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阿川弘之さん死去 「お前に人権はない」娘・佐和子さん育てたしつけ

小説家の阿川弘之さんが3日、亡くなりました。94歳でした。作家・エッセイストの阿川佐和子さんの父親で、厳しい子育てで知られた家庭でした。

阿川弘之さん(左)と娘の阿川佐和子さん
阿川弘之さん(左)と娘の阿川佐和子さん 出典: 朝日新聞

目次

 小説家の阿川弘之さんが3日、亡くなりました。94歳でした。作家・エッセイストの阿川佐和子さんの父親で、その子育ては「この家に生まれたことが不幸なんだと思った」というほど厳しい家庭でした。

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海軍大尉として帰国、提督三部作など手がける

 阿川さんは1920年に生まれました。東京帝大文学部国文学科を卒業し、海軍予備学生になります。終戦を中国で迎え、翌年、海軍大尉として帰国しました。小説「年年歳歳」を発表し、文壇にデビューします。『山本五十六』『米内光政』『井上成美』の提督三部作をはじめ、『春の城』『軍艦長門の生涯』など戦時下の人間像を描いた長編を多数手がけました。

 1999年10月の文化勲章受章時には「戦争のことがなかなか頭から離れなかった。海軍のなかで、命がけで戦争に反対した人のことを書きたかった」と話しています。

阿川弘之さん=2007年12月
阿川弘之さん=2007年12月 出典: 朝日新聞
一九二〇年(大正九年)生まれ。東京帝大文学部国文学科を卒業し、海軍予備学生になった。終戦を中国で迎え、翌年、海軍大尉として帰国。小説「年年歳歳」を発表し、文壇にデビューした。「戦争のことがなかなか頭から離れなかった。海軍のなかで、命がけで戦争に反対した人のことを書きたかった」その後も「山本五十六」など、戦争を背景にした作品を書いた。資料を読み解き、主人公の苦悩や決断、ゆたかな人間性を達意の文章で描き出した。
1999年10月27日:文化勲章に阿川弘之氏、文化功労者に團伊玖磨氏 喜びの声:朝日新聞紙面から
第三回海洋文学大賞(日本海事広報協会主催)特別賞を受けた作家の阿川弘之さん(七八)が、このほど開かれた贈賞式で、いったんは辞退を考えた旨を話した。「長年、海軍を舞台とする小説に取り組んできたが、いわゆる海洋文学とは違う」。海軍大尉として中国・漢口で敗戦を迎えた経験を持ち、『山本五十六』『米内光政』『井上成美』の提督三部作を始め、『春の城』『軍艦長門の生涯』など戦時下の人間像を描いた長編を多数手がけている。だが、「海の素晴らしさ、恐ろしさを書こうと思っても、それに見合う体験がなかった」という。
1999年8月12日:阿川弘之さん 「海洋大国日本、文学は少ない」(ひとこと):朝日新聞紙面から

留守電に「ビクッ」 厳しいしつけ

 娘の阿川佐和子さんは、幼い頃の思い出を「この家に生まれたことが不幸なんだと思った」と振り返っています。

 小学生のころ、自宅に友だちをたくさん呼んで誕生日会を開こうとしたら、「二度とこんなバカバカしい会をすることを許さん」と怒鳴られました。大人になってからも、留守電が入っていると「ビクッとする」。すぐ折り返し、通話中に仕事の関係者が来ても電話を切れませんでした。

 「お前に人権はない」と言われたこともあるそうです。経済的に自立して初めて意見が言えるようになる。その日まで頑張ろうと思い、仕事に全力を尽くしたそうです。

 厳しかった子供時代。叱られたくない、という思いが、作家・エッセイストとしての活躍につながったと、述べています。

阿川佐和子さん=2014年7月8日
阿川佐和子さん=2014年7月8日 出典: 朝日新聞
叱られたくない。意外なことに、子どものころからの、そんな思いが今の仕事につながっている。父は小説家の阿川弘之さん(93)。「この家に生まれたことが不幸なんだと思った」ほど厳しく、怖い父だった。今でも父から留守電が入っているとビクッとする。すぐ折り返し、通話中に仕事の関係者が来ても電話を切れない。著書でもエピソードを紹介している。小学生のころ、自宅に友だちをたくさん呼んで誕生日会を開こうとした。当日、来たのは2人。父は「二度とこんなバカバカしい会をすることを許さん」と怒鳴った。「子どものために親が必死になることをことごとく嫌う」父だった。「お前に人権はない」と言われたこともあるが、養われている以上、親子の関係はそういうものだと思っていた。経済的に自立して初めて意見が言えるようになる。その日まで頑張ろうと思っていた。
2014年8月3日:(Reライフ)叱られ磨いた、聞く力 阿川佐和子さんに聞く:朝日新聞紙面から

小説・童話…数々の名作

 1994年には、師を描いた評伝「志賀直哉」で野間文芸賞を受けた阿川さん。吉行淳之介、遠藤周作らと「第三の新人」と呼ばれました。

 小説だけでなく、古びた機関車が主人公の童話「きかんしゃやえもん」は児童文学のロングセラーとなっています。

阿川弘之さん=1965年2月、新宿で
阿川弘之さん=1965年2月、新宿で 出典: 朝日新聞

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