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現存する「SL運転士」養成所 梅小路蒸気機関車館、43年歴史に幕

日本で最多の20両のSLがある京都市の梅小路蒸気機関車館が8月30日、閉館します。運転や修理の技能の受け継ぐ場としても重要な場所でした。

閉館前の特別企画で並んで走るSLスチーム号(左)と義経号=2015年8月22日、京都市下京区の梅小路蒸気機関車館、戸村登撮影
閉館前の特別企画で並んで走るSLスチーム号(左)と義経号=2015年8月22日、京都市下京区の梅小路蒸気機関車館、戸村登撮影 出典: 朝日新聞

目次

 日本で最多の20両の蒸気機関車(SL)がある京都市の梅小路蒸気機関車館が8月30日、閉館します。展示だけでなく、運転や修理の技能の受け継ぐ場としても重要な場所でした。扇形車庫は現存する日本最古の鉄筋コンクリート製車庫で国の重要文化財にも指定されています。梅小路蒸気機関車館は施設を改修した上で、隣接地に建設中の京都鉄道博物館の一部として来年春に開業する予定です。

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運転士の養成も担う

 梅小路蒸気機関車館は、鉄道開業100年を記念して1972年10月にオープンしました。D51(デゴイチ)など20両を保存、14両を展示しています。実際に動く「動態保存」されている車両が8両もあり、「SLの殿堂」といわれています。

 展示だけでなく、修理や運転士の養成も担っています。検修班が定期検査や修理を担当しています。部品の多くは既に製造中止で、調達するのも簡単ではありません。検修班がメーカーと何度も折衝を重ね、新品を作ってもらうことも少なくありません。中には1千万円以上かかる修理もあります。

「蒸気機関の頭出し」ライトアップ。大勢の鉄道ファンがカメラを構えていた=2015年1月10日
「蒸気機関の頭出し」ライトアップ。大勢の鉄道ファンがカメラを構えていた=2015年1月10日 出典: 朝日新聞
検修班の14人が定期検査や修理を担当している。SLは重さが数十キロもある部品が多く、取り外すだけでも一苦労だ。97年に梅小路運転区に来た渋谷純一副班長(44)は「これほどしんどい仕事と知ってたら希望しなかった」と苦笑する。
2004年10月20日:SL支える技とロマン 梅小路機関車庫、重文指定へ:朝日新聞紙面から

鉄道と縁の深い京都

 実は、京都は鉄道と縁が深い街です。日本で初めて電車が走ったのは京都でした。1895年、京都電気鉄道株式会社が日本で初めて電車営業を始めました。電車は車内の連絡用のベルの音や、「警鈴(けいりん)」の音から「チンチン電車」と呼ばれていました。

 インクライン(傾斜鉄道)という珍しい鉄道もありました。琵琶湖から京都に水を引く「琵琶湖疏水」の、特に高低差の大きい区間で、舟を台車に載せて運んだのがインクラインでした。当初は水車動力の設計でしたが、水力発電所が完成すると電力を使う設計に変更されました。

かつてインクラインがあった遊歩道=2015年3月31日
かつてインクラインがあった遊歩道=2015年3月31日 出典: 朝日新聞
1895年、日本で初めて電車営業を始めた京都電気鉄道株式会社の車両と、1912年に営業を始めた市営電車の車両を指す愛称。正式名は線路の幅の違いから、前者を「狭軌(きょうき)1型」、後者を「広軌(こうき)1型」という。明かり取りがある二重屋根、前部に突き出た救助網が特徴だった。18年、京都市は同社を買収した。
1995年2月10日:路面電車(駅・Kyoto あなたの中の戦後50年:19):朝日新聞紙面から
琵琶湖疏水のうち、高低差の大きい個所では、舟を台車に載せて運ぶためのインクライン(傾斜鉄道)が敷設された。蹴上のインクラインは1890年代から運転が始まり、約50年間利用された。延長は約580メートル。当初は水車動力でワイヤを巻き上げて台車を上下させる設計だったが、水力発電所が完成すると電力を使う設計に変更されたという。
2008年5月12日:(週刊まちぶら 小路上ル下ル)蹴上かいわい 東山区・左京区 近代化の名残:朝日新聞紙面から

来年春、パワーアップして開業

 梅小路蒸気機関車館は、来年春に京都鉄道博物館として生まれ変わります。JR西日本は、蒸気機関車(SL)の解体検査などを行う専用の施設(検修庫)を新設する予定です。来年の秋にも完成予定で、京都鉄道博物館とはデッキで結ばれます。

 SLは観光や地域活性化で人気が高く、今後も安定的にSLを保存する体制が求められていました。整備の技術を若手整備士に継承する場としても活用します。「日本のSL保存の拠点」として、将来は作業風景の見学もできるようになる予定です。

 開業から今年1月末までに約830万人が訪れた「梅小路蒸気機関車館」。京都鉄道博物館周辺には新駅もできる予定で、「SLの殿堂」として、ますます人気を集めそうです。

鉄道博物館のイメージ。梅小路蒸気機関車館(左)に、本館(奥)とプロムナード棟(右)を増設する=JR西日本提供
鉄道博物館のイメージ。梅小路蒸気機関車館(左)に、本館(奥)とプロムナード棟(右)を増設する=JR西日本提供
施設を改修した上で、隣接地に建設中の京都鉄道博物館の一部として来年春に開業する。蒸気機関車館は1972年に開業。日本最多の20両の蒸気機関車(SL)があり、今年1月末までに約830万人が訪れた。
2015年2月20日:梅小路蒸気機関車館、8月で閉館:朝日新聞紙面から
JR西日本は17日、京都市下京区の梅小路蒸気機関車館の隣に、蒸気機関車(SL)の解体検査などを行う専用の施設(検修庫)を新設すると発表した。2階建ての建物内にSLをつり下げる天井クレーンを備え、大規模な検査や修理が可能。「日本のSL保存の拠点」として来秋にも完成予定で、将来は作業風景の見学もできる。
2014年10月18日:SL技術、未来にゴー 保存拠点、京都に新設:朝日新聞紙面から
新駅のホームは山陰線と七条通が交差する高架上に設け、JR西は1日の乗降客数を約7千人と見積もる。周辺には京都水族館やJR西の梅小路蒸気機関車館があり、16年春には蒸気機関車館に隣接して「京都鉄道博物館」も開館する予定で、新駅で利便性向上を図る狙いがある。
2015年2月3日:JR西、新駅開業へ 「京都鉄道博物館」予定地周辺 19年春目標:朝日新聞紙面から

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