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アキバで戦闘員を募集? 米国も恐れる武装組織「イスラム国」とは

中東の武装組織「イスラム国」に加わろうとしたとして、日本の大学性が警視庁から任意聴取を受けました。海外から数万の若者を引きつけて勢力を拡大し、米国も恐れるその実態とは。

イスラム国の兵士たち=イラク北部モスル、6月23日撮影
イスラム国の兵士たち=イラク北部モスル、6月23日撮影 出典: ロイター

  シリアに渡って中東の武装勢力「イスラム国」の戦闘に加わろうとしたとして、警視庁が北海道大の男子学生を事情聴取しました。シリア東部からイラク北部にかけて勢力を広げ、世界中から若者を引きつけるイスラム国とは。その実態をまとめました。

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「イスラム国」とはなにか

イスラム国の指導者バグダディ師とみられる男。7月5日にインターネット上に公開された画像から
イスラム国の指導者バグダディ師とみられる男。7月5日にインターネット上に公開された画像から 出典: ロイター

 イスラム国は、アラビア語でal-Dawlah al-Islāmīyah(英語ではIslamic State)。今年6月にイスラム教の開祖である預言者ムハンマドの後継者(カリフ)を頂点とする国家の樹立を宣言したが、国際的には国として承認されていない。

イラク北部からシリア東部の地域を占拠しているイスラム教スンニ派の過激派だ。6月には「カリフ制イスラム国家」をつくったと宣言した。シリアで拉致した米国人や英国人の首を切る映像をインターネットで公開。2001年に米同時多発テロを起こしたアルカイダよりも残忍だといわれる。8月にはシリアで日本人の男性も拘束した。
朝日新聞デジタル:(いちからわかる!)「イスラム国」は何をしようとしているの?

 イスラム国はその名の通り、イスラム教に基づいた国づくりを宣言している。しかし、その活動の過激さは、一般的なイスラム教徒中心の国家とは比較にならない。

 お酒を飲まない、一日5回のお祈りを欠かさないといったイスラムの教えに忠実な国だ。ただ、やっていることはかなり極端だ。たとえばキリスト教徒に銃を向けて改宗を迫ったり、同じイスラム教でもシーア派は殺したりしている。今のイラクやシリアの国境線は、第1次大戦中に英国とフランス、ロシアが勝手に決めた。「イスラム国」はその国境をなくそうとも訴えている。
朝日新聞デジタル:(いちからわかる!)「イスラム国」は何をしようとしているの?

海外から若者引きつける

 警視庁は6日、北海道大の男子学生(26)が、シリアに渡ってイスラム国の戦闘に加わろうとしたとして刑法の私戦予備・陰謀の疑いで事情聴取したことを明らかにした。捜査の端緒は、東京・秋葉原の古書店に求人広告が出ているとの情報だったという。

 公安部によると、「勤務地:シリア」「詳細:店番まで」と書いた求人広告が東京・秋葉原の古書店に出ているとの情報を受けて捜査。古書店関係者の知人だったこの学生が7日にシリアへの渡航を図っていることが分かったという。学生にシリアへの渡航歴はなく、国際的なテロ組織との直接的な関わりも分かっていないという。

 求人に関わったとされる古書店関係者は日本人の男性。朝日新聞の取材に対して、求人広告を掲示したことを認め、「イスラム法学が専門の元大学教授に渡航希望者を数人紹介した」と話している。

 元大学教授も古書店関係者から「『イスラム国』に行きたい大学生がいたら紹介したい」などと相談を受けたことを明らかにしたうえで、「自分から『イスラム国』行きを勧めたりはしない」と話した。元教授はこれまで数回、調査などで「イスラム国」の支配地域に入ったことがあり、現地の様子を発表している。
朝日新聞デジタル:「イスラム国」参加計画の疑い、日本人学生を聴取 警視庁

 欧米では以前から若者たちがイスラム国へわたり、兵士として戦闘に加わっていることが問題視されていた。国連安全保障委員会は9月24日、首脳級会合で具体的な措置を各国に求める決議を採択し、一部の国は旅券の没収や一時的な帰国拒否といった措置の検討を始めていた。

イスラム国に加わる若者たち
イスラム国に加わる若者たち 出典:朝日新聞デジタル:テロに走る若者、封じ込め 安保理、「イスラム国」対策を決議

 安保理の首脳級会合では、議長を務めたオバマ大統領が「彼らが自分の国に戻り、致命的な攻撃を実行しようとした例がこれまでにもあった」と指摘。こうした若者らが帰国すれば欧米でテロを起こす懸念があるとし、早急に対策を取る必要性を訴えた。

 全会一致で採択した決議は、イスラム国の過激思想に感化された者がシリアなどに渡航したり、「ジハード(聖戦)戦士」として訓練を受けた後に自国に戻ったりすることを取り締まるよう各国に要請。資金の移動も制限できる法律の整備を、国連加盟国に義務づけた。また、テロ集団の動向についての情報交換を加盟国が進めるよう求めた。

 約500人が戦闘員になったとみられる英国のキャメロン首相は、テロ行為への加担が疑われる人物に対し、旅券没収や渡航禁止などの適用を強化する考えを示した。重国籍者については、英国籍を剥奪(はくだつ)する措置も活用するという。

 フランスでは、テロ目的で渡航するとみられる人物の出国を防ぐ法案が議会で審議される予定。ドイツは、「イスラム国」支援者の会合や寄付、公共の場での「イスラム国」のシンボルマークの使用、インターネットなどを通じた勧誘も厳しく取り締まる方針だ。
朝日新聞デジタル:テロに走る若者、封じ込め 安保理、「イスラム国」対策を決議

 約400人がイスラム国に加わったとされるドイツでも、対策がとられている。民間でも、ネオナチなど極右から若者を脱退させてきた組織が、そのノウハウを生かして若者たちの過激思想への傾倒を防ごうとしている。

 スタッフの一人で、元警察官のダニエル・ケーラーさん(29)は「タマネギの皮をむくように少しずつ警戒心を解く。平均1年から1年半はかける」と話す。「社会からはじき出された若者の疎外感や正義に対する渇望の受け皿という点で、ネオナチとジハード戦士は似ている。ただ、ジハード戦士の方が感化のスピードが速い」

 独政府によると、「イスラム国」に加勢するためにシリアやイラクに渡ったドイツ出身者は約400人。うち100人以上はすでに帰国しているとみられる。政府は、彼らが国内や欧州でテロ行為に及ぶのを恐れており、9月12日、国内で「イスラム国」の支援活動を禁止すると発表。支援者の会合や寄付、公共の場でのシンボルマークの使用、インターネット上での勧誘活動なども含まれる。帰国した「ジハード戦士」の拘束も相次ぐ。9月19日には、ベルリン在住のトルコ系の男(40)がシリアで戦闘に参加した疑いで逮捕された。
朝日新聞デジタル:「イスラム国」誘惑断て ネオナチ対策、若者に応用 ドイツ

豊富な資金で強大な勢力 米国は地上部隊投入も検討

 米国は空爆に踏み切り、フランス、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ヨルダン、カタールも攻撃に参加した。日本は米国の行動への支持を表明している。

イスラム国への攻撃、各国の立ち位置
イスラム国への攻撃、各国の立ち位置 出典:朝日新聞デジタル:米、「イスラム国」打倒訴え 国連でオバマ氏 各国に連携促す

 しかし、イスラム国は豊富な資金を背景に強大な勢力を維持。米国は地上部隊の投入も検討している。

米軍などによる空爆がイラクとシリアで本格化するなか、「イスラム国」の資金源を断つことが課題として浮上している。住民から集めた「税金」をもとに戦闘員を雇う「国家並み」の経済システム。空爆だけでは、その支配を崩せない可能性が強いためだ。
朝日新聞デジタル:「イスラム国」資金源、着々 税や寄付強要/油田を管理下
「イスラム国」は、シリア東部やイラク北部で多数の油田を管理下に置く。米外交誌フォーリン・ポリシーは、少なくとも日量8万バレルの原油生産能力を持つ可能性があるとの分析を紹介した。国際市場での取引価格で売ったとすれば、売上高は1日800万ドル(約8億6千万円)。実際の収入はわかっていないが、1日で数億円規模に達する可能性がありそうだ。

 かつて「イスラム国」は、湾岸諸国などからの寄付に依存しているとされていた。だが、国際社会による監視強化で資金流入が減少する一方、現在は支配地域内での経済的自立を果たした模様だ。
朝日新聞デジタル:「イスラム国」資金源、着々 税や寄付強要/油田を管理下

 現地ではジャーナリストが拉致され、殺されており、取材が困難になっている。米ニュースサイト「VICE News」はイスラム国を直接取材し、その模様をYoutubeで公開している。日本語字幕もついている。

The Spread of the Caliphate: The Islamic State (Part 1) 出典: Youtube「VICE News」

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