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韓国と向き合う対馬 国境観光、逆転の発想 「島活性化で安全保障」

 人口減に悩む長崎県の対馬が「国境観光」に乗り出しています。「島の活性化が安全保障につながる」という思いから、対馬出発の韓国ツアーを企画しました。

厳原港まつり対馬アリラン祭の朝鮮通信使行列=2011年8月7日
厳原港まつり対馬アリラン祭の朝鮮通信使行列=2011年8月7日 出典: 朝日新聞

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 人口減に悩む長崎県の対馬が「国境観光」に乗り出しています。「島の活性化が安全保障につながる」という思いから、対馬出発の韓国ツアーを企画しました。

観光に力を入れる対馬市。2012年4月には市交流センターにはザクが登場、観光客の人気スポットに
観光に力を入れる対馬市。2012年4月には市交流センターにはザクが登場、観光客の人気スポットに

朝鮮通信使以来、400年の縁

 1607年に第1回朝鮮通信使が訪れたのが対馬でした。以来、朝鮮半島との縁が深い島として知られています。通信使は1811年までに12回、来日しました。

対馬の厳原港まつりの朝鮮通信使行列=2006年8月
対馬の厳原港まつりの朝鮮通信使行列=2006年8月

2013年には仏像問題で「中断」も

 隣国との関係が、穏やかではない時もありました。盗まれた仏像が韓国から返還されない問題によって、2013年の祭りから朝鮮通信使の行列がなくなったこともありました。2014年には復活が決まりましたが、台風によって中止になりました。

対馬市の観音寺で盗まれた観世音菩薩坐像=長崎県教委提供
対馬市の観音寺で盗まれた観世音菩薩坐像=長崎県教委提供
3日に予定されていた対馬市の恒例行事「朝鮮通信使行列」が、台風に伴う風雨が予想されたため中止になった。日韓の代表が参加する「国書交換式」だけが、対馬市厳原町の市交流センターであった。行列は対馬厳原港まつりの中心行事だが、昨年は市内の寺社から盗まれた仏像が韓国から返還されない問題の影響で中止された。
2014年8月4日:朝鮮通信使行列が中止 対馬:朝日新聞紙面から

世界では普通、韓国と北朝鮮も

 とはいえ、国境観光は世界の色々なところで生まれています。韓国と北朝鮮の軍事境界線にある板門店を訪れるツアーは、すでに旅行商品として定番になっています。他にも安いガソリンを求めて国境を越えるなど、色々な形の国境観光があります。

休戦ラインぎりぎりの場所に立ち警備にあたる北朝鮮軍兵士に、少し離れてヘルメット姿の韓国軍兵士(右側2人)が向き合う=2006年10月11日
休戦ラインぎりぎりの場所に立ち警備にあたる北朝鮮軍兵士に、少し離れてヘルメット姿の韓国軍兵士(右側2人)が向き合う=2006年10月11日
韓国と北朝鮮の軍事境界線上にあり、「国境」にあたる板門店を訪れるツアーは、すでに旅行商品として成り立っている。安いガソリンを求めて国境を越えたり、より安価で高品質の医療を求めて越境したりする“ツアー”も、世界では普通にあるという。
長崎)国境観光ってなに? 人口減の対馬に新たな光:朝日新聞デジタル

韓国人の観光客は増加、日本人は…

 対馬には韓国人の観光客が、たくさん訪れています。その数は年々増えており、昨年は18万5千人が訪れました。一方で日本人の観光客は20数万人で横ばいです。国境観光には、日本人の観光客を増やす狙いがあります。

韓国・釜山まで約50キロにある対馬市の韓国展望台を訪れる韓国人観光客=2012年4月15日
韓国・釜山まで約50キロにある対馬市の韓国展望台を訪れる韓国人観光客=2012年4月15日 出典: 対馬市役所提供
財部能成・対馬市長も参加し、「韓国からの来客は増えて昨年は18万5千人が訪れたが、日本人は二十数万人で横ばい」と報告した。
長崎)国境観光ってなに? 人口減の対馬に新たな光:朝日新聞デジタル

ツアー商品化「十分可能」

 昨年、対馬で日本初の国境観光が企画されました。福岡から飛行機で対馬に入り、海上の国境を越え釜山で1泊するという内容です。ツアーには31人が参加しました。アンケートでは半数以上が「対馬と釜山を再訪したい」と回答。地元では「商品化は十分可能」と手応えを感じています。

ビートルから対馬に降り立った韓国人観光客を島民が花束で出迎えた=2011年10月1日
ビートルから対馬に降り立った韓国人観光客を島民が花束で出迎えた=2011年10月1日
日本で最初の国境観光ツアー。費用は2万2500円で、31人が参加した。ツアー後のアンケートでは、駆け足の日程に不満があったものの、半数以上が「対馬と釜山の両地域を併せて再訪したい」という感想を寄せた。「商品化は十分可能」と判断し、今年末には旅行会社を通さず、自分たちで再び国境観光ツアーを企画している。
長崎)国境観光ってなに? 人口減の対馬に新たな光:朝日新聞デジタル
荒れる海上で、資料用に韓国船を撮影する「なつぐも」の乗組員=長崎県・対馬沖で=1998年2月10日
荒れる海上で、資料用に韓国船を撮影する「なつぐも」の乗組員=長崎県・対馬沖で=1998年2月10日

 ツアーを企画した1人、九州大学講師の花松泰倫(やすのり)さんは 「対馬を国防のとりでにするのではなく、ゲートウエーとして、日本人も訪れたい場所にする。島を活性化することが、最終的には対馬と日本の安全保障につながる」と話しています。

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