IT・科学
先生が何も教えない学習塾 人工知能で教材が成長 人間の役割は?
今年、東京・三軒茶屋に奇妙な数学塾が開校しました。生徒がタブレットで問題を解いている間、講師は見ているだけ。人工知能がこんなところにも出現しています。
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今年、東京・三軒茶屋に奇妙な数学塾が開校しました。生徒がタブレットで問題を解いている間、講師は見ているだけ。人工知能がこんなところにも出現しています。
今年、東京・三軒茶屋に奇妙な数学塾が開校しました。生徒たちがタブレット端末を使って問題を解いている間、講師はその様子をほぼ見ているだけ。解き方を教えることがなく「授業」は終わります。生徒が使っているのは、入力した解答から一人ひとりに合わせた問題を出すという人工知能(AI)を活用した教材。英語学習でも人工知能システムを開発した企業が登場しました。
この数学塾は中学生を対象にした「Qubena(キュビナ)アカデミー」。生徒たちはテキストやノートではなく、タブレットのAI教材「Qubena」で方程式や関数、文章問題などを解いていきます。キュビナは解答のほか、かかった時間や答えを導き出すまでの過程もデータとして収集し、生徒の得意・不得意を解析。約7千問あるデータベースの中から、生徒の理解度に合わせて問題を出し続けます。問題にはアニメーションやイラストによる解説があるので、生徒は自力で学習を進めることができます。
「『教えること』をキュビナに任せることで生まれた時間を、先生は生徒のやる気を引き出すことに使うことができる」。こう話すのは教材を開発した「COMPASS」(東京)の神野元基CEOです。キュビナでは、生徒の学習状況が一覧で分かる講師用のページも用意。「生徒がつまづいている部分をリアルタイムで知ることができるので、親身になって原因を解決できる」と説明しています。受講している中学3年の生徒は「紙とは違ってゲームみたいに楽しんでできるし、苦手な連立方程式が解けるようになった」と感想を話しました。
料金は1カ月8コマ(1コマ50分)で7000円。神野CEOは「AIと講師の力により、学習塾の3分の1の月謝で個別指導を上回る学習サポートができる」と話しています。
キュビナによる授業については、従来の進学塾も関心を寄せています。神奈川県を中心に展開する大手進学塾はIT担当者がキュビナアカデミーの授業を視察。担当者は「これまで見えにくかった生徒の学習過程が『可視化』されるのは魅力」とし、集団授業のレベルアップにもつながると見ています。神野CEOは「学習する習慣づくりは人工知能が補えない部分。これからも学習塾などと連携して事業を進めていきたい」と話します。
語学学習システム会社の「コーリ」(東京)は10月、開発したAI教材「COOORI(コーリ)」を使った企業向けのTOEIC対策プログラムを始めました。開始前に診断テストを実施し、その成績に基づいてCOOORIが問題を出題。教材にはリーディングやリスニング、タイピングなどの問題があり、解答者の理解度によって問題の難易度が変化します。
スマートフォンやタブレット端末で、学習時間は1回15分を1日3回。470~550点の人たちを対象にした12週間のプログラムでは、「最低100点のスコアアップにつながる」とコーリは説明しています。11月末時点で、8社が導入を決定。コーリのCEOでアイスランド出身のアルナ・イェルソン工学博士は「うまく活用をすれば、とても早いスピードで効果的に学習をすることができる」とAI学習の良さを語りました。
これまで、データ分析などの分野で活用がされてきた人工知能。学びの現場にもAIの波が訪れようとしています。
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