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72歳DJ・美人の獣肉料理…キャラの濃い人々集めた「仕事本」
「72歳のDJ」「ウーパールーパー料理を作る美人デザイナー」。キャラの濃い登場人物を通して、働くとは何かを考える本の企画が進行中です。
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「72歳のDJ」「ウーパールーパー料理を作る美人デザイナー」。キャラの濃い登場人物を通して、働くとは何かを考える本の企画が進行中です。
先行きが見えない時代だけからこそ、いろんな働き方をしている人たち100人にインタビューしよう――。そんな本の企画が、東京のコワーキングスペース発で動いています。「72歳のDJ」「ウーパールーパー料理を作るグラフィックデザイナー」。キャラの濃い登場人物を通して、働くとは何かを考える内容です。出版資金をクラウドファンディングで募り、だれでも編集に参加できる企画。新しい本作りの現場をのぞいてみました。
毎週末、深夜の青山など都心のクラブで、ラテン系の音楽が響きます。音楽を響かせ、踊る若者たちから「KUMEちゃん」と呼ばれるDJは、72歳。第二の人生を歩んでいる、かつては中南米の国々で働いた元商社マンです。
ウーパールーパーや鹿、ワニ、カンガルーといった獣肉料理を出す料理店。経営するのは、美人グラフィックデザイナー宮下慧さん。二足のわらじで独自のセンスの装飾のほどこされた店は人気を呼び、高田馬場の「獣肉酒家 米とサーカス」など5店舗になりました。
こんな100人に働き方を尋ねて書かれる本の名前は「いま東京で『働くとは何か』を考える本 『WE WORK HERE』」。動物王国のムツゴロウさんとして有名な畑正憲さんや、20年間小学校教員を務めた後、珈琲店を始めた男性にも働くというテーマで話を聞いています。
来春出版予定のこの本を企画したのは、東京のコワーキングスペース「みどり荘」のメンバーです。
みどり荘は2012年、家具などのセレクトショップ「イデー」の創業者、黒崎輝男氏らが作った場で、たくさんの漫画家を輩出したトキワ荘のように、いろんな人が生まれることを目指してつくられました。
みどり荘の創業メンバーで運営をになう小柴美保さん(34)は、みどり荘を作った理由を「これからは働き方が変わる。新しい働き方をする人たちが当たり前に過ごせる場を作りたかった」と説明します。
大学卒業後は、シティーグループで日本株を分析し、国内外の機関投資家に売っていました。あるとき、ソニーの方が技術力があるのに、アップルの株が高いのは、「ものありきではなく、どういうライフスタイルになってほしいかも考えているから」と感じたそうです。
その経験が、自らも新しい生き方や価値観を作りだすことを目指そうと、今の転身につながりました。
そんなみどり荘のコンセプトにひかれ、立ち上げの頃から関わる編集者の清田直博さん(38)が中心となって、今回の本の企画を考えました。
「肩書を一言で表せない仕事もでてきている。今後、産業構造が大きく変化するなかで、同じ仕事がずっとあるかわからない時代だからこそ、いろんな選択肢をみてほしい」と感じて、本で紹介したいと思ったそうです。
今回は3千冊分の印刷代に相当する88万円を目標にして、クラウドファンディングで出版資金を募っています。
完成した本を贈るから始まって、編集会議に参加したり、取材に参加したり、本の卸値より安く仕入れたり、販売協力店になったり、広告を載せたりする権利――などの枠で、お金をだして、本づくりに参加する仕組みです。
クラウドファンディングをすれば、どれくらいの人が関心があるかもわかり、目標額に届かなかった場合などでも部数を減らして、リスクを減らすことができます。販売協力の店を仰ぐことで、清田さんは「(出版社の本を流通させる)出版取次を通さなくても本を売れるような仕組みをつくることにも取り組んでいます」と話します。
本の企画をインターネットのページで知って、5000円を投じて編集に参加している人たちもいます。
11月30日夜に開かれた第二回目の編集会議。この日初めて参加したIT系企業でCADを開発している阿部大如さん(38)は、参加した理由を「時代の変化は早い。10年後いまやっている仕事はなくなるかもしれないのだから、会社で言われていることだけやるのではなく、自分で色んなものと関わっていくことが遅れないコツ」といいます。
この日、二度目の参加だったのは外資系企業で人事で働く畑中貴久子さん(39)と元会社員永本真一郎さん(37)。2人は普段から、働き方やこれからの日本について語り合ってきて、会議の場でも、今後インタビューしたら面白い人を提案。そのアイディアは本の企画に反映されました。
2人はインタビューの文字起こしにも参加しています。永本さんは、高知に移住したプロブロガーのイケダハヤトさんとニート株式会社の若新雄純さんのインタビューを文字起こししました。1本を起こすのにつき、3~4時間かかります。
お金を払ってまでメモ起こしの仕事をするわけですが、「いつも形になったものを読んでいるわけですが、質問もふくめて、インタビューそのものを聴くのが面白い。実は、迷いながら話していたりするときもあって、そんなニュアンスも含めておこすことも意識しました」と永本さん。
畑中さんは「今回参加したことで、走りながら企画をつくり、場をひらいて人の力を借りながら実現するやり方も知ることができたので、今回は一歩を踏み出してみようと思いました」と話していました。
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