話題
ノーベル賞の大村智さん、美術館丸ごと寄贈の原点 母が飾ったミレー
ノーベル医学生理学賞に決まった大村智・北里大特別栄誉教授は、美術への関心が高い人としても有名です。そのルーツは子ども時代にありました。
話題
ノーベル医学生理学賞に決まった大村智・北里大特別栄誉教授は、美術への関心が高い人としても有名です。そのルーツは子ども時代にありました。
ノーベル医学生理学賞に決まった大村智・北里大特別栄誉教授は、美術への関心が高い人としても有名です。寄生虫病の治療薬などの研究に取り組みながら、美術作品を収集。故郷に美術館を寄贈までしてしまいます。そのルーツは子ども時代にありました。
大村さんは、韮崎大村美術館収蔵作品展「女流画家の歩み」が女子美術大学美術館で開かれたとき、図録に文章を寄せました。
「私の絵画蒐集(しゅうしゅう)は、研究生活とともに歩んできたのです。やがて、薬と関わりの深い天然物有機化学の研究者でありながら、絵画の“薬効”を深く思うようになっていました」
絵との出会いは、子どものころにさかのぼります。音楽教師の母がミレーなどの絵を勉強部屋に飾ってくれたことから、絵が好きになったそうです。
29歳で北里研究所へ入ると、自身も絵を買い始めます。最初に買ったのは日本画家野田九浦(きゅうほ)の掛け軸「芭蕉」でした。行き詰まったとき、眠れないとき、この掛け軸の前に座ると心が静まったそうです。
大村さんは、抗寄生虫薬イベルメクチンを開発して得た莫大な特許料で、2007年、韮崎大村美術館を設立。翌年にはそれをまるごと、韮崎市に寄贈しています。
ホームページのあいさつには「優れた美術品というものは(中略)人類全ての共有財産であると思うからです」と記しています。
美術館設立に先立つ05年には白山温泉をオープン。予約制の10畳間と無料の大広間を作り、みんなが気軽に集まれる場にしています。大村さんの弟の泰三さんは「地域の人たちが井戸端会議をする場所を作ろうとなった。それなら風呂もあるといいという話になった。手作りの漬物なんか持って来て、誰のが一番うまいか、なんてやっている」と話しています。
ノーベル賞の受章によって韮崎大村美術館は、連日、多くの人が訪れています。3連休初日の10月10日は、開館前から多くの来館者が行列をつくったため、美術館は10時の開館を急きょ30分前倒ししました。その後も途絶えることなく全国から訪れる来館者で駐車場はあふれ、8人の警備員が整理にあたりました。
東京都から親子で来た、製薬会社で有機合成の研究をしているという会社員男性は「研究はうまくいかないことの方が多いので、大村さんの功績はただ尊敬する。目標にして頑張ります」と話していました。
1/9枚