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致死率30%、中東で新たな感染症MERSが猛威 感染源はラクダ?
新たな感染症MERSが、中東を中心にじわりと広がっています。致死率が30%台と高く、感染源の一つとしてラクダの可能性も。
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新たな感染症MERSが、中東を中心にじわりと広がっています。致死率が30%台と高く、感染源の一つとしてラクダの可能性も。
新たな感染症が、中東を中心にじわりと広がっています。中東呼吸器症候群(MERS、マーズ)で、確認された感染者数は1千人に満たないものの、致死率は30%台と高いのが特徴です。
日本国内での感染者は確認されておらず、通常の旅行での感染リスクは低いとみられていますが、感染経路などまだ不明な点が多く、厚生労働省も注意を呼びかけています。
中東呼吸器症候群は2012年、サウジアラビアで初めて確認されました。世界保健機構(WHO)の1月23日時点のレポートによると、感染者数は956人。うち少なくとも351人が、MERS関連で死亡しています。サウジの他に、アラブ首長国連邦(UAE)、イエメン、オマーン、カタールなど主に中東の湾岸諸国で感染者の報告があります。また旅行者が渡航先で感染した輸入例として、米国、英国やイタリアなどの欧米諸国、アジアではフィリピンやマレーシアで感染者が確認されています。
発症すると、発熱、せきなどから始まり、急速に肺炎に至るケースもあります。潜伏期間は2~14日。下痢など消化器の症状のほか、重症化すると、多臓器不全や敗血性ショックも引き起こします。特に高齢者や糖尿病、慢性肺疾患などの持病がある人は、症状が重い傾向があります。一方で、感染しても症状が現れない人もいるそうです。
原因となるウイルスは、03年に中国広東省から大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)と同じコロナウイルスの新種で、13年にMERSコロナウイルス(MERS―CoV)と命名されました。
感染経路は、まだはっきりしていません。ただ患者から検出されたのと同じウイルスが、中東のヒトコブラクダから確認されており、感染源となる動物の一つと考えられています。とはいうものの、患者の中には動物との接触がなかった人も含まれています。
また患者から医療従事者や家族間での感染も報告されており、限定的ながら人から人へと感染するケースもあると考えられています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、人から人への強い感染がみられないことから、MERSが理由で旅行の計画を変更するほどではないという見解です。ただ渡航者には、石鹸や水で頻繁に手を洗う、アルコール消毒、手で目や鼻、口に直接触れないようにするなど一般的な風邪や感染症の予防策を取ることを推奨しています。
厚生労働省は1月21日、MERSをポリオや結核と同じ2類感染症に正式に指定しました。2類感染症の感染者には、強制入院や就業制限など感染の拡大を防ぐ措置が可能です。
また渡航にあたって、特に感染で重篤化しやすい既往症にある人は、かかりつけの医師に相談した上での渡航の是非の検討を呼びかけています。実際に渡航した場合も、現地ではラクダを含む動物との接触はなるべく避け、帰国時に発熱や咳などがあれば、検疫所へ相談するように求めています。
アフリカで猛威を奮うエボラ出血熱、昨年に約70年ぶりの国内感染が確認されたデング熱などに比べ、これまでMERSが話題に上ることはあまりありませんでした。しかし、デング熱と比較するとはるかに致死率が高い感染症です。しかも、原因となるウイルスが発見されて間もなく、いまだに感染経路もよくわかっていません。
患者の発生には季節性があるようで、3月、4月以降に発生が増加するようです。昨年は、3月中旬から患者数が急増しました。厚生労働省も海外渡航者向けサイト「FORTH」に随時発生状況などをアップしていますので、これから旅行や出張等で中東方面に行かれる予定のある方は、事前にこれらの情報を十分チェックして、備えてください。