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香港民主派デモ、解決か衝突か 異例の対話とその背景

香港で民主派による中心街占拠が1カ月に及ぼうとしている。21日にはついに香港政府と学生団体による異例の対話がはじまった。対立の背景をまとめた。

抗議する学生らに催涙スプレーを吹きつける香港の警察官=延与光貞撮影
抗議する学生らに催涙スプレーを吹きつける香港の警察官=延与光貞撮影 出典: 朝日新聞

目次

 香港の中心街を民主派の学生らが占拠して1カ月が経とうとしている。21日には香港政府との異例の対話が始まった。警察との衝突で逮捕者や負傷者も出ている。学生たちは何を求めているのか。

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市民と警察が激しく衝突 出典: 朝日新聞デジタル

中国本土と香港の一国二制度、トップ選びで対立

中国本土と香港の違い
中国本土と香港の違い 出典:朝日新聞「(いちからわかる!)香港トップの選挙改革、なぜデモが起きたの?」

 香港は1842年から英国の植民地だった。中国に返還された1997年、企業や市民が香港から逃げ出すのを避けるため、今後50年間は外交と国防を除いて、それまでの政治や経済の仕組みを維持する「高度な自治」を中国政府が保障した。一つの国に異なる制度が併存する「一国二制度」と呼ばれている。

 民主派デモの参加者たちが問題視しているのは、香港のトップである香港行政長官を決める選挙の仕組みだ。2012年の前回選挙までは、1200人からなる選挙委員会の8分の1以上の人から推薦された人が候補者となり、選挙委員が投票する制限選挙。次回の2017年からは、全市民が参加する普通選挙となる予定だった。ところが、中国政府が提示してきた選挙の改正案は、親中派以外の立候補が難しいシステムだった。

香港行政長官選挙
香港行政長官選挙 出典: 朝日新聞

学生ら中心部を占拠、衝突と膠着

香港中心部の幹線道路を占拠した民主派の学生ら=時津剛撮影
香港中心部の幹線道路を占拠した民主派の学生ら=時津剛撮影 出典: 朝日新聞

 デモの中心となっているのが学生らだ。9月22日に選挙制度改革案への抗議を意志を示すために1週間の授業ボイコットを開始。さらに、香港中心部を占拠して改革案の撤回を求めている。警察との衝突で負傷者や逮捕者も出ている。10月21日から、ようやく香港政府との対話が始まったが、主張は対立している。

 占拠が長引いていることから、観光や商業など経済にも影響が出ている。民主派を支援する側にも、方針をめぐって異論が出ている。

香港のデモの構図
香港のデモの構図 出典: 朝日新聞

 中国政府の動向に国際社会も無関心ではいられない。米国のオバマ大統領は10月1日、訪米中だった王毅・中国外相に「香港市民の志を支持する」と述べ、香港の安定には開かれた制度が必要との考えを伝えた。これに対し、王氏は「中国への内政干渉だ」と強く反発した。

香港のデモをめぐる米中の構図
香港のデモをめぐる米中の構図 出典:朝日新聞「米大統領「香港市民の志を支持」 中国外相は強く反発」

始まった「異例の対話」

 朝日新聞の10日付けの記事では、デモ参加者たちの言葉を伝えている。

 中学5年(高校生に相当)のマビス・ユーさん(18)、アリエティー・チャンさん。ユーさんは「住民や店の人に迷惑をかけているのは、申し訳ないと思ってる。でも、政府が市民の声にきちんと向き合えば、こんなに長引かなかったはず。責任は政府にもある」と話した。「選挙制度改革は、自分たちの未来にも関係すること。若くたって自分の考えは示したい」
 政府が進める香港郊外の農村開発計画に反対している卓佳佳さん(25)はほぼ毎日、参加。警察の催涙弾に備え、ゴーグルやマスクも持参している。物価は上がり、庶民の生活は苦しくなるばかり。「政府は一部の業者を優遇し、市民のことを考えていない。きちんと民意を反映させるには、選挙制度から変えないといけない」と考えている。
 占拠に反対する人たちとの小競り合いが続いている旺角では、玩具店を営む陳明輝さん(30)が占拠に加わっていた。3日に学生が正体不明の暴徒に襲われたのを見て、金鐘から移ってきた。「大人が守らなきゃ、と思ってね」

 旺角には銀行や貴金属店、ブランド品店が集まり、占拠は政府への圧力になると考えている。「休業している店は暴徒が怖いからで、責任は暴力を止めなかった政府にある。リーダーはいないが、みんな心はひとつ。もし学生団体が撤退を決めても、ここを離れない」と決意を語った。
 IT会社に勤めるアンガス・イウさん(40)。翌日も仕事があり、3時間ほどで帰るつもりだ。「学生が頑張っているから、少しだけど支持を表したくて」と話した。だが、そろそろ市民生活への影響は避けるべきだとも思う。「商店が多い銅鑼湾や旺角からは撤退し、金鐘に集まるべきだ。支持していた人たちも離れてしまう」
 
 実は、選挙制度改革の見通しには悲観的だ。「対話といっても、中国が背後に控える香港政府ができることはほとんどない。でも、ここで抗議ができるのも、自由がある香港だから。自由で民主的な社会だけは守りたい」
以上、朝日新聞「香港、私が座り続ける理由 未来に関係・大人が学生守る・自由な社会を」
民主派リーダーの黄之鋒さん
民主派リーダーの黄之鋒さん 出典:朝日新聞「香港デモ、引っ張る17歳 逮捕・釈放…再び合流」

 若者のリーダーの一人、大学1年生の黄之鋒さん(17)は「武装革命じゃない。制度改革を求める民主運動だ。暴力に反対しよう。平和的に闘おう」と呼びかけてきた。 「占拠で経済的損失があるという批判は分かるが、真の普通選挙はそれと引き換えるに値する」。

 占拠を続けてきた学生団体と香港政府との21日夜の初対話。民主派は、一定の市民の支持があれば誰でも立候補できる仕組みを要求したが、香港政府は「(改革の方向性を決めている)香港基本法に合わない」と拒否した。

占拠の続く香港の官庁街・金鐘では香港政府と民主派の対話が大型スクリーンで同時中継され、学生団体の代表が発言する姿が映し出されると大きな拍手があがった=石橋亮介撮影
占拠の続く香港の官庁街・金鐘では香港政府と民主派の対話が大型スクリーンで同時中継され、学生団体の代表が発言する姿が映し出されると大きな拍手があがった=石橋亮介撮影

出典:朝日新聞「香港政府「要求、中国政府に伝える」 民主派と初の対話」

 政府と学生団体が直接対話するのは、「一国二制度」の下で「高度な自治」が保障されている香港でも極めて異例。対話の行方に注目が集まっている。

占拠が続く道路脇の柱には、「天安門事件を繰り返すな」と書かれた紙が貼られていた=延与光貞撮影
占拠が続く道路脇の柱には、「天安門事件を繰り返すな」と書かれた紙が貼られていた=延与光貞撮影 出典: 朝日新聞

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