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梅毒はコンドームで予防できる? 専門家、厚労省の啓発に疑問の声

 感染者が増加傾向にある「梅毒」。厚生労働省は「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができる」と啓発を進めていますが、専門医から疑問の声が上がりました。

梅毒はコンドームで予防できる?
梅毒はコンドームで予防できる?

目次

 国内で感染者が増加傾向にある性感染症の「梅毒」。厚生労働省はリーフレットなどで「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができる」と啓発を進めていますが、これに専門の医師から疑問の声が上がりました。「梅毒はコンドームで予防できない」というのです。どういうことなのでしょうか。

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増加傾向にある梅毒患者

 国立感染症研究所の調べによると、今年10月28日時点で梅毒として医師から届け出があった症例数は2037例ありました。これは昨年同時期の1.5倍。2000例を超えたのは、感染症法で届け出が義務づけられた1999年以降で初めてのことです。男女別に見ると男性は1463例、女性は574例で、それぞれ昨年同時期の1.4倍、2.0倍でした。

増加傾向にある国内の梅毒患者数
増加傾向にある国内の梅毒患者数

 特に女性感染者の増加が顕著だったため、厚労省は「女子の梅毒増加中!」とアピールしたリーフレットを作成。そこでは「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」と強調しています。

「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」と強調した厚労省のリーフレット
「コンドームの適切な使用によりリスクを減らすことができます」と強調した厚労省のリーフレット

医師ツイート「梅毒がコンドームで予防できる???」

 しかし、このリーフレットを見た医師が「このパンフレットは早急に回収、修正して欲しい」とツイッターに投稿しました。投稿者は泌尿器科専門医の岩室紳也さん。


 HIV/AIDS診療に携わる一方で、若者に向けた性教育や講座を年100回近く実施しています。「コンドームの達人」を名乗り、テレビやラジオにも出演しています。

泌尿器科専門医の岩室紳也さん
泌尿器科専門医の岩室紳也さん 出典: 朝日新聞

 岩室医師は、コンドームの適切使用でリスクを減らせる性感染症として、

 ・性器クラミジア感染症
 ・淋菌感染症
 ・HIV/AIDS

を挙げています。適切な使用で「病原体と侵入経路の間に確実にコンドームがたちふさがる」ためです。しかし、

 ・梅毒
 ・性器ヘルペス
 ・ヒトパピローマウイルス感染症

については、病原体が存在する部分(病変)が「コンドームを装着できるところにあるとは限らない」と言います。むしろ「梅毒はコンドームを装着しないところに病変ができることも多い」と話しています。

厚労省「必ず防げるとしているわけではないので…」

 厚労省結核感染症課は、こうした指摘について「コンドームの適切な使用で必ず梅毒を防げるとしているわけではなく、あくまでもリスクを低下させることに有効であることをお知らせしている。また、専門機関や専門家と調整し、日本以外の例も参照した上で文言を決めているので、現時点では訂正の必要はないと考えています」とコメントしています。

 たまたまコンドームが装着できる部分に病変があった場合にだけ防止できることを「リスクを減らすことができる」としていいのかどうか――。厚労省の担当者は「梅毒を含む性感染症のリスクを低めることに、コンドームの適切使用は有効と考えています」と話していました。

     ◇

<梅毒> 性的接触などによってうつる感染症の一つ。原因は梅毒トレポネーマという病原菌。感染後約3週間で、感染部位(主に陰部、口唇部、口腔内、肛門など)にしこりができます。治療をしないで3か月以上経過すると、体全体に赤い発疹が出ます。さらに数年が経過すると皮膚や筋肉、骨などに腫瘍ができ、心臓、血管、脳などの複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることもあります。
 妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通して胎児に感染するおそれもあります。
 治療にはペニシリンなどの抗菌薬が有効です。

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