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8時間立ち往生、仙山線に先進路線の歴史 培った技術、新幹線にも
雪の重みで倒れた木が架線に触れて停電、快速列車が8時間にわたって立ち往生したJR仙山線。実は、国内初の交流電化試験が行われた、電化・高速化の先駆けとなる「先進路線」だった。
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雪の重みで倒れた木が架線に触れて停電、快速列車が8時間にわたって立ち往生したJR仙山線。実は、国内初の交流電化試験が行われた、電化・高速化の先駆けとなる「先進路線」だった。
仙台と山形を結ぶJR仙山線が3日、雪の重みで倒れた木が架線に触れて停電。山形発仙台行き快速列車が8時間にわたって立ち往生し、乗客300人が車中に閉じ込められた。
車内の明かりや暖房も消えたが、周辺に道路がなかったため、ディーゼルの除雪作業車が飲料水や携帯カイロを届けた。
実は、この「仙山線」は、国内初の交流電化試験が行われた、国内の電化・高速化の先駆けとなる、鉄道史上欠くことのできない「先進路線」だった。
仙山線は、仙台市と山形市を結ぶ幹線として1937年に開通した。
奥羽山脈を貫く仙山トンネルが、長さ5361メートルと長大だったことから、蒸気機関車全盛期にもかかわらず、作並駅~山寺駅は開通当初から直流電化され、電気機関車で運転された。
いち早く直流電化された仙山線で、さらに進んだ交流電化試験が始まったのは1954(昭和29)年。
それまでの直流電化に比べ、交流電化は変電所が少なくて済み、費用が安く済む。仙山線での試験でその利点が確かめられたことで、その後の国鉄の電化に弾みがつき、新幹線開業にもつながった。
仙山線が試験線に選ばれたのは、勾配があって「坂道発進」の試験にふさわしいことや、作並駅〜山寺駅(山形県)が直流電化されており、交直接続試験を作並駅でできることなどが理由だった。
沿線の鉄道資料館「鉄道交流ステーション」(仙台市青葉区)は、「通信線や地下ケーブルなどの成果が新幹線に生かされている」としている。
そんな仙山線の歴史を地域おこしに役立てようと地元有志らが働きかけ、同線施設群が土木学会の「選奨土木遺産」に認定された。
けたをやぐら状に組んだトレッスル橋や、開通当時は国内3番目の長さだったトンネルなどが対象だ。
このうち転車台は、電化される前に列車を引っ張った蒸気機関車(SL)の方向転換に欠かせない施設だ。仙山線では作並駅と山寺駅(山形県)の構内にあったが、SLの引退とともに役目を終えた。
土木学会はこれらの遺産群について、「世界に誇る日本の鉄道文化遺産」と評価している。