お金と仕事
リンクトインが「職場参観」 カタカナ系職場、親に見てもらい謎解決
まるで授業参観のように、親が子どもの職場にやってくる?SNS「リンクトイン」がはじめたイベントが世界に広がり、日本にも上陸した。いったい何をやっているのか。
お金と仕事
まるで授業参観のように、親が子どもの職場にやってくる?SNS「リンクトイン」がはじめたイベントが世界に広がり、日本にも上陸した。いったい何をやっているのか。
まるで学級参観のように、親が子の職場を訪ねる。子離れできないモンスターペアレンツの話ではありません。世界最大のビジネスSNS「リンクトイン」が昨年から実施して世界に広がり、今年は日本にも上陸したイベント"BRING in YOUR PARENTS DAY(BIYPデー)”。つまり、「両親を会社に連れてくる日」。あなたの職場でもいかがですか?
両親に自分がどんな仕事をしているか説明しようとして、困ったことはありませんか。技術の発達で、両親の世代には存在すらしなかった仕事もたくさんあります。リンクトインが昨年、世界規模で実施したインターネット調査では、親の3分の1が子どもの仕事内容を理解していなかったそうです。「それなら、職場に招待して知ってもらおう」というのがBIYPデーのコンセプトです。
リンクトインは自社で実施するだけでなく、世界中の企業に実施を呼びかけました。昨年11月の第1回BIYPデーには世界で30以上の企業が参加し、各社の社員や両親ら1万5千人が「職場参観」を楽しみました。
昨年、初開催されたイベントの模様をまとめた動画はこちら。
参加した両親たちは職場を見学し、子どもたちからどんな仕事をしているか説明を受けます。
「娘がどれだけ価値ある仕事をしているか、知ることができました」(参加者)
「子どもたちが職場に招待してくれることは、両親にとって誇りなんです」(参加企業のCEO)
今年11月には第2回BIYPデーが開催され、日本からも2社がリンクトインの呼びかけに応じて参加しました。
ウェブサイト構築、コミュニティづくり、地域のお土産開発も手がけるロフトワーク(渋谷区)。「年間500件以上のプロジェクトを手がける『クリエイティブ・エージェンシー』と言っても、両親世代にはイメージしづらい」のが悩みだったそうです。
BIYPデーの趣旨は、そんな悩みの解決にうってつけ。19人のスタッフが両親や兄弟姉妹、配偶者ら31人と犬1匹を職場に招待しました。
イベント後に社内でアンケートでとると、好評だったそうです。
「内定時には会社の信用度を疑っていた父が、すごく褒めてくれて照れくさかった」
「仕事場を見てもらい、その後、親子でご飯にいって親と仕事の話になり、お互いの共通点を語れた」
コミュニケーションディレクターの中田一会さんによると、「『良い会社、良い同僚だね』と家族から声をかけられ、メンバーも誇らしげでした」。
自社サイトで「インターネットを活用したビジネス利用を促進する製品やサービスを提供する企業」と書くシックス・アパート(港区)も説明が難しい会社。BIYPデーを通じ、「ビジネスの内容もIT自体もよくわかっていなかったが、謎が解消された」という感想が聞かれたそうです。
リンクトイン・ジャパンが実施したBIYPデーの現場を訪ねました。会社の説明や職場見学をするのは、ロフトワークやシックス・アパートと同様。印象的だったのは、社員が一人ずつ自己紹介をし、両親から学んだことや、感謝の気持ちを口にすることでした。
リンクトインに4月に入社し、今年初めてBIYPデーに両親を招いた菅野弘明さん(30)は、父親の仕事で米国で育ちました。両親の教育方針で夏休みは日本の祖父母のもとで暮らし、その間も英語塾の先生をしたり、日本についてのレポートをまとめたり。
「友達が遊んでいる夏休みにもなかなか遊べなかった。だけど、普通以上の努力をすることで得るものがあると学ぶことができました」
父の恭弘さん(61)は「職場参観と聞いて、最初は子どもじゃないのにと思いました。ですが、こうやって子どもの職場のことや考えていることを知ることは非常によい経験になりました」。
リンクトインによると、今年7月に世界1万5千人を対象に実施した調査で、社会人の1割が両親からの助言に一度も感謝したことがなく、一方で5割の社会人がもっと感謝したほうがいいと思っていることがわかったそうです。
BIYPデーのもう一つの重要な目的は、両親を職場に招くことをきっかけに、感謝の気持ちを伝えること。来年は、あなたの職場でもいかがですか?