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安倍談話「謝罪背負わせない」に共感の声 ドイツの名演説との違いは
世論調査では、安倍談話を支持する人が多数となっています。比較されるドイツのあの名演説はどう訴えているのでしょう。

戦後70年の今年発表された「安倍談話」。朝日新聞社の世論調査では「評価する」が40%で「評価しない」の31%を上回った。戦争に関わりのない世代の子どもたちに「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」という談話の主張には「共感する」が63%に及んだ。1985年のヴァイツゼッカー西ドイツ大統領の演説にもよく似た一説がある。しかし、歴史に残る名演説と世界的に評価が高いヴァイツゼッカー演説には、まったく別の次世代への「願い」も托されていた。
安倍談話とヴァイツゼッカー演説
安倍談話が発表された翌日の8月15日、産経新聞は朝刊1面で、こう指摘した。
「自らが手を下してはいない行為について自らの罪を告白することはできません」「ドイツ人であるというだけの理由で、粗布の質素な服を身にまとって悔い改めるのを期待することは、感情をもった人間にできることではありません」

「謝罪の繰り返しにけりをつける」(産経新聞)という点で、世界的に名高いヴァイツゼッカー演説と安倍談話には似た側面があるという指摘だ。確かに引用部分は、安倍談話の次の部分とよく似ている。

ただし、ヴァイツゼッカー演説は産経新聞の引用部分のあと、次のように続いている。
過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる
世界的には、この「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となる」の部分の方が有名だろう。安倍談話も上記の引用部分の直後に次のように続ける。「しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません。謙虚な気持ちで、過去を受け継ぎ、未来へと引き渡す責任があります。」
日本で「荒れ野の40年」とも呼ばれるこの歴史的なヴァイツゼッカー演説は、旧約聖書を引用しながら、戦後40年経っても、歴史を心に刻まなければならない理由を繰り返し説く。岩波ブックレットの訳者、永井清彦氏が書いた解説によると、演説の2カ月後、「ドイツの新聞に『大統領の演説に4万通もの手紙が殺到した。圧倒的に賛同の内容』」と報じられていたという。
ヴァイツゼッカー演説が次世代に託した願い

ヴァイツゼッカー演説は最後に、あの戦争に直接的な関わりのない若い世代へ訴えかける言葉で締めくくられている。
他の人びとに対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
ロシア人やアメリカ人、
ユダヤ人やトルコ人、
オールタナティブを唱える人びとや保守主義者、
黒人や白人、
これらの人々に対する敵意や憎悪に駆り立てられることのないようにしていただきたい。
若い人たちは、たがいに敵対するのではなく、たがいに手をとりあって生きていくことを学んでいただきたい。
民主的に選ばれたわれわれ政治家にもこのことを肝に銘じさせてくれる諸君であってほしい。そして範を示して欲しい。
自由を尊重しよう。
平和のために尽力しよう。
公正をよりどころにしよう。
正義については内面の規範に従おう。
今日5月8日(※)にさいし、及ぶかぎり真実を直視しようではありませんか。
※5月8日はヨーロッパにおける第二次世界大戦の終戦記念日。