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2015年07月31日

「欲しがりません勝つまでは」11歳少女の最も有名な標語の真実


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市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」。トラックのステージから、紙芝居や落語などをまじえて貯蓄報国を説く=1943年4月20日

市民に貯蓄奨励を進める「移動講演隊」。トラックのステージから、紙芝居や落語などをまじえて貯蓄報国を説く=1943年4月20日

出典: 朝日新聞

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 戦時中の有名な標語「欲しがりません勝つまでは」。1942年(昭和17年)、大政翼賛会と新聞社が「国民決意の標語」を募集した「大東亜戦争一周年記念」の企画で、32万以上の応募の中から選ばれました。国民学校5年の少女が作ったとされるこの標語。実は、誰にも言えなかった「うそ」がありました。

口調のよさから評判に

 標語を募集した企画では、入選10点、佳作20点が決まりました。入選作の一つが「欲しがりません勝つまでは」でした。作者として応募したのは、当時国民学校5年、11歳だった三宅阿幾子さんでした。「さあ二年目も勝ち抜くぞ」「ここも戦場だ」「今日も決戦明日も決戦」「足らぬ足らぬは工夫が足らぬ」などは、いずれも大人の作品で、三宅さんの標語は口調のよさから評判になりました。

「欲しがりません勝つまでは-大政翼賛会」としたためられた戦意高揚のスローガン

「欲しがりません勝つまでは-大政翼賛会」としたためられた戦意高揚のスローガン

出典: 朝日新聞

考えたのは父親だった

 実は、「欲しがりません勝つまでは」を考えたのは三宅さんの父の斌(あきら)さんでした。芝居の脚本や漫才の台本を趣味で書いていた父親が、娘の名前で応募していたのです。「入らないと思うが、もし入ったら『何もかも欲しがりません勝つまでは』としたのを、父親が直した、といっておけ」と、阿幾子さんはいわれていました。

 表彰式の翌日、朝礼で校長先生の話がありました。「みなさんも三宅さんのようにがまんしましょうね」。三宅さんは、身が縮む思いだったそうです。それから、友だちに「欲しがりませんの三宅さん」といわれるように。三宅さんはそのたびに、「私じゃないの」と叫びたい気持ちを抑えていました。

サツマイモの駅弁。表紙には「欲しがりません勝つまでは」の文句がある=1943年11月

サツマイモの駅弁。表紙には「欲しがりません勝つまでは」の文句がある=1943年11月

出典: 朝日新聞

ひとり歩きを始めた標語

 入選作の発表後、学校に新聞社が取材にやって来ました。「あの標語、ひと晩考えたの。ふだん先生がおっしゃっている倹約のお話を標語にしただけなのに、当選なんて……」。記者の質問に、三宅さんはそう答えたそうです。

 翌日の新聞に、三宅さんが「欲しがりません」と習字をしている写真と、短い鉛筆を使っている記事が載りました。

「鉛筆は一寸ぐらいのが二本、それに小さな消しゴムが入った筆入れなど阿幾子さんの持ち物は、標語そのまま “勝つまでは……“ ぐっとこらえている涙ぐましいものばかりである」

出典: 1985年1月9日 標語のうそ 父が代作入選の重圧(それぞれの昭和:8):朝日新聞紙面から

 標語は、ひとり歩きを始めます。山上武夫作詞、海沼実作曲の歌にもなりました。三宅さんは、その歌をラジオで聞いて覚えました。街では、電柱に「欲しがりません」のポスターが張られるようになりました。

鳥取県庁の「必勝必成貯蓄組合」の貯蓄運動。「貯蓄日」の小旗が掲げられると所持金の5%を召し上げられる「不意討貯蓄」=1942年12月1日

鳥取県庁の「必勝必成貯蓄組合」の貯蓄運動。「貯蓄日」の小旗が掲げられると所持金の5%を召し上げられる「不意討貯蓄」=1942年12月1日

出典: 朝日新聞

本当だった「短い鉛筆」

 1985年1月9日、朝日新聞の記事は、三宅さんの戦後の姿を伝えています。

 三宅さんはいま、東京都内の看板会社に勤めている。海外旅行にも行った。趣味のカメラやダンスもする。
 だが、会社では、他の人が使い切った短い鉛筆を使っている。「長い鉛筆は使いづらい」という。
 小さい時、教会の近くに、女学校があった。校庭のゴミ箱に時々、短くなった鉛筆が落ちていた。よく、妹と拾いに行った。それをホルダーにさして、最後の最後まで使った。

出典: 1985年1月9日 標語のうそ 父が代作入選の重圧(それぞれの昭和:8):朝日新聞紙面から

 「欲しがりません」の標語を作ったのはうそでも、短い鉛筆の話は本当だったのですね。
    ◇
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出典:朝日新聞
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