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ヨルダン人パイロット殺害か 焼き殺される映像 CG多用、音楽も

 「イスラム国」で人質になっていたヨルダン人パイロットと見られる男性が焼き殺されている映像が投稿されました。男性が檻に入れられ火をつけられる様子が撮影されています。

ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉と見られる男性。檻の中で焼き殺された映像が公開された
ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉と見られる男性。檻の中で焼き殺された映像が公開された 出典: 「イスラム国」が投稿したとみられる動画から

目次

 「イスラム国」で人質になっていたヨルダン人パイロットと見られる男性が焼き殺されている映像が投稿されました。男性が檻(おり)に入れられ、火をつけられる様子が撮影されています。

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檻の中にいれられた、ヨルダン空軍のパイロット、ムアーズ・カサースベ中尉と見られる男性。この後、覆面の兵士によって火がつけられた
檻の中にいれられた、ヨルダン空軍のパイロット、ムアーズ・カサースベ中尉と見られる男性。この後、覆面の兵士によって火がつけられた 出典: 「イスラム国」が投稿したとみられる動画から

映像にCG多用、音楽も

 映像は約22分半。CG(コンピューター・グラフィックス)や効果音、音楽などがふんだんに使われています。空爆の犠牲になったとみられる子どもの姿など印象的な映像がいくつも挿入され、映画のような構成です。

  画面の左上には、イスラム国のメディア部門「フルカーン」のロゴや、イスラム国の黒い旗が表示されています。

22分半の動画の内容は

 冒頭、「SECURITY DATABASE」という文字と青いシンボルマークが表示されます。その後、ヨルダンのアブドラ国王がパイロットについて語る場面や、国王がオバマ米大統領と会談する映像などが流れます。

 さらに、ヨルダンが米国などともにイスラム国への空爆に参加する様子が映され、シリア北部のラッカでヨルダン空軍機が墜落したことを伝える複数のニュース映像に切り替わります。戦闘機が飛ぶアニメーションなどがところどころに挿入されています。

檻の中でうなだれる、カサースベ中尉とみられる男性
檻の中でうなだれる、カサースベ中尉とみられる男性


 動画開始から3分50秒すぎ、墜落してとらえられたヨルダン空軍機のパイロット、ムアーズ・カサースベ中尉とみられる男性が映し出されます。これまでイスラム国が公開してきた動画と同様、中尉はオレンジ色の服を着ており、目の下には殴られたアザのようなものも見えます。

 中尉は自分の名前などをカメラに向かって語りかけたあと、自分が参加した空爆作戦の詳細について語り始めます。

 昨年12月24日にヨルダンの空軍基地から出撃したこと、途中で空中給油を受けてシリアのラッカ上空まで飛んだこと、その軍事作戦にはアラブ首長国連邦やモロッコ、サウジアラビアなどのF15、F16戦闘機も参加していたこと――。

 中尉が語る内容にしたがって、それを説明するアニメーションCGや効果音も施されています。

空爆への「報復」を印象づける狙いか

 約9分間にわたって中尉の独白が続いたあと、場面は戦闘機のアニメーションに移ります。その戦闘機の攻撃目標には、治療を受け泣き叫ぶ乳児の映像が。戦闘機からのミサイル投下によって炎が起こり、その炎と死傷した子どもたちの写真が何度も重ね合わされます。空爆によって多くの子どもたちの命が奪われた、と強調するための映像処理とみられます。

 14分40秒ごろ、再びカサースベ中尉とみられる男性の映像に戻ります。今度は荒地のなかを歩く場面で、迷彩服を着たイスラム国の戦闘員とみられる覆面の男らに取り囲まれています。時折、がれきの中の死傷者たちの映像が割り込み、空爆などによる被害を再び印象づけようとしている模様です。

 16分50秒すぎ、鉄格子の檻のなかでうなだれる中尉の場面に切り替わります。オレンジ色の服には油のようなものが大量にかけられたあとがみられ、戦闘員が火を放って殺害されます。

ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉
ヨルダン空軍のムアーズ・カサースベ中尉

ヨルダン軍人の殺害に「懸賞金」

 19分30秒すぎ、最後のシーンに切り替わります。

 暗い画面に、ヨルダン空軍のパイロットや幹部とみられる軍人たちの名前や顔写真が次々に浮かび上がります。そして、「イスラム国は十字軍のパイロットを殺害した者に報酬としてディナール金貨100枚を与えることを発表する」とのメッセージが表示されます。この「殺害対象リスト」を流したあと、動画は約22分半で終わります。

中尉の発言内容(要約)

 動画のなかで、中尉は何を語ったのか。イスラム国側の意図に従って、中尉が強制的にしゃべらされているものと見られますが、要約すると次のようなことを発言しています。

◇ ◇ ◇

 2014年12月24日、(ヨルダンの)基地から(「イスラム国」の支配下にあるシリア北部の都市)ラッカに向かった。

 敵機の音が聞こえ、別の中尉からエンジンから火が出ていると伝えられた。火が広がり、目的航路から外れ始めたので戦闘機から脱出し、川に落下した。

 ヨルダン国民へ。我々の政府がシオニスト(ユダヤ人国家再建主義者)であり、侵入者であると知ってほしい。本当にイスラム教を守りたいなら、なぜ何百万人ものイスラム教徒を殺害するアサド(シリア大統領の)軍などに戦闘機を送らないのか。パレスチナのイスラム教の施設を守るため、ユダヤ人たちのもとへ戦闘機を送らないのか。

 パイロットの家族へ。自分たちの息子を送るのを止め、イスラム教徒を標的に攻撃しないように言ってほしい。そうすれば、あなたたちの息子は私のような経験をすることはない。私の家族や妻、親類のように痛みや不安を感じなくて済むのだ。

◇ ◇ ◇

カサースベ中尉とみられる男性は、覆面の兵士たちに囲まれていた
カサースベ中尉とみられる男性は、覆面の兵士たちに囲まれていた

「人質交換」浮上も、中尉はすでに殺されていた?

 
 ヨルダンは昨年9月からシリア領内での「イスラム国」に対する米主導の軍事行動に参加していました。カサースベ中尉は、その「有志連合」による軍事作戦の途中、戦闘機が墜落し、イスラム国の人質になりました。

 ヨルダン国内では軍事行動に加わることへの反対も多く、また、パイロットの救出を優先するよう求める世論も根強くあり、難しい状況が続いていました。

 2月1日に殺害されたとみられる映像が確認された日本人ジャーナリスト後藤健二さんの解放をめぐっては、カサースベ中尉と、ヨルダンで収監されているサジダ・リシャウィ死刑囚との「人質交換」の交渉が浮上。ヨルダン政府は、パイロットの生存の証拠を示すよう強く求めていました。

 しかし、ヨルダンのモマニ・メディア担当相は2月3日(日本時間4日)、国営テレビで「中尉は1月3日に殺害された」と述べました。これが事実だとすれば、人質交換を模索していた頃には、ヨルダン政府はすでに中尉の死亡情報を得ていた可能性もあります。

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