

 「海底探険」は、各プレイヤーが探検家となって海底に眠る財宝を取りに行く、サイコロを使ったすごろくのようなゲーム。探検家全員で共有している空気がなくなる前に、より多くの財宝を潜水艦に持ち帰ったプレイヤーが勝ちとなります。深く潜れば潜るほどレベルの高い財宝を得られるのですが、財宝をたくさん持つとそのぶん重くなるため、進める数が減ってしまうだけでなく、空気の減りが早くなります。潜水艦まであと少し……というところで空気がなくなってしまうこともしばしば。プレイヤーの人数やゲームの進め方によってゲーム展開が変わるため、何度も楽しめるゲームです。

 株式会社オインクゲームズの代表取締役を務める佐々木隼さんは、これまでにゲームデザイナーとして「小早川」や「藪の中」などの作品を発表してきました。「数年前から、吾朗と一緒にお風呂に入っているときとかに、ゲームを作るうえで苦労していることを話していました。そうすると、吾朗も『こんなのがいいんじゃない?』と一緒に考えてくれるんです」

ゲーム「海底探険」。潜水艦を起点として、レベル別にチップをつなげていく。潜水艦から遠い方が、深海になる
ゲーム「海底探険」。潜水艦を起点として、レベル別にチップをつなげていく。潜水艦から遠い方が、深海になる
ゲーム「海底探険」の潜水艦ボードとコマ。ボードには、空気の残量を示す目盛りがついている
ゲーム「海底探険」の潜水艦ボードとコマ。ボードには、空気の残量を示す目盛りがついている

 「海底探険」も、そんな親子の会話から生まれたもの。当時小学1年生だった吾朗くんが、テレビゲームのひとつをきっかけに「みんなで海の中に潜って、宝をとって潜水艦に戻ってこなければならない」というストーリーを、隼さんに話しました。隼さんによると「ゲームの核となる、『財宝を拾えば拾うほど、重くなって潜水艦に戻りにくくなる』というジレンマが、吾朗が考えたストーリーには最初から組み込まれていた」そうです。

 吾朗くんのストーリーをベースに、隼さんがルール化してゲームを作り上げていき、3カ月ほどでゲームが完成しました。「子どもと大人が同列に遊べるゲームにしたいと思っていた」と隼さん。サイコロの出目が安定するよう、あえて1から3までの目のサイコロを2つ使うなど、工夫をこらしました。2014年10月の発売以来、売れ行きは好調でおよそ1万個売れているといいます。

箱の側面には
箱の側面には"Designed by Jun Sasaki and Goro Sasaki"の文字

 2015年11月に開催された秋のゲームマーケットで、「海底探険」は第1回ゲームマーケット大賞を受賞。審査員からは「隅々までよく練られたルール」「初めてボードゲームを遊ぶ方に勧めやすく、ゲームに慣れ親しんだ者同士でも、息が詰まる白熱の展開が楽しめる」(ゲームマーケットの公式サイトより)などと評価されました。

 受賞した瞬間は「緊張とびっくりしか、ありませんでした」と吾朗くん。受賞後は「海底探険」の箱にサインを求められることがあり「そこは恥ずかしい」と少しはにかんでいる様子でした。小学校に提出する日記に受賞のことを書いたり、日直当番のスピーチで話をしたりしたそうです。

 一方、隼さんは「特にボードゲームの制作を始めた当初は不慣れなことも多く、ファンの方々から厳しい意見をもらうこともありました。でも大賞をとったことで、ある程度は受け入れられた感じがして、感慨深かったです」と振り返ります。

財宝のチップや潜水艦のボード、カラフルなコマなどのデザインも「海底探険」の魅力のひとつ
財宝のチップや潜水艦のボード、カラフルなコマなどのデザインも「海底探険」の魅力のひとつ

「ジレンマがあるゲームがいい」

 隼さんと一緒にゲーム会に行くこともあるという吾朗くん。大人に勝つこともしばしばあり、勝ったときは「めちゃくちゃ強いボスを倒した感じがする」そうです。

 「ジレンマがあるゲームがいいなって思う。そのゲームで悩んだり、ドキドキしたりするのが好き」。佐々木さん親子と3人で「海底探険」をプレイしてみたところ、財宝を拾うか拾わないかを選択する場面で「うーん……拾わない!」などと迷う様子が、非常に楽しそうでした。


 ゲーム会にノートを持参し、思いついたことや面白かったことを書いているという吾朗くんは、「海底探険」以降も、ゲームの元となるストーリーやアイディアを隼さんに話しているそうです。その中から、隼さんがゲームにしてみたいと考えているのは「サーカス」と「クモの巣」をテーマにしたもの。ゲームが大好きな2人の合作が、また誕生するのか。人気拡大中のアナログゲームと共に、佐々木さん親子のこれからにも注目です。

     ◇

 ゲーム「海底探険」は、オインクゲームズのサイトのほか、アマゾンやゲーム専門店などで購入することができます。価格は2376円(税込)です。

ゲームデザイナーの佐々木隼さん(左)と、長男の吾朗くん
ゲームデザイナーの佐々木隼さん(左)と、長男の吾朗くん

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