お金と仕事
「うなぎコーラ」 万人受け狙わない戦略 「潰れる…」営業は悲鳴
7月21日に発売される「うなぎコーラ」。ネット上では「ご飯に合いそう」「うな重のタレにしか見えない」などと話題になっています。
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7月21日に発売される「うなぎコーラ」。ネット上では「ご飯に合いそう」「うな重のタレにしか見えない」などと話題になっています。
7月21日に発売される「うなぎコーラ」。ネット上では「ご飯に合いそう」「うな重のタレにしか見えない」などと話題になっています。開発したのは静岡県島田市の木村飲料。これまでにもカレーやワサビ、緑茶味の炭酸飲料を世に出してきました。「大手が100人中97人おいしいという商品を売り出すなら、われわれは残りの3人がおいしいという商品を作ろう」と話すのは社長の木村英文さん(59)。単なる話題づくりではなく、地場の中小企業ならではの戦略がありました。
今回発売される「うなぎコーラ」は、コーラ味の炭酸飲料にウナギエキスを加え、飲んだ後にかば焼き風の香りがする商品です。色もかば焼きを意識し、カラメルであめ色にしてあります。
静岡の特産品「うなぎ」とコーラのまさかのコラボレーション。「インパクトがあって、でもおいしい。そんな飲み物をつくりたい」という営業部長の発案から始まったこの企画。木村さんは「やってみなければわからない。まずはやってみよう」とOKを出しました。
企画から発売までにかかった期間は3年。最大の難関はうなぎエキス特有の香りでした。飲んだ後にほのかに香るように工夫し、面白さと飲みやすさを両立させたそうです。味は普通のコーラとそれほど変わらず、夏でもゴクゴク飲めるように仕上がったといいます。
木村飲料では、土用の丑の日である7月24日に向けて「うなぎを食べるのではなく飲む。そんなうなぎもありでしょ!」とPRに力を入れています。
木村飲料の設立は1953年。当初は県内にも数十社の同業他社があったそうですが、大手メーカーの台頭とともに次々と姿を消していきました。そんななか、大手の下請け受注に頼ることなく、バラエティーに富んだ商品ラインナップで生き残ってきました。
転機となったのが2005年に発売した「必勝合格ダルマサイダー」。静岡県内の神社で原材料に合格祈願をして、受験生向けに発売したところ、全国から注文が入るほどヒットしました。
その後、伊豆半島の名産であるワサビを使った「わさびらむね」や、社長の好物であるカレー味の「カレーラムネ」などを発売。いずれも、社内の営業マンからは「こんなもの売れるか」「今度こそうちは潰れる」といった反対の声が上がったそうですが、木村さんは押し切りました。
「かつては、大手が売り出す商品を追いかけて作っていましたが、全然売れませんでした。大手が原料と売り場を押さえて、後から同じような商品を持ち込んでも、スーパーや量販店は置いてくれないんです。だから、大手と反対のことをやろうと考えました。大手が100人中97人がおいしいという商品を売り出すなら、われわれは残りの3人がおいしいという商品を作ろうと」
そんな思いで世に出した「わさびらむね」や「カレーラムネ」。話題性もあり、予想以上の大ヒット商品になりました。その後も、地元特産のお茶を使った「しずおかコーラ」を発売。それらが今回の「うなぎコーラ」へとつながっていきます。
意外な発見もありました。飲料の売れ行きは、基本的には夏場に集中します。ところが、これらの商品は土産物店を中心に販売することで、年間を通して一定の売れ行きが見込める商品となったのです。
一見すると話題先行の際どい商品ばかりに見えなくもありませんが、実は静岡に特化した商品が多いのも木村飲料の特徴です。木村さんは「私が得意なのは飲料をつくることです。地元の特産品を飲み物にすることを通じて、地域活性化の役に立ちたいと思います」と話します。
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