グルメ
ご当地パン、全国に息づく謎の食文化 ぼうし・たくあん・昆布…
地元でひっそり愛されてきたご当地パン。最近では、人気のご当地パンを決める「ご当地パン祭り」が開かれ、街おこしにつなげる動きも出ています。
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地元でひっそり愛されてきたご当地パン。最近では、人気のご当地パンを決める「ご当地パン祭り」が開かれ、街おこしにつなげる動きも出ています。
もっちりした生地に刻み昆布が練り込まれ、塩加減が絶妙な「昆布パン」。富山県射水市の「パンのさわや」が、約15年前から作り始めました。澤谷晴彦社長の「昆布のおにぎりがあるんだから、パンもあってもいい」という発想をきっかけに、今では1日600~700袋(4個入り)を県内のスーパーやコンビニに卸しています。チーズを乗せた「昆布&チーズ」、「昆布あんパン」も好評です。
富山は全国有数の昆布消費地で、北海道の昆布を持ち込んだ北前船に由来し、刺し身の昆布締め、とろろ昆布で包んだおにぎりなど、家庭やお店でもあちこちに昆布があるそうです。
懐かしい甘さのチョコレートとクリーム、それにビスケットの「三味」が一体となった「神戸屋」(大阪市東淀川区)のデニッシュパン「サンミー」。パイ生地を凝縮したようなボリューム感と柔らかな口溶けが、「粉物感」を味わわせてくれる。西日本各地で販売しますが、なぜか大阪府でダントツの売り上げとのこと。
シリーズは50種類以上にのぼり、同社の菓子パン部門では常に人気トップ5に入るほど。サンミー43周年の昨年からは、近畿の食材を使ったペーストなどを加えた「ヨンミー」も年間を通じた販売を始めています。東日本でも2度、期間限定で販売したが普及しなかったそうです。「粉もんの食感が関西人に受けたのでは」と同社は分析しています。
鳥取市の1903年創業の製パン会社・亀井堂の菓子パン「サンドイッチ」と「マイフライ」。変わらない味が少なくない市民の舌をとりこにしています。
「サンドイッチ」は、ピーナツバターとイチゴジャムがぬられているだけ。戦後まもない頃、主力商品の食パンの余りを生かそうとしたのが始まりとか。ジャムとバターは市内の業者から購入し、1枚ずつ四角い食パンのすみずみまで従業員が手ぬりし、1日約200個作っています。
「マイフライ」は、これも戦後生まれの商品で、食パンにこしあんをぬり、衣を付けて揚げています。もっちりとした食感にほどよい甘さが、部活帰りの高校生らに人気だそうです。こちらは1日約300個を手作りしています。
どちらも味は昔と変わらないそうで、5代目社長の地原忠実さんは「何十年も地元の人たちにかわいがられてきた。味も包装も変えず作り続けたい」と話しています。
カリッとした食感の後、中からとろりとあふれるバターと、岩塩の塩気が絶妙に混ざり合う愛媛県八幡浜市の「パン・メゾン」の塩パン。10年ほど前に発売すると口コミで人気に。社長の平田巳登志さんが「食欲が落ちる夏場でも売れるパンを作りたい」と思い立ち、長男の将武さんと半年ほどかけて作り上げました。アクセントになる塩は、焼いても塩の形が残る岩塩。柔らかめのフランスパンの生地でバターをくるみ、岩塩をひと振りして焼き上げます。2年前に松山市郊外に出した2号店では、1日に6千~7千個を売り上げるという人気ぶりです。
全日本パン協同組合連合会(全パン連)などが主催する「全日本パンフェスティバル」が今年も開かれます。そのメーンのイベントが「日本全国ご当地パン祭り」です。
出展する全国のパン店がご自慢の「ご当地パン」を販売、購入者の人気投票によって順位が決まるイベントです。5回目の開催となった昨年は神戸で行われましたが、今年は10月18日に東京で開催される予定です。
昨年までの人気第1位のパンは次のとおりです。
第1回(2010年) よこすか海軍カレーパン(神奈川)
第2回(2011年) クロワッサンB.C.(埼玉)
第3回(2012年) みしまコロッケパン(静岡)
第4回(2013年) みしまフルーティキャロット(静岡)
第5回(2014年) ダニッシュ(兵庫)
全パン連が掲げる「ご当地パン」の定義は【地元・または国産の小麦粉を使用したパン/地元の特産物を使用したパン/長年、地元で愛され続けているオリジナルパン】です。
街おこしにつなげようと、地元食材を使って最近できた「ニューご当地パン」も少なくありません。歴代上位に入賞したパンはロングセラーになっており、関係者は高いPR効果に期待しています。