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パリのテロ ヘミングウェイ「移動祝祭日」がベストセラーに
パリのテロ後、1920年代のパリを綴ったヘミングウェイの「移動祝祭日」がベストセラーに。きっかけはある「おばあちゃん」のインタビューでした。
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パリのテロ後、1920年代のパリを綴ったヘミングウェイの「移動祝祭日」がベストセラーに。きっかけはある「おばあちゃん」のインタビューでした。
11月13日にフランス・パリで起きた、同時多発テロ。多くの人の命を奪ったこの事件のあと、ノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイがパリで過ごした青春時代を綴った本「移動祝祭日」がベストセラーになっています。フランス語版タイトルの“Paris est une fête”は、ツイッターのハッシュタグとして使われ、テロ現場にこの本と花を供えた写真をアップする人もいます。きっかけは、ある「おばあちゃん」のインタビューでした。
1920年代、最初の妻ハドリーと共にパリで暮らし、文学修業をしていた若きヘミングウェイ。「移動祝祭日」では、ガードルード・スタインやスコット・フィッツジェラルドなど、多くの芸術家たちと交流しながらパリで過ごした日々が、郷愁に満ちた筆致で描かれています。この本が書かれたのはヘミングウェイの晩年で、出版されたのはヘミングウェイが亡くなったあと、1964年のことでした。
フランスのアマゾンでは、ガリマール社のペーパーバック版の“Paris est une fête”は、11月24日の時点で全ジャンル中ベストセラー1位。大手書店Fnacのネットショップでも、1位に入っています。アマゾンに最近投稿されたレビューでは「11月13日のテロのあと、抵抗のシンボルとなった本」と書かれています。テロの現場で、花やロウソクと一緒にこの本を供える人もいます。
Recueillement pour les victimes #Bataclan "Paris est une fête" E.Hemingway #bougiespourparis pic.twitter.com/zmeMCWv5Ko
— Christophe Lubac (@chlubac) 2015, 11月 18
テロの後、この本が注目を集めたきっかけは、ある高齢の女性への街頭インタビュー。穏やかでありつつも力強い口調で、以下のように語った動画は、インターネットで多くの人にシェアされ、共感を呼びました。
彼女の言葉に感銘を受けた一人による、「この人が誰なのかを探しています、彼女に花を送るためです」というツイートは、1300回以上リツイートされました。その後ツイッターなどを通じ、彼女がダニエル・メリアンという名の引退した元弁護士であることがわかり、ネット上では「ダニエルおばあちゃん」という愛称で呼ばれるように。テレビ番組で新たなインタビューが放送されたほか、ツイッターでは「ダニエルに花を」という意味の「#DesFleursPourDanielle」というハッシュタグが使われ、インターネット上で募金まで行われています。
Je cherche l'identité de cette personne. C'est pour lui envoyer des fleurs.Le dernier qui RT est fan de Phil Collins pic.twitter.com/fB9yHIThwm
— Karim Boukercha ll (@Karim_Boukercha) 2015, 11月 16
「移動祝祭日」の中には、ヘミングウェイがハドリーと一緒に、セーヌ川にかかる橋の上からパリを眺める場面が出てきます。
お気に入りのカフェでカフェ・クレームを飲みながら短編を書き、セーヌ河岸の古本屋で本を探す。またある日はハドリーと競馬場に出かけた帰り、街を散歩をしてレストランで食事をする。ヘミングウェイが「移動祝祭日」で描いたのは、彼がこよなく愛したパリの日常風景です。
テロのあと、ツイッターでは「みんなビストロへ」という意味の「#tousaubistrot」や「私はテラスにいます」という意味の「#jesuisenterasse」など、あえてテロ以前とは変わらない日常生活を楽しもうという、ハッシュタグが使われています。
#OnEstEnsemble #jesuisenterasse biensur quon sortira boire nos bieres en terrasse! On lâchera pas notre vie pr vs! pic.twitter.com/WukDAUBwWI
— OMiste (@Omiste34350) 2015, 11月 20
およそ90年前のパリでの日常風景を綴ったヘミングウェイの本には、テロの後でもカフェやビストロで過ごす時間を大切にしようとする、フランスの人々の心に触れるものがあるのではないでしょうか。
日本語版の「移動祝祭日」は、福田陸太郎訳で三笠書房や岩波書店から出版された後、2009年に新潮文庫から、高見浩による新訳が出ています。
版元の新潮社広報部によると、11月24日時点で新潮文庫版は4刷3万1千部。フランスでベストセラーとなっている事実は知らなかったそうです。
この「移動祝祭日」がフランスでベストセラーになっているというニュースが英語メディアなどで報道され始めた21日頃からは、少し動きが出ているそうです。ただし、今回の出来事との関連はわからない、とのことでした。