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ランニングの進化が想像以上 体中に色・泡…きっかけは東京マラソン

2007年に始まった東京マラソンは、現在のランニングブームが起きるきっかけとなりました。最近では、カラーランやバブルランなど、タイムは気にせずイベントとして楽しむ人も増えています。

大阪で開かれた「カラーラン」。黄色の粉を浴びてはしゃぐ参加者たち=2014年7月、大阪市淀川区、林敏行撮影
大阪で開かれた「カラーラン」。黄色の粉を浴びてはしゃぐ参加者たち=2014年7月、大阪市淀川区、林敏行撮影 出典: 朝日新聞

目次

 2007年に始まった東京マラソン(2015年は2月22日開催)は、現在のランニングブームが起きるきっかけとなりました。最近では、カラーランやバブルランなど、タイムは気にせずイベントとして楽しむ人も増えています。

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もはやランニングをこえたイベント?給水所でお菓子が食べられる「スイーツラン」=2014年11月、千葉市の稲毛海浜公園
もはやランニングをこえたイベント?給水所でお菓子が食べられる「スイーツラン」=2014年11月、千葉市の稲毛海浜公園

ブームのきっかけ「東京マラソン」

 東京マラソンは、トップ選手と市民ランナーが一緒に走る本格的なシティマラソンとして、構想されました。当時、世界ではボストン・マラソンをはじめ、70年代にスタートしたニューヨークシティー、ベルリン、シカゴなどが人気を集めており、「東京は遅すぎたくらい」という声もありました。

第1回の東京マラソン。新宿のビル群を背にゴールを目指す参加者たち=2007年2月
第1回の東京マラソン。新宿のビル群を背にゴールを目指す参加者たち=2007年2月
「トップランナーと市民ランナーが一緒に走るのは今や世界の流れ。東京は遅すぎたくらい」。帖佐(ちょうさ)寛章・国際マラソン・ロードレース協会(AIMS)会長(日本陸連名誉副会長)は話す。東京では、79年に東京国際女子マラソンがスタート。81年に男子の東京国際マラソンが始まる際には、大規模市民マラソンの構想もあったが、警視庁が「参加者は100人規模に」とくぎを刺した経緯があるという。
2007年2月14日:(SPORTSクリック)号砲一発、3万人 東京マラソン、18日開催 :朝日新聞紙面から

そもそもは五輪招致の狙いも

 東京マラソンの構想は、当時の石原慎太郎都知事が2003年に打ち出したものでした。背景には、五輪招致がありました。都内の名所を巡るコースを通じて、東京の魅力を世界に発信できるという狙いがあったのです。構想時に目指していた2016年の五輪は逃しましたが、2020年の招致に成功しました。

当時の石原慎太郎都知事を訪問した東京マラソン参加選手=2007年1月
当時の石原慎太郎都知事を訪問した東京マラソン参加選手=2007年1月
東京マラソン構想は石原慎太郎都知事が03年秋に打ち出した。2016年の五輪招致を目指す都には、「東京の魅力を知ってもらう絶好の機会。五輪招致に弾みをつけたい」との思惑がある。
2007年1月27日:(土曜フォーカス)都心「大封鎖」 東京マラソン、来月18日:朝日新聞紙面から

応募者7万7千人「予想以上」

 第1回の応募者は7万7521人で「予想以上」(当時の田中学・競技運営推進部長)の結果でした。抽選で2万5千人が選ばれました。昨年は、30万2442人が応募。3万5556人が選ばれました。10・3倍の高倍率でした。

東京マラソン参加者に闘魂注入するアントニオ猪木さん=2006年2月
東京マラソン参加者に闘魂注入するアントニオ猪木さん=2006年2月
フルマラソンには7万7521人の応募があり、抽選で2万5千人が選ばれた。10キロ、車いすマラソンを含めると計3万人。「予想以上」と、東京マラソンの田中学・競技運営推進部長は言う。市民マラソンではこれまで、毎年12月に開かれる沖縄のNAHAマラソンが国内最大規模で、昨年は約2万1千人だった。
2007年1月27日:(土曜フォーカス)都心「大封鎖」 東京マラソン、来月18日:朝日新聞紙面から
主催の東京マラソン財団によると、フルマラソンは応募数30万2442人で、10・3倍の高倍率になった。招待選手と寄付による走者を含む男性2万8072人、女性7484人の計3万5556人がスタート。
2014年2月24日:五輪への道、駆ける 東京マラソンに3万6000人 /東京都:朝日新聞紙面から

イメージ変化、気軽に皇居ラン

 東京マラソンによってランニングブームが起きます。象徴的なのが皇居ランです。東京マラソン以降、皇居ランのランナーが急増しました。マラソンの「きつい」「ストイック」といったイメージが、東京マラソンによって変わったことなどが後押ししました。

 博報堂生活総合研究所の嶋本達嗣所長(当時)は2008年2月の朝日新聞の取材にこう答えています。「現代人が求める『ゆるやかな連帯』を味わえ、時代にマッチしている。一緒に走る連帯感の一方、チームスポーツとは違って他者との適度な距離感も保てる」

東京駅・丸の内駅舎(奥)とイチョウ並木の前を走る「皇居ランナー」たち=2012年11月、東京・丸の内
東京駅・丸の内駅舎(奥)とイチョウ並木の前を走る「皇居ランナー」たち=2012年11月、東京・丸の内
皇居1周は約5キロで、信号もない。以前から官庁や企業に勤める人が勤務前後や昼休みに手軽に走れる人気コースだったが、「東京マラソンで皇居ランナーは倍増した」と、「ランナーズステーション」の浅川美幸専務(44)は話す。近くの銭湯「バン・ドゥーシュ」(千代田区?町)の橋富和子さん(72)も「数年前まで1日数人だった利用者が最近は100人来ることもある」と驚く。
2008年2月16日:(もっと知りたい!)「走る人々」増えてます 東京マラソンで印象変わる :朝日新聞紙面から

ランナー急増、出たくても出られない

 ランニングブームによって、各地の大会に応募者が殺到し、出場すること自体が難しくなります。笹川スポーツ財団の推計では2012年にランナー人口は1千万人を超えました。大会自体も2010年に奈良、2011年に大阪と神戸、2012年に京都と各地で広がりましたが、ランナーの増加の方が上回り、どこも抽選に。神戸では「初出場枠」を設けるほどになっています。

スパイダーマンに仮装してマラソン大会で走る参加者=2013年3月、武蔵野市役所
スパイダーマンに仮装してマラソン大会で走る参加者=2013年3月、武蔵野市役所
市民マラソンは2007年に東京、10年に奈良、11年に大阪と神戸、12年に京都と各地で広がる。一方、市民ランナーの増加で参加希望者を受け入れ切れない点が課題となっている。今回の大阪の抽選倍率は4・8倍ほどで、「『なかなか当たらない』という声を聞く」と担当者。昨年の倍率が4・5倍だった神戸も状況は同じで、来月の4回大会から5千人分の「初出場枠」を設けた。この枠で落選しても「一般枠」で再度チャンスがある。
2014年10月27日:大阪マラソン、3万人挑戦:朝日新聞紙面から

タイム気にしない「ファンラン」ブーム

 最近、広がっているのがタイムを競わない「ファンラン」のブームです。
 「カラーラン」は、全身にカラーパウダーを浴びて走ります。昨年11月に大阪市であった「カラーラン」では、5キロコースの1キロごとに異なる4色のカラーパウダーを全身に浴びて走りました。パウダーは植物性のでんぷんで無害。参加者は受付で配られた白いTシャツだけでなく、顔も髪の毛も色まみれになりました。
 「エレクトリックラン」は、カラフルに光るリストバンドやカチューシャ、メガネをつけて走ります。コース上には派手な光とノリのいい音楽が楽しめるゾーンも設けられています。
 「スイーツマラソン」は、給水所にケーキや団子などが並びます。ひと口大のお菓子を食べながら走ります。

 これら「ファンラン」は、どれもタイムは競いません。また、1人ではなくサークル仲間などグループで参加する人が多いのも特徴です。スマホで自撮りした写真をSNSにアップして、体験を共有してしまう人も少なくありません。ランニングというよりは、イベントに近い感覚で参加者を集めています。

カラーランに参加した女性3人組は「オーレンジ! オーレンジ!」と叫びながら小走りでパウダーを浴びた=2014年11月、大阪市此花区の舞洲スポーツアイランド
カラーランに参加した女性3人組は「オーレンジ! オーレンジ!」と叫びながら小走りでパウダーを浴びた=2014年11月、大阪市此花区の舞洲スポーツアイランド
スポーツの秋。23日に第4回神戸マラソン(朝日新聞社など共催)が開かれるなど本格的なマラソンの季節に入った。タイムを気にせずイベント重視の「ファンラン(FUN RUN)」の人気も広がる。気軽に参加できることからマラソン大会の未経験者も多く、ランニング人口のすそ野を広げている。
2014年11月14日:ファンラン、人気快走 タイム測らず・色まみれ 気軽に参加、非日常満喫:朝日新聞紙面から

レースの多様化、これからも

 本気で走る「ガチラン」からタイムを競わない「ファンラン」に変化してきたランニングブーム。日本ランニング協会代表理事の小林渉さんは、「婚活や女性限定など、ターゲットを絞ったランニングは増えてきそう」と見ています。

 最近では、途中でランニングをやめてしまった「燃え尽きランナー」が注目されるなど、ランナーの多様化はますます進みそうです。

 協会では、タイム以外の楽しさを知ってもらうため、インストラクターの講座も開いています。小林さんは「これからの時代、速い人が先生になる必要はありません。色んな形でランニングに触れてもらい、走る楽しさに気付いてもらいたいです」と話しています。

スイカを楽しみながら走る富里スイカロードレース大会の「給スイカ」。レースそっちのけでスイカを楽しむ参加者=千葉県富里市内
スイカを楽しみながら走る富里スイカロードレース大会の「給スイカ」。レースそっちのけでスイカを楽しむ参加者=千葉県富里市内
ランニングの継続期間とランニング頻度の関連性を調査すると、継続期間が短いランナーほど、ランニング開始当初は毎日走るなど頻度が高いことがわかりました。対して、継続期間が長いランナーほど3日に1回など、開始当初から、適度な頻度を意識して走っていることが明らかになりました。
燃え尽きランナー急増中!?今年こそランニングを続けるための2つの解決策|株式会社デサント 公式サイト
安全で正しいランニングを継続するために、必要な知識を備えた人材を育成するための資格です。この資格を取得することで、安全で正しいランニングを自身が実践できるだけでなく、ご自身のコミュニティにおいて普及する役割を担っていただきます。
日本ランニング協会|協会の認定資格 | 一般社団法人日本ランニング協会

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