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「20年に1回の直木賞」 東山彰良『流』 大御所うならせた傑作
20年に1回の直木賞……先日発表された第153回直木賞を受賞した東山彰良さん「流」は、選考委員にそう激賞されました。
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20年に1回の直木賞……先日発表された第153回直木賞を受賞した東山彰良さん「流」は、選考委員にそう激賞されました。
20年に1回の直木賞……先日発表された第153回直木賞を受賞した東山彰良さん「流」は、選考委員にそう激賞されました。芥川賞のピース又吉直樹さんが注目を集めていますが、こちらも見過ごせません。台湾出身の作者が、家族のルーツと向き合った青春小説です。
芥川・直木賞で受賞作が発表されると、有名作家が名を連ねる選考委員が報道陣に選考の経緯などを説明します。直木賞の選考をした北方謙三さんによると、「流」は満票で選ばれました。
北方さんはさらにベタ褒めでした。「20年に1回という素晴らしい作品。歴史的な受賞作にもなり得る。大変な商売敵を選んでしまった」
大御所にここまで絶賛される「流」は、どんな作品なのでしょう。
主人公は秋生(チョウシェン)。高校生の1975年、二つの死から物語は始まります。台湾の総統・蒋介石と、何者かに惨殺された祖父。
秋生は祖父を殺した犯人を捜します。この祖父は、戦中に蒋介石率いる国民党に付き、共産党との内戦に敗れ台湾に渡りました。大陸では住民の大量殺害に関わり、現地には事件の記憶をとどめる石碑が残っています。
この設定は、家族の実話を膨らませたそうです。
台北に暮らす秋生の周囲にも、戦争に翻弄された台湾の人々の姿が描かれます。
祖父ら「外省人」は大陸に戻ることを願い、もともと台湾にいた「本省人」を見下します。日本統治時代を懐かしむ本省人もいて、秋生は彼らとの交流をきっかけに日本に興味を抱きます。
東山さんは受賞会見で「僕が知っている1960年代後半から70年代の台湾には戦争の影が非常にあった」と語っています。
歴史の悲劇を感じさせますが、痛快なまでの青春小説です。
けんかに明け暮れ、恋をして、挫折のなかでもがく成長物語。そんな主人公のモデルは東山さんの父親です。
第153回直木賞受賞! 故郷・台湾を舞台に描く青春ミステリー この熱き奔流に、乗り遅れるなーー
東山さんは1968年に台湾の台北市で生まれました。9歳で日本に移住し、福岡で育ちました。「母国語は日本語」というほど日本になじんでいます。しかし、日本にも台湾にもよりどころがない不安がありました。
揺るぎなかったのは家族の存在でした。受賞会見で「家族は確固たるアイデンティティが持てる場所」と語っています。
極上のエンターテインメントでありながら、戦後70年の節目に、歴史や戦争について考えさせる直木賞作品になりました。
芥川賞の又吉さんフィーバーを逆手にとって、東山さんは「直木賞にも注目してもらえたら丸もうけだ」と会見でおどけました。その言葉の通りに、たくさんの人に届いて欲しい小説です。
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