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“可愛すぎる中国語講師”、教科書を破り捨てた過酷な大学受験

中国の大学受験は2次試験がないので、まさに一発勝負。NHK中国語講座で「可愛すぎる中国語講師」段文凝さんが、中国の受験事情を語りました。

段文凝さん
段文凝さん 出典: 朝日新聞デジタル

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 国公立大の2次試験や私大試験の追い込み時期です。中国の大学入試にも日本のセンター試験と同じような全国共通の試験があります。中国は大学別の2次試験がないため、まさに一発勝負。試験が終わると会場で教科書を破り捨てる慣習があるそうです。NHKの中国語講座に出演し、ネット上で「可愛すぎる中国語講師」と話題になった元女子アナの段文凝さんが、中国の大学受験事情を語りました。

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【動画】試験一発で人生が決まる・・・中国の受験競争を勝ち抜いた段文凝さんの秘訣は「リラックス」=佐藤正人撮影 出典: 可愛すぎる中国語講師、教科書破った日 中国の受験語る:朝日新聞デジタル

願書はひとつ、志望順に大学名

 (私が生まれ育った)中国にも、センター試験に当たる全国一斉の試験があります。全国普通高等学校招生入学考試、通称「高考」です。

 中国には日本の国立大のような2次試験はありません。また、私立大学は少なく、有名な私立大はありません。浪人して再受験する人は一学年下の高校3年生のクラスに交じって勉強しますが、あまりいません。ですから、高考はほぼ一発勝負の試験です。

 センター試験と同様に高考が終わった後、自己採点します。その点数から志望校を決めます。願書に第1志望、第2志望、第3志望と自分の点数に照らして行きたい大学を書きます。合格通知が届いて、大学がわかります。ここは日本とは違いますね。

 私は地元の天津師範大学新聞学院アナウンス系に合格しました。学院は日本でいう学部、系は学科です。本当は北京や上海といった都会の大学に行って一人暮らしをしたかったのですが、当時はアナウンス専攻がある大学が少なかったので、合格できただけでよかったです。

大学の卒業旅行で香港を訪れ記念撮影する段文凝さん=本人提供
大学の卒業旅行で香港を訪れ記念撮影する段文凝さん=本人提供

入学先で就職も決まる

 中国の大学で学ぶことは日本のような学問とは違います。職業訓練というかすぐ仕事の役に立つ実践的なことを学びます。アナウンス専攻では、発音や発声、ニュースの原稿読みなど日本ならテレビ局に就職した後に研修することをみっちり学びました。

 卒業後は天津の国営放送局でアナウンサーになりました。専攻が就職に直結するのです。だから、大学受験で就職もほとんど決まってしまいます。高考の一発勝負で人生が決まってしまうようなものです。

 一人暮らしをしたかった理由は、両親や親類から離れたかったからです。中学に入ってからは、とにかく勉強、勉強、勉強、勉強……。部活動やクラブ活動は一切やってません。高校2年からは体育や音楽の授業もなくなり、受験科目だけ勉強しました。理系だったので国語・数学・英語の共通科目と理科総合(物理・生物・化学全般)でした。

アナウンサー時代に同僚と食事する段文凝さん(左)=本人提供、一部画像を加工しています
アナウンサー時代に同僚と食事する段文凝さん(左)=本人提供、一部画像を加工しています

「一人っ子政策」両親からの重圧

 塾にも行きました。毎日毎日、宿題が本当に終わらないのです。寝るのはいつも午前2時。6時には起きて学校の朝の自習に行きます。睡眠時間は4時間くらいでした。

 掃除や炊事など家の手伝いをしようとしても両親からは「そんなことしなくていいから勉強して」と言われます。栄養をつけるようにと夜食も毎日作ってくれて栄養ドリンクも飲まされて。たくさん食べさせられます。運動もせずに食べてばかりだったので、今よりも10キロも太っていました。私たちは一人っ子政策の世代なので、家族や親戚の期待とプレッシャーはすごかった。潰れちゃう子もいましたね。

 周囲もみんな同じように受験まっしぐらだったので勉強漬けの青春を疑問に思うことはなかったです。というか、大学受験以外の選択肢はなかったし、疑問に思う暇もなかったです。

中国のことわざで受験生にエールをおくる段文凝さん=佐藤正人撮影
中国のことわざで受験生にエールをおくる段文凝さん=佐藤正人撮影

試験が終わればゴミだらけ

 でも、とにかく早く解放されたいとは思っていました。中国には「一鼓作气 再而衰 三而竭」ということわざがあります。一回目はやる気満々、二回目は気が散る、三回目はやる気がなくなる、という意味です。私はこのことわざを励みに「集中して一気にやるぞ」と自分を鼓舞しました。

 高考が終わったときは爽快でした。高考が終わると教科書を破いて捨てるんです。受験した教室その場でです。参考書やノートもなにもかも全部破いてバーって頭上に投げます。「やっと終わったぞー」って叫びながら。教室はゴミだらけ。掃除する人は大変だったでしょうね。

2009年、来日したばかりの段文凝さん=本人提供
2009年、来日したばかりの段文凝さん=本人提供

片言の日本語で来日

 2009年の誕生日に来日しました。やはり天津とは違う場所で暮らしたかった。違う世界に飛び出したかった。大学でかなわなかった一人で暮らすという夢をあきらめられなかったのです。父親が名古屋に1年間転勤していて、その話を聞いたことが背中を押しました。日本へ行こうと。日本語はあいさつ程度しかできませんでしたけど。

 早稲田大学大学院で政治学を学びました。今は早稲田大で中国教育のコーディネーターをしています。学生や教職員に中国語や中国文化を教えたり、教科書を作ったりしています。

 この夏は学生らを引率して北京大学や内モンゴル自治区をめぐるプログラムを企画しました。参加した学生から「行ってよかった。また行きたい」という声が聞けたことが、最高にうれしかったです。

出典: 段文凝さん=佐藤正人撮影

日中友好「相手を知ってこそ」

 確かに日中関係はぎくしゃくしています。私の仕事のオファーもめっきり減りました。でも、マスコミやネットの情報だけで相手の印象を持ってしまうことに賛成しません。お互いの国へ出かけてみて、その目でその耳でその口で、相手のことを感じてください。価値観は違うでしょう。でもその違いを自分の経験のなかで感じることが大事ではないでしょうか。みなさんも中国が身近になるようなことに挑戦してみてください。

段文凝さん=佐藤正人撮影
段文凝さん=佐藤正人撮影

◇  ◇  ◇
 だん・ぶんぎょう タレント・中国語コーディネーター。中国・天津市出身。天津市第109中学卒(同校は中高一貫校、現在は天津大学付属中学)。2011年4月からNHK・Eテレ「テレビで中国語」に出演し、ネット上で「可愛すぎる中国語講師」と話題になった。年齢非公表。

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