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中国の幽霊大学、就活に悪用 なぜ騙される? 取り締まっても続々と
中国で、実態がないのに偽物の卒業証明書を出す幽霊大学が問題化しています。取り締まりを受けても、次々現われるというやっかいものです。
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中国で、実態がないのに偽物の卒業証明書を出す幽霊大学が問題化しています。取り締まりを受けても、次々現われるというやっかいものです。
毎年の6月7、8、9日は中国の大学入試日です。1年に1回しか受験できないため、「一考定終身」(試験で一生を決める)と言われるほど厳しい競争になっています。もともと官僚の登用試験「科挙」が重視された中国で問題化しているのが、実態がないのに偽物の卒業証明書を出す幽霊大学です。取り締まりを受けても、次々現われるというやっかいものです。幽霊大学はなぜなくならないのか? 採用する側はなぜ、だまされるのでしょうか?
これまで、中国で多かったのは、名門大学の偽物卒業証明書です。しかし、最近では、大学サイトに検証システムが導入され、証明書の番号を打ち込めば本物か偽物かをすぐ判明できるようになりました。その結果、偽物証明書の裏ビジネスが、名門大学に近い名前を使った架空の大学サイト、幽霊大学に進化したと言われています。
たとえば「中国経済貿易大学」、「北京工商学院」、「上海工程管理学院」などの幽霊大学には、大学名に「中国」、「北京」、「上海」、そして人気の「経済貿易大学」「工商学院」などがついています。このような有名大学に似たような大学をでっちあげ、サイトを立ち上げます。証明書の検証システムもあり、幽霊大学の卒業証明書の番号を入れると、本物と表示されます。
中国当局は2015年、新たに118校の幽霊大学の名前を公表し、ウェブサイトを閉鎖しました。2013年以降、計328校の幽霊大学が発見されたと言われています。
幽霊大学は、取り締まられても、次々と生まれています。多くの幽霊大学のサーバーは香港、アメリカ、韓国など中国大陸以外の地域や国家にあり、一回閉鎖されたとしても、名前やドメインを変えてまた復活することが多いからです。
また、幽霊大学の卒業証書を欲しがる人もなくなりません。中国は学歴社会であるため、大学受験で失敗した学生や昇進を望む人が、偽物と知りながら「学歴」を買ってしまうのです。
それでは、なぜ会社側は偽物の大学卒業生を採用してしまうでしょうか。幽霊大学の名前は、実在する大学の名前と非常に似ていて、混同してしまうように作られています。
例えば「中国経済貿易大学」(偽物)と「対外経済貿易大学」(本物)、「都师范学院」(偽物)と「首都师范大学」(本物)、「北京经济管理学院」(偽物)と「北京经济管理职业学院」(本物)のように、ついつい誘導されてしまうケースが少なくありません。いったん幽霊大学のウェブサイトを開いてしまうと、偽の卒業証明の番号が本物として表示されてしまいます。
中国当局も対策を強化しています。2002年5月には、公式の「学歴検索ウェブサイト」として「中国高等教育学生信息網」(後に「学信網」に名称変更)を設立しました。
しかし、2001年以前の情報はネット上に公表されていないため、1966~1977年の間に生まれた人は、同姓同名の人の本物の卒業証明書と学位証明書の偽造が可能だと言われています。今のところ、採用する側の会社に注意喚起を呼びかけるしかないのが、実情のようです。