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2015年07月16日

芥川賞の羽田圭介さんって誰? 高校生デビューから10年ひたむき

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又吉直樹さんとともに芥川賞に選ばれた羽田圭介さん=2011年4月

又吉直樹さんとともに芥川賞に選ばれた羽田圭介さん=2011年4月

出典: 朝日新聞

 小説『スクラップ・アンド・ビルド』(文学界3月号)で芥川賞が決まった作家・羽田圭介さん(29)はどんな人なのでしょうか。W受賞の芸人・ピース又吉さんに注目が集まりがちですが、羽田さんも「死ぬまで、書かずにはいられない気持ちは消えないと思う」という骨太の若手作家です。

羽田圭介さん=2014年9月

羽田圭介さん=2014年9月

出典: 朝日新聞

 羽田さんは1985年生まれ。2003年、綿矢りささんらと並び、17歳の最年少(当時)で「文芸賞」を受賞した早咲きの作家です。当時は埼玉在住で都内の高校3年生でしたが、中高生の兄弟がいがみ合い、「家庭内ストーキング」を繰り返す様子を描いた『黒冷水』が高く評価されました。

 明治大学を卒業した後は、「人とのつながりがないと書けないから」との理由で民間企業に就職。大学時代最後の作品となった3作目の長編『走ル』で初めての芥川賞候補となりました。『走ル』は、レース用自転車で東京・八王子の自宅から都心の高校まで「なんとなく」登校した主人公が、陸上部の練習中にコンビニまで自転車で飲み物を買いに行き、次第に脱線してゆく話。「なんとなく」国道4号を北上し、埼玉県から栃木県へと走り続け、独り、野宿を続けながら青森県まで行ってしまいます。目的も連れ合いもなく、逃避でもない、純粋なロードノベルです。

 羽田さんは当時の取材に「走るのは、そこに標識があるから。『宇都宮まで○○キロ』とあると、最初は現実感がなくて笑っちゃうんですが、ペダルをこぎ続けるとそこに着いてしまうことに興奮を覚える。距離に対する身体と心のズレがおもしろいと思うんです」と独自の視点を投げかけていました。

羽田圭介さん=2011年2月

羽田圭介さん=2011年2月

出典: 朝日新聞

 2010年には第4作『ミート・ザ・ビート』で2度目の芥川賞候補に。翌年に出した『ワタクシハ』は野間文芸新人賞候補になりました。「ワタクシハ」を書いた時は25歳。肩書を得て、何者かになりたい--そんな若者の心象風景を、自らの就職活動の体験を踏まえて描きました。

 「調べれば調べるほどとらえどころのない世界。就活本も言っていることはばらばら。古典的だけど、結局自分で考えるしか進む道はない」「諦めを知りつつ、夢や欲望がないと人は生きていけない。自分がその体験をすると、かないそうにない夢を持つ人に優しい目線を向けるようになる」

 当時の取材量は「全13巻」にもなりそうなボリュームで、それを削り抜いて本にしたそう。このときは小説家になりきれていない気がしたそうで、職業欄には「ライター」と書いていました。

 この後、2014年の『メタモルフォシス』で3度目の芥川賞候補となり、4度目の『スクラップ・アンド・ビルド』でついに芥川賞に輝きました。受賞作は、カーディーラーの過酷な仕事をやめて無職になった青年と、同じ家に暮らす要介護の祖父との物語。若年層と老年層がそれぞれの生きにくさを抱えてせめぎ合う現代社会の縮図を、ユーモラスななかにも切実な希望をこめて描いています。

 音楽活動に挫折して就活を始めるバンドマン、兄弟関係に悩む中高生、介護の祖父を持つ無職の青年、マゾヒズムの快楽におぼれる証券マン、「エロセレブ」を自称する高校生--日常生活の延長にありそうな世界での「気づき」を丁寧に描いてきたのが、作品に共通していると言えそうです。

羽田圭介さん=2012年1月

羽田圭介さん=2012年1月

出典: 朝日新聞

 羽田さんは09年、読書という行為についてこうつづっています。「(中略)それはただの疑似体験を超える。読んでいる間に読み手が何かに思いを巡らせ、何かを考える。それで人間的に『成長』するわけではないし、『成果』を求めるのも間違いだ。ただ優れた本は、読み手の生活に別の角度から光を当ててくれる」

 羽田さんは23歳の頃、新聞紙上にこうも書いています。「実生活でしか得られない経験が、世には溢れている。だが読書でしか得られない経験も、存在する」

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