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「鬼平部活やめるってよ」珍タイトル作成ゲーム 横暴編集長が拡散中

本のタイトルを上下に分割したカードを組み合わせ、面白いタイトルを作るカードゲーム「横暴編集長」がSNS上で人気を集めています。

「横暴編集長」でできるタイトル。「ドリトル先生、恋がしたい!」「フランダースの、劣等生」。できあがった珍タイトルの内容を想像して楽しめる
「横暴編集長」でできるタイトル。「ドリトル先生、恋がしたい!」「フランダースの、劣等生」。できあがった珍タイトルの内容を想像して楽しめる

目次

 「鬼平部活やめるってよ」「アンドロイドは妹がいる」「八十日間つかまえて」――。本のタイトルを上下に分割したカードを組み合わせ、面白いタイトルを作るカードゲーム「横暴編集長」がSNS上で人気を集めています。販売元のサイトでは、入荷してもすぐに売り切れになってしまうほど。採算度外視で作ったため、売れば売るほど赤字になるという不条理な状況に。企画したゲーム会社は、休日返上で出荷のための作業をしています。

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古典×ラノベで生まれる珍タイトル

 「横暴編集長」は、本の題名を上下に分けた2種類のタイトルカードを組み合わせ、新たなタイトルを作るゲーム。各プレイヤーが編集者となり、お題となるカードと、自分の手持ちのカードを使って面白いタイトル案を考え、正式採用を目指します。

 タイトルカードには「ライ麦畑で」「少女ハイジ」「時を求めて」「メロス」といった誰もが知る名作や、「アヒルと鴨と」「部活やめるってよ」など最近の小説、また「とある魔術の」「恋がしたい!」などライトノベルもあり、扱われているジャンルは多岐にわたります。

 カードはシャッフルしてから配られるため運の要素が強いのですが、限られたカードから面白いタイトルを作り上げる、プレイヤーの工夫の余地があります。なんといっても醍醐味は、できあがったタイトル案の中から面白いと思うタイトルを決めるところ。ゲームに参加しているみんなで、選んだ理由を話し合ったり、タイトルから本の内容を妄想すると更に盛り上がります。

「横暴編集長」の箱は、文庫本を思わせるデザイン。表には「鹿馬文庫」と「放談社」の字
「横暴編集長」の箱は、文庫本を思わせるデザイン。表には「鹿馬文庫」と「放談社」の字

本好きがわずか1カ月で企画・制作

 このゲームを作ったのは、東京・神田にあるジャンクションという会社です。これまで主にデジタルゲームを作ってきましたが、取引先から依頼を受けて同人ゲームとして「横暴編集長」を企画・制作。5月に開催された、電気を使わない「アナログゲーム」を扱う「ゲームマーケット」というイベントに出展したところ来場者の話題をよび、100セット用意したゲームが売り切れとなりました。

 ジャンクションの社長・小栗丈知さん(49)は、「カードゲームをずっと作ってみたいと思っていた」そうです。企画・制作期間はわずか1カ月でしたが、上の句・下の句を合わせて200枚あるタイトルカードの選定には、しっかり時間をかけたといいます。

 「組み合わせてイマジネーションが広がるようなタイトルを選びました」と、小栗さんと一緒にゲームを企画したディレクターの松方哲哉さん(49)。20代の社員も交え、幅広い年代に受け入れられるタイトルを厳選しました。

 小栗さんと松方さんは、2人とも文学部出身。「いちから本のタイトルを選ぶのは大変ですが、2人ともよく本を読んでいるので。だから1カ月でも作れたのだと思います」と松方さん。カードを納める箱も、文庫本を意識したデザインになっています。

「横暴編集長」を企画・制作した、有限会社ジャンクションの小栗丈知さん(左)と松方哲哉さん(右)
「横暴編集長」を企画・制作した、有限会社ジャンクションの小栗丈知さん(左)と松方哲哉さん(右)

SNSでの広がり意識、狙い通りに

 ツイッターでは「横暴編集長」で遊んだ後に、正式採用されたタイトルをアップする人が相次いでいます。「鬼平部活やめるってよ」「フランダースのゾンビですか?」など、見ると思わずにやにやしてしまうようなタイトルが並びます。

 小栗さんと松方さんが当初から意識していたのも、SNSでの広がり。企画を考えていた頃、渋すぎるボードゲームとして人気の「枯山水」で、できあがった庭の写真をツイートする人が増えていました。「これからの時代、僕らもSNSでどんどん広がるようなゲームにしたいねと言っていました」と小栗さんがふりかえります。まさに狙い通りです。



作れば作るほど赤字…価格改定を決意

 5月のゲームマーケット出展後も「横暴編集長を買いたい」「店に置きたい」という問い合わせがあったことから増産することに。自社の通販サイトやアナログゲーム専門店などで販売するようになります。11月に開催されたゲームマーケットにも出展、これまでに900セットを販売しました。

 ところが、200枚というカードの種類の多さから、仕分けに非常に手間がかかるこのゲーム。注文に生産が追いつかない状態が続いています。「企画したのはカードを仕分けする前だったので、やっぱり200枚ぐらいないと面白くないよね、と決めてしまいました」と松方さん。小栗さんも「この企画は、僕らがカードゲームの素人だからできたのだと思います。無謀というか…」と苦笑いをしていました。

 カードの仕分けや箱入れは全て社員の手作業で、休日や終電まで作業が続くことも。手作りの道具などで工夫することで、作業をスピードアップできるようになってきましたが、小栗さんによれば「作れば作るほど赤字になるという状況」なのだそうです。

 元々はコストを度外視した価格でしたが、ついに価格改定を決意。1月1日からは、税込み3024円で販売することになりました。


次回作も「考えています」

 初めて作ったカードゲームが、予想を上回る反響をよんだ「横暴編集長」。作業は大変ですが、ツイッターでの「面白かった」「やってみたい」などの反応を見ると「やってて良かった」と思うそうです。

 中学・高校時代はボードゲームで遊び、大人になってからはデジタルゲームに関わってきた2人。「どう楽しんでほしいか、どう遊びをつくるかという点では本質的には変わらないんです」と松方さんは言います。「アナログゲームもまた作りたいですし、デジタルゲームもデジタルゲームで面白さがあるので、どちらも作っていきたいですね」という小栗さん。既に次回作についても、考えているそうです。

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