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涙が出ないタマネギ、ついに誕生 1万個調査、涙ぐましい努力の結晶
切っても涙が出ないタマネギ「スマイルボール」の商品化にハウス食品が成功しました。苦節10年、様々な困難を乗り越え、生み出された発明でした。
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切っても涙が出ないタマネギ「スマイルボール」の商品化にハウス食品が成功しました。苦節10年、様々な困難を乗り越え、生み出された発明でした。
熱帯病のワクチンでノーベル医学生理学賞を受賞した大村智さんに匹敵する、かもしれない発明が生まれました。切っても涙が出ないというタマネギ、その名も「スマイルボール」。涙の出る仕組みを解明し2013年に「イグ・ノーベル賞」を受賞したハウス食品グループ本社が商品化に成功しました。プロの料理人からそうじゃない人まで、多くの人に「笑顔」をもたらすであろう、このタマネギ。苦節10年、様々な困難を乗り越え、生み出された発明でした。
スマイルボールは、タマネギの涙が出る成分を抑えた新しいタマネギです。切ったときに目にしみないことに加え、特有の辛みもないため、タマネギが本来持つという甘みが感じられるそうです。生産は、北海道の契約農家に委託しています。
ハウス食品では1990年代から主力商品のレトルトカレーの製法を研究する中で、タマネギの成分を調べ始めました。ハウス食品によると、タマネギは、その中には目が痛くなる成分は入っていません。包丁で切ったときに初めて目が痛くなる成分が作られ、それが目に入ると涙が出るそうです。ハウス食品ではこの成分を作り出す酵素を発見し、タマネギを切ると涙が出る仕組みを解明しました。2013年には人々を笑わせ、考えさせる研究や業績に贈られる「イグ・ノーベル賞」の化学賞を受賞しました。
名前の由来は「涙を流さなくなることで、全てのお客さまが笑顔(スマイル)になる新しいタマネギでありたい。これまでのタマネギにとらわれず、新しい食べ方や食シーンをお客さまと一緒に(キャッチボールをしながら)創造できるタマネギでありたい」との想いがあります。
ただ、開発は「一種のかけのようなもの」(正村典也・新規事業開発部チームマネージャー)。一般的な品種改良で行われている手法で、タマネギの突然変異を誘発し、目が痛くなる成分を作り出す酵素の働きが弱いタマネギを探し出そうとしました。ただ、それは実際に育ててみて成分を調べないとわかりません。毎年畑で栽培し、収穫し、成分を調べる。これをひたすら続けました。これまでに調べたタマネギは1万個近く。開発には約10年を費やしました。
でも、本当に涙は出ないのでしょうか。筆者もタマネギを切るときはゴーグルが欠かせず、涙を流してきたことは数知れず……。ハウス食品グループ本社東京本社にあるキッチンで、実際にタマネギを切らせていただきました。見た目は一般的なタマネギを変わりません。包丁で切ってみると……ほのかにツーンとした匂いはありますが、涙はもちろん、目の痛みもありません。これならいくらでも切れそうです。食べてみると、タマネギ特有のシャキシャキ感はありますが、辛みはほとんど感じず、逆にほんのり甘さがありました。
スマイルボールの価格は、約400グラム(中玉2個相当)で税別450円を想定しています。10月27日から伊勢丹新宿店、10月29日からはネットスーパーの「オイシックス」で、ともに数量限定で販売予定です。
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