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天津爆発「神経ガス検出」と現地報道 皮膚から吸収、少量でも窒息死

中国・天津市の爆発事故で現場から「神経ガス」が検出されたと地元テレビが報じました。「地下鉄サリン事件」で使われたことでも知られています。

立ち入り禁止となった地域を行き交う消防車両=2015年8月15日、天津市、林望撮影
立ち入り禁止となった地域を行き交う消防車両=2015年8月15日、天津市、林望撮影 出典: 朝日新聞

目次

 中国・天津市の爆発事故で現場から「神経ガス」が検出されたと地元テレビが報じました。もともと第二次世界大戦中に兵器として開発された歴史をもつ「神経ガス」。日本では20年前の1995年3月に起きた「地下鉄サリン事件」でばらまかれたことでも知られています。「神経ガス」の恐ろしさとは?

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呼吸筋まひ、窒息死

 第2次大戦中にドイツが殺虫剤の研究から開発したタブンなどが最初の神経ガスといわれています。その後、米国、イギリス、スウェーデンもより少量で致死量に達するものを開発。運動に関係した酵素が働かなくなり、呼吸筋のまひなど症状を引き起こすことで、窒息死させます。

 神経ガスを含む化学兵器としては、「サリン」や「VXガス」などが知られています。

サリン:神経に作用する。無色無臭で気化しやすい。青酸カリの数十倍の毒性がある。
VX:神経ガス。皮膚などから吸収され、サリンと同等以上の毒性をもつ。
イペリット:カラシ臭があり、マスタードガスとも呼ばれる。皮膚にやけどのような症状を起こす。吸い込むと肺や気管がただれ、死亡する。

パリに入城したドイツ機械化先遣部隊=1940年
パリに入城したドイツ機械化先遣部隊=1940年
<神経ガス> 神経機能をおかして死に至らしめる。第2次大戦中にドイツが殺虫剤の研究から開発したタブンなどが最初の神経ガスで、その後、米国、イギリス、スウェーデンもより少量で致死量に達するものを開発。運動に関係した酵素が働かなくなり、呼吸筋のまひによって窒息死する。
1988年3月28日:イラクの毒ガス使用確認 現地調査の「国境なき医師団」発表:朝日新聞紙面から
サリン 神経に作用する。無色無臭で気化しやすい。青酸カリの数十倍の毒性がある。
VX 神経ガス。皮膚などから吸収され、サリンと同等以上の毒性をもつ。
イペリット カラシ臭があり、マスタードガスとも呼ばれる。皮膚にやけどのような症状を起こす。吸い込むと肺や気管がただれ、死亡する。
2001年10月12日:炭そ菌感染の不安 バイオテロ対策、急ぐ日本:朝日新聞紙面から

初の神経ガステロは日本

 1994年6月、長野県松本市でオウム真理教による「松本サリン事件」が起きました。8人が死亡、約600人が重軽症となりました。神経ガスを使って市民を無差別に襲ったテロは世界で初めてとされています。

 翌年の1995年3月には「地下鉄サリン事件」が発生します。東京・霞ケ関駅を通る地下鉄日比谷線、千代田線、丸ノ内線の計5本の車内で、オウム真理教の幹部らがサリンを散布。13人が死亡し、6千人以上が重軽傷を負いました。関与した教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚ら10人の死刑と4人の無期懲役が確定しています。

地下鉄サリン事件で、築地駅から地上に運び出され、救急車などに収容される乗客=1995年3月20日
地下鉄サリン事件で、築地駅から地上に運び出され、救急車などに収容される乗客=1995年3月20日 出典: 朝日新聞
<松本サリン事件>1994年6月27日深夜に長野県松本市で起きた。神経ガスを使って市民を無差別に襲ったテロは世界で初めてとされる。95年3月の地下鉄サリン事件後、オウム真理教の犯行と判明。裁判で、教団元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚の指示の下、裁判官官舎を狙うとともにサリンの威力を試した、と認定された。第1通報者の河野義行さんを犯人視した警察と、その情報を基に臆測を交えて報道したメディアが批判を受け、朝日新聞を含む各社は翌年、河野さんに謝罪した。
2014年6月27日:20年、教団に奪われた命よ 松本サリン事件の遺族は今:朝日新聞紙面から
長野県松本市の住宅街でオウム真理教の信者が猛毒のサリンをまき、8人が死亡、約600人が重軽症となった「松本サリン事件」から27日で20年になる。大切な人と引き裂かれた悲しみ、教団への怒り。さまざまな思いを胸に、今も耐え続ける遺族がいる。
2014年6月27日:20年、教団に奪われた命よ 松本サリン事件の遺族は今:朝日新聞紙面から
13人が死亡し、6千人以上が重軽傷を負ったオウム真理教による無差別テロ「地下鉄サリン事件」=キーワード=から20日、20年を迎えた。事件現場になった東京都心では、遺族や駅員たちが犠牲者を追悼し、花を捧げた。
2015年3月20日:その命を忘れない 地下鉄サリン事件20年:朝日新聞紙面から

シリアでは国際問題に

 内戦が続くシリアでは、神経ガスなど化学兵器の使用をめぐって国際問題に発展しています。2013年8月には、、国際NGO「国境なき医師団」(MSF)が、同組織が医療援助をしているダマスカス県の三つの病院で、神経ガスの症状を示す患者を、21日午前中の3時間で約3600人受け入れたと発表しました。355人は死亡したとされています。

 神経ガスについて、反体制側はアサド政権の関与を指摘していますが、政権側は使用を否定しています。

 2015年8月8日、国連安全保障理事会は、シリアで化学兵器の使用者を特定する調査機関の設置決議を全会一致で採択しました。決議の作成は、化学兵器使用の責任追及を求める米国が主導して調整にあたり、親アサド政権のロシアも賛成しています。

ガスマスクと防弾チョッキを着用して、化学兵器関連施設の内部を調べる査察団の一員=シリア国営テレビから入手した映像から
ガスマスクと防弾チョッキを着用して、化学兵器関連施設の内部を調べる査察団の一員=シリア国営テレビから入手した映像から
シリアの内戦で21日に化学兵器が使われたとされる問題で、国際NGO「国境なき医師団」(MSF)は24日、同組織が医療援助をしているダマスカス県の三つの病院で、神経ガスの症状を示す患者を、21日午前中の3時間で約3600人受け入れたと発表した。355人は死亡したとされる。
2013年8月25日:シリア、神経ガス症状3600人 国境なき医師団発表:朝日新聞紙面から
「被害者は上空にヘリコプターの音を聞いた」とも説明。当時の院内での口から泡を吹き、あえぐ子どもたちの映像も示しながら、安保理に早期の行動を求めていた。証言の後、米国のパワー国連大使は「(シリアで)ヘリを所有するのがアサド政権だけなのは明白だ」と語っていた。一方、アサド政権は使用を否定している。
2015年8月8日:シリア化学兵器、調査機関設置へ 使用者特定めざす 安保理決議:朝日新聞紙面から

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