エンタメ
サカナクション山口一郎、カラオケ館ジャック 音楽業界の未来を語る
快進撃を続けるサカナクション。フロントマンの山口一郎が、カラオケ館に出現した理由とは? 音楽業界への未来について語った。
エンタメ
快進撃を続けるサカナクション。フロントマンの山口一郎が、カラオケ館に出現した理由とは? 音楽業界への未来について語った。
――NFで企んでいるのは、まさしくそういうことなのでしょうか。
音楽は色んな文化、ジャンルのスタート地点のような気がしているんです。自分の周りにいる人たちに話を聞くと、皆さん音楽大好きなんですよね。たとえば、インテリアデザイナーの片山正通さんや、(いずれもファッションデザイナーの)アンリアレイジの森永邦彦さん、カラーの阿部潤一さんとか。スープストックトーキョーを展開するスマイルズの遠山正道さんもそうです。若い頃に音楽を聴いて遊んでいて、そこから色々なヒントを得て今の仕事に就いている。
フェスに1日5万人、6万人も集まるわけで、そういう若者たちが、「音楽にかかわる音楽以外の仕事」に触れられる場所が東京にあればいい。大げさなこと言うと、アンディー・ウォーホルの「ファクトリー」みたいな場所ができたらいいな、と思ってNFをつくりました。一流の人たちが好きに遊べる場所で、リアルな体験から知らぬ間に吸収できるっていうのが、僕にとってエネルギーになっている。すごく未来を感じるんですよね。
大抵そういうものって業界人だけが集まるようなイベントになりがちですけど、NFが目指すところは違う。ダンスミュージックは初めてという人が踊り、アートに縁のなかった人たちが自然にアートに触れる。そういう状況をつくりたい。
――業界の内輪イベントではない、オープンな形を志向しているわけですね。
人間がつながったことで起こる化学反応を、リスナーが体感できるっていうのがすごく重要。東京のミーハーな部分とアンダーグラウンド性っていうのが、ちゃんと混ざり合った変な空間になってるんじゃないかな。今までなかった気がしますけどね、こういった場は。
――以前の取材で、エンターテインメント性の強い楽曲を「表」、通好みの楽曲を「裏」と表現していました。テレビ番組への出演や武道館公演を「表」とするなら、NFのイベントは「裏」に位置づけられるのでしょうか。あるいは、表も裏も内包していくイメージなのか。
表と裏を内包することで、裏を表にする。裏も表もないものにしていく、というのがNFの活動。エンターテインメント性も絶対に必要です。なぜかというと、いきなりぶっ飛んだことをすると、手を伸ばしても届かないと思われちゃうから。そうじゃなくて、手を伸ばせば届く、一歩先のことをしていきたい。
――規制の影響などもあり、日本のクラブカルチャーが元気をなくしている気がします。必ずしも今の若者にとって、クラブ=最先端ではないのかもしれない。そんな時代にあって、NFは古き良きクラブカルチャーを復興し、再定義しようとしているようにも見えます。
もっと俯瞰で見ると、現代って色んなツールがあって、自分の好きなものを好きなように選べる時代になっている。よかった部分もあるけど、今おっしゃったような問題もあるんだと思います。
ただ、一番の大きな問題は、今の世の中が「難しい」=「面白くない」になってしまっていることです。僕は「美しいものは難しい」と思っていて。難しいもの、理解できないものほど面白い。そして、その感動を得てもらうには、1回体験して理解してもらわなきゃいけないんですね。
だから僕らは、体験してもらう場所をつくっていくことがすごく大事だと思っているし、そこでマネタイズしようとも考えていない。みんなが遊びに来て使ったお金が、そのまま次のイベントに投資される。自分の好きなダンスミュージックが、また鳴ってくれるっていうサイクルができるたらいい。そもそも音楽でお金儲けしようっていうこと自体、今の時代ナンセンスですから。