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直木賞に西加奈子さん「サラバ!」 テヘラン生まれ大阪育ち
第152回直木賞が西加奈子さんの「サラバ!」に決まりました。西さんは、1977年、イラン・テヘラン生まれで、大阪で育ち。2004年「あおい」でデビュー。他の著書に「きいろいゾウ」「円卓」などがあります。
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第152回直木賞が西加奈子さんの「サラバ!」に決まりました。西さんは、1977年、イラン・テヘラン生まれで、大阪で育ち。2004年「あおい」でデビュー。他の著書に「きいろいゾウ」「円卓」などがあります。
第152回直木賞が西加奈子さん(37)の「サラバ!」に決まりました。西さんは、1977年、イラン・テヘラン生まれで、大阪で育ちました。2004年「あおい」でデビュー。「通天閣」で織田作之助賞、「ふくわらい」で河合隼雄物語賞。他の著書に「きいろいゾウ」「円卓」などがあります。
関西弁で屈託のないキャラで知られる西さん。大阪の喫茶店で働きつつライターもしていた時、自分の好きなものを書きたい気持ちが強くなり、短編の執筆を開始しました。2005年12月のインタビューでは、当時のことを、次のように振り返っています。「めちゃくちゃ楽しくてしんどくて、ウワーッとのめりこんでしまう、初めての体験だったんです。書き終えた時、『これを活字にしたい、作家になりたい!』と、いてもたってもいられなくなって。わけのわからんまま、あてもないのに1人で東京に来ました。なんでそんなむちゃなことができたか、当時の自分に聞きたいわ(笑)」
勢いで上京した西さんでしたが、知人に紹介された編集者に原稿を読んでもらうと、すんなり刊行が決定。それが、2004年のデビュー作「あおい」です。
西さんの描く日常の風景には、同性愛、障害、アルコール依存症などのモチーフも淡々と盛り込まれます。西さんは「自分も偏見とか持ってたりするけど、根はフラットやな、と思う。世の中、いろんな奴がおっていいと思うから。そういう人を書いてあえて心温まる話にしたり、問題提起したりしようとも思ってない」と話しています。
受賞作「サラバ!」は上下巻で約700ページ。作家生活10年の節目に「今までやってきたことを全部ぶつけた」という力作です。生きること、そして信じることとは何か、体当たりで問うような気迫がみなぎる物語になっています。
主人公は、西さんと同じ1977年5月生まれの、歩(あゆむ)という名の男の子です。イランの首都テヘランで生まれる設定も、西さんと同じです。そんな男の子の誕生から物語は始まり、今の西さんと同年代にあたる30代の男性に成長するまでの半生をつづっていきます。
歩は小学生時代の半分以上をエジプトで過ごし、そこでヤコブという少年と出会います。書名の「サラバ!」とは言葉の通じない二人を結ぶ合言葉のようなあいさつとして登場します。ヤコブが信じる少数派のコプト教(キリスト教の一派)、姉が傾倒する「サトラコヲモンサマ」という奇妙な神様、出家する父。ストーリーが進むにつれ、信仰の問題、ひいては生きることと信じることとの関係が、物語全体の重要なテーマとして浮かび上がってきます。
西さんは、「サラバ!」について「世間で正しいとされているものを一から考え直そうっていう小説を、ずっと書いてきたつもり」と話しています。「経歴は自分と重なるけれど、物語はまったくのフィクション」と言っていますが、10年の節目に、今まで伝えようとしてきたことを全部出し切ろうという思いが伝わる物語に仕上がっています。