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冬の北京五輪会場、「国家級貧困県」張家口とは? 軍事的要衝の顔も
2022年の冬季五輪の開催都市に決まった北京。雪競技の会場となる「国家級の貧困エリア」と言われる張家口は、どんな所なのでしょうか?
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2022年の冬季五輪の開催都市に決まった北京。雪競技の会場となる「国家級の貧困エリア」と言われる張家口は、どんな所なのでしょうか?
2022年の冬季五輪の開催都市に決まった北京。夏と冬、両方のオリンピックを初めて開催する都市として、注目を集めています。一方、雪競技の会場となる河北省張家口市は、北京に比べると知名度が低めです。政治や経済の中心である北京とは対照的に「国家級の貧困エリア」と言われる張家口は、どんな所なのでしょうか?
張家口は河北省の西北部に位置し、東南部は北京と隣接し、中心部は北京とわずか180キロしか離れていません。張家口は北方民族の政権(現在は内モンゴル)とも隣接していたため、長い間、軍事の要衝で、北京の「北の大門」と言われていました。明王朝の嘉靖8年(1529年)に、守備将軍の張珍氏が北の城壁に一つの小さい門を開け、「小北門」と呼ばれるようになりました。その後、張氏が開いた門(口)ということで、俗称「張家口」となり、この地の地名として使われるようになりました。
張家口がある河北省は「万里の長城」の土地として有名です。特に張家口市内では、戦国・秦・漢・北魏・北齊・唐・金・明など歴代王朝の長城が存在し、全部で1476キロがあると言われています。張家口は中国全土でも、長城が最も長く・種類も最も豊富な都市として、「長城の博物館」という別号を持っています。
「秦の始皇帝」が作ったというイメージが強い万里の長城ですが、実際には中国の春秋戦国の時代(紀元前650年から)、各国諸侯がすでに長城を作り始めていました。特に明王朝(1368-1644年)の時に最も大規模な改修があり、現存する多くの長城は明の時代に作られたものだと言われています。
張家口で有名なのが万里の長城の四大関所の一つ「大鏡門長城」です。他の関所である「山海関」「居庸関」「嘉峪関」には「関」という文字が使われていますが、「大境門長城」だけ「関」が使われていません。そのことから「万里長城第一門」とも呼ばれているのが特徴となっています。
北京に隣接し、軍事戦略上、重要な土地だったため、経済の改革開放路線が遅れました。また北京の上流に位置しており、環境保全のために重工業などが発展できず、張家口の経済は全体的に遅れ気味です。張家口の所轄する13つの県の中に「国家級貧困県」が10もあります。
「国家級貧困県」とは、一人あたりのGDPは2700元(約5万円)以下で、財政が厳しい県(中国は、「省」の中に「市」があり、「市」の中に「県」があります)のことを指します。貧困県の認定は国によって行われ、また財政的な援助などの支援制度が適用されます。
スキーなど雪競技の会場になる予定の張家口の崇礼県も「国家級貧困県」の一つで、目立った工業産業が育っていません。
五輪招致にあたり、張家口は経済的に厳しい世帯への支援政策を打ち出しました。また、開催地の決定を受け、崇礼県には五輪を見越して投資マネーが流入し、不動産価格が高騰しはじめています。
中国版ツイッターの微博では、張家口の「貧しさ」に関連する投稿が相次ぎました。
「(北京や上海など)先進地域の人々は飛行機やクルーザーが買えるようになったが、我々はまだ貧困ラインの下にいる」
「支援政策の対象なった人々、おめでとう。私もそこに入れたらいいなあ」
「(五輪開催という)名誉を手に入れたが、生活を失った」
「張家口は、『国家級貧困県』の数が国内1位です!」
「貧困県の状況を改善しない限り、張家口全体の状況が改善できないだろう」
崇礼県は、近年、スキー産業に力を入れ、「東のダボス」というスローガンを打ち出しています。冬の北京五輪の波に乗り、観光業を発展させることができるか。地元では期待が高まっています。
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