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祖父江慎、展覧会でも異才発揮 岡崎京子・赤塚不二夫・エヴァ展まで

祖父江慎さんは展覧会のデザインでも、たびたび名前が出てきます。これまでに「赤塚不二夫展」「エヴァンゲリオン展」など、話題の展覧会を手がけてきました。

スヌーピー展会場のショップでフィギュアを手にする祖父江慎さん=2013年10月、東京都港区
スヌーピー展会場のショップでフィギュアを手にする祖父江慎さん=2013年10月、東京都港区 出典: 朝日新聞

目次

 ブックデザイナーとして有名な祖父江慎さんですが、展覧会のデザインでも、たびたび名前が出てきます。これまでに「赤塚不二夫展」「エヴァンゲリオン展」など、話題の展覧会を手がけてきました。誰もが知ってるキャラクターを、祖父江さんならではの味付けでプロデュースしてしまう手腕に、本業以外のファンも少なくありません。現在、開催中の「岡崎京子展」では、ユニークなマスキングテープを作っています。

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「岡崎京子展」で祖父江さんが手がけた、ちょっと刺激的なマスキングテープ
「岡崎京子展」で祖父江さんが手がけた、ちょっと刺激的なマスキングテープ

「大学に行く意味があるのか」、そのまま中退

 祖父江慎さんは1959年、愛知県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科に進学し、出版社の工作舎でアルバイトを始めます。その後、大学は中退して工作舎の社員になり、そのまま装丁の世界に進みます。「工作舎物語 眠りたくなかった時代」(左右社)に掲載されているインタビューでは、松岡正剛さんから「大学に行く意味があるのか」と迫られた場面が登場します。

 ブックデザイナーとして数々の話題作を送り出してきた祖父江さんですが、最近、注目されたのは夏目漱石の特装版「心」です。誤字脱字もそのまま自筆原稿を活字にするという、刊行100年にふさわしい意欲的な1冊となっています。

祖父江さんが手がけた特装版「心」
祖父江さんが手がけた特装版「心」
最後に登場する祖父江慎のインタビューが圧巻だ。「大学に行く意味があるのか」と松岡に迫られ、美大を中退。それでも彼の口調は、恨み節もなく、ひたすら楽しそうに面白おかしく手掛けた本や現場の思い出を語る。天才は迷わないのだなと、納得。戦慄(せんりつ)した。
書評:工作舎物語-眠りたくなかった時代 [著]臼田捷治 - 内澤旬子(文筆家・イラストレーター) | BOOK.asahi.com:朝日新聞社の書評サイト
★1959年、愛知県生まれ。
★多摩美術大学グラフィックデザイン科に進学。出版社の工作舎でアルバイトを始める。大学は中退して工作舎の社員に。
(フロントランナー:下)「『こころ』はホラーかも。読み方限定したくない」:朝日新聞デジタル
夏目漱石「こころ」が刊行されて100年。ブックデザイナー祖父江慎さんの特装版「心」(岩波書店・2808円)が完成した。「こころ」の装丁は漱石自身がてがけ、漱石全集にも継がれている。
(本の舞台裏)「こころ」装丁の秘密:朝日新聞デジタル

絵本のため、新しいフォントまで

 これまでに、2千冊以上の装丁に関わってきました。新装版「うさこちゃん」シリーズでは、新しい書体「ウサコズフォント」までつくっています。「たどたどしいけれど一生懸命なうさこちゃん」に合うよう、ゴシック体に丸みをつけて柔らかさを出し、わざと文字をふぞろいに。思春期の性をテーマにした「正しい保健体育」は、「内緒でわくわくしながら読む感じ」を出すため表紙や組み方を教科書風に仕立てました。

「ウサコズフォント」まで作り出した祖父江慎さん
「ウサコズフォント」まで作り出した祖父江慎さん
多摩美大在学中に装丁の道へ。中身にぴったり合う形をこの世に降ろす巫女(みこ)さんのような仕事という。楽しい言い間違いを集めた「言いまつがい」は、本の形もひずませた。思春期の性をテーマにした「正しい保健体育」は、「内緒でわくわくしながら読む感じ」を出すため表紙や組み方を教科書風に。
2010年5月9日:(ひと)祖父江慎さん ウサコズフォントを作ったブックデザイナー:朝日新聞紙面から

エヴァ展、シンプルデザインで挑戦

 そんな祖父江さんは、展覧会のデザインも多く手がけています。
 2013年8月から各地を巡回中の「エヴァンゲリオン展」で作った「第7使徒グラス」は、冷たい水を入れると非常事態ディスプレイに色づく仕掛けが施されています。「リリスマグカップ」は白地に細い線画が描かれたシンプルなデザインで、エヴァの世界観を形にしています。

「エヴァンゲリオン展」の「リリスマグカップ」
「エヴァンゲリオン展」の「リリスマグカップ」

スヌーピー展、作者の奥さんにほめられる

 2013年に東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開かれた「スヌーピー展」では、アートディレクターをつとめ、図録も作りました。2013年11月の取材では「ポストカード、シュルツさんの奥さんにほめられたの。なかなか枠をこういう風には切れないって。怒られるかと思ってたけど…」と話していました。

展示の最後にあるスヌーピーの大きなフィギュアと祖父江さん(左)、糸井さん=2013年10月、東京都港区
展示の最後にあるスヌーピーの大きなフィギュアと祖父江さん(左)、糸井さん=2013年10月、東京都港区
祖父江 ポストカード、シュルツさんの奥さんにほめられたの。なかなか枠をこういう風には切れないって。怒られるかと思ってたけど…。
糸井 へえ~。会場で祖父江さんが好きだって言ってた白目のあるルーシー、ほんとにたくさんグッズがあるね。わがままだなあ(笑い)。
祖父江 えへへ。売れないって言われたけど複製原画まで作っちゃった。
2013年11月25日:書道みたいな、禅画みたいな 「スヌーピー展」東京・六本木で開催中:朝日新聞紙面から

赤塚不二夫展、100体パネルびっしり並ぶ

 2009年の「追悼 赤塚不二夫展」では会場のデザインを手がけました。マンガのコマをカーテンのようにつり下げたり、赤塚キャラ100体の半立体パネルを通路の左右にびっしり並べるなど、遊び心あふれる展示会場にしました。

赤塚不二夫展では、「シェー!」のポーズの著名人や人気キャラクターが並んだ=2009年8月
赤塚不二夫展では、「シェー!」のポーズの著名人や人気キャラクターが並んだ=2009年8月
トキワ荘時代の写真、14歳で初めてかいたマンガ作品のほか、黒柳徹子さんやアンパンマンといった著名人や人気キャラクターが「シェーッ!」のポーズをとるイラストや写真のコーナーもある。会場デザインを、ブックデザイナーの祖父江慎さんが担当。マンガのコマをカーテンのようにつり下げたり、赤塚キャラ100体の半立体パネルを通路の左右にびっしり並べるなど、遊び心あふれる展示だ。
2009年9月2日:ナンセンス追求の苦闘のぞく 「追悼 赤塚不二夫展」 東京の松屋銀座:朝日新聞紙面から

岡崎京子展、ちょっと刺激的なマスキングテープ

 現在、開催中の「岡崎京子展」では、マスキングテープという一風変わったミュージアムグッズを作りました。漫画「私は貴兄のオモチャなの」から、主人公のイラストがあしらわれています。ちょっと刺激的なポーズのイラストが、びっしりとデザインされたテープは、岡崎さんの世界観と祖父江さんのセンスが光る一品になっています。

「岡崎京子展」のちょっと刺激的なマスキングテープ
「岡崎京子展」のちょっと刺激的なマスキングテープ

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