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佐世保の同級生殺害事件、容疑少女の父が自殺か 自宅で見つかる
長崎県佐世保市で高1の女子生徒が殺害された事件で、逮捕された同級生の少女(16)の父親が5日、首をつって死亡しているのが見つかった。県警は自殺とみている。


代理人弁護士によると、父親は事件後、「私は生きていていいんでしょうか」と話すなど落ち込んでいたという。今月3日に電話で話したのが最後という。

大人たちに共有されなかった危機感
殺害事件はなぜ防げなかったのか。
殺人容疑で逮捕された少女の過去の問題行動について、注目が集まっていた。

だが、中学校長の受け止めは違っていた。「この事案は、既に解決済み」。保護者同士で一定の解決をしていることや、小学校長が「同じ小学校から入学する他の生徒にも配慮してほしい」と依頼するなどしたため、こうした認識になったという。結果、組織的な情報共有は行われなかった。
少女が中学3年の3月に起こした父親に対するバット殴打事件でも、少女と継続的に面会していた学校関係者の危機感は、報告した校長に伝わらなかった。校長は、少女への見守りを続けるよう指示し、関係機関に情報を伝えなかった。

被害生徒の両親「防げたのではないか」
被害生徒の両親は9月に公表したコメントで「同じことを繰り返さない教育や対応を望む」としていた。
一方で「家族みんなで前に進む気持ちも芽生えて」いるともつづった。生徒の2人の弟は通学しており、「先生や友人の優しさにふれながら日常を取り戻す第一歩を踏み出した」という。
事件の原因や経緯については「詳しく知らされていませんが、防げたのではないか」と指摘。学校には、事件前の少女の問題行動について警察や児童相談所に通報してほしかった、としたうえで「同じ事件を繰り返さない教育や対応を望みます」と求めた。

専門家の見方
佐世保の事件を専門家はどう見ていたのか。
児童精神科医で岐阜大学准教授の高岡健さんは、今回のような未成年者の猟奇的な殺傷事件について、「個人に原因を求めるだけでは、根本的な解決にはなりません。近年の日本社会が普遍的に抱える『関係の貧困』という課題として、とらえていくべき」と指摘する。
おそらく女子生徒は両親の期待を背負い、他人より秀でなければいけないという彼らの価値観に合わせてきたのでしょう。成功を目指して努力し、いい大学に行けば幸福が約束される。そんなシナリオがもはや幻想であることを、大人もそして誰より子どもたちが気づいている時代なのに、自分のチャンネルを変える発想がないように見える両親に、従おうとした。逆にいえばそういう選択肢しか、彼女にはなかったんだと思う。

一方、1997年に神戸市須磨区で起きた小学生連続殺傷事件の少年審判を家裁で担当した井垣康弘さん(元裁判官・弁護士)は、加害未成年を「被害者と同じ視点」だけから見ることに異議を唱える。

