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佐世保の同級生殺害事件、容疑少女の父が自殺か 自宅で見つかる

長崎県佐世保市で高1の女子生徒が殺害された事件で、逮捕された同級生の少女(16)の父親が5日、首をつって死亡しているのが見つかった。県警は自殺とみている。

被害少女の通夜を終え、体を支えながら歩く参列者たち=殺害事件発生後の7月28日、長崎県佐世保市、上田幸一撮影
被害少女の通夜を終え、体を支えながら歩く参列者たち=殺害事件発生後の7月28日、長崎県佐世保市、上田幸一撮影 出典: 朝日新聞デジタル

目次

 長崎県佐世保市で7月、高校1年の女子生徒(当時15)が殺害された事件で、殺人容疑で逮捕された同級生の少女(16)の父親が5日、市内の自宅で首をつって死亡しているのが見つかった。県警は自殺とみている。
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 少女は7月26日、生徒の頭を工具で殴り、首をしめて殺害した疑いで逮捕された。8月から3カ月間、精神鑑定のため医療機関に鑑定留置されている。
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現場の地図
現場の地図 出典:朝日新聞デジタル
 父親は事件後、代理人の弁護士を通じ、「複数の病院の御助言に従いながら、私たちのできる最大限のことをしてまいりましたが、私の力が及ばず、事件が発生したことについては、誠に残念でなりません」などとする謝罪文を出していた。

 代理人弁護士によると、父親は事件後、「私は生きていていいんでしょうか」と話すなど落ち込んでいたという。今月3日に電話で話したのが最後という。
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殺害事件のあったマンションに入る長崎県警の捜査員ら=7月27日午後0時19分、長崎県佐世保市、上田幸一撮影(画像を一部修整しています)
殺害事件のあったマンションに入る長崎県警の捜査員ら=7月27日午後0時19分、長崎県佐世保市、上田幸一撮影(画像を一部修整しています) 出典:朝日新聞デジタル

大人たちに共有されなかった危機感

 殺害事件はなぜ防げなかったのか。
 殺人容疑で逮捕された少女の過去の問題行動について、注目が集まっていた。

少女をめぐる動き
少女をめぐる動き 出典:朝日新聞デジタル
 小学6年の12月。少女は同級生の給食に洗剤などを混入する事件を起こした。中学進学を控えた3月、小学校長は中学校長に対し、まず電話で、さらに中学に出向いて対面で、事件の概要や少女のカウンセリングが2回で中断したことなどを説明した。「今後のケアについても危機感を持って引き継ぎを行った」と、報告書は小学校長の認識を記す。

 だが、中学校長の受け止めは違っていた。「この事案は、既に解決済み」。保護者同士で一定の解決をしていることや、小学校長が「同じ小学校から入学する他の生徒にも配慮してほしい」と依頼するなどしたため、こうした認識になったという。結果、組織的な情報共有は行われなかった。

 少女が中学3年の3月に起こした父親に対するバット殴打事件でも、少女と継続的に面会していた学校関係者の危機感は、報告した校長に伝わらなかった。校長は、少女への見守りを続けるよう指示し、関係機関に情報を伝えなかった。
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事件を説明する全校集会のため、登校する生徒たち=28日午前8時、長崎県佐世保市、上田幸一撮影
事件を説明する全校集会のため、登校する生徒たち=28日午前8時、長崎県佐世保市、上田幸一撮影 出典:朝日新聞デジタル

被害生徒の両親「防げたのではないか」

 被害生徒の両親は9月に公表したコメントで「同じことを繰り返さない教育や対応を望む」としていた。

 両親は「悲しみ、寂しさ、悔しさもかわらず、毎日、涙があふれます」とし、娘の命を奪った行為を「決して許す事はできません」と記した。母親は夜も寝付けず、外出がつらい状態が続く。父親は少しずつ出勤しているが、仕事中に娘を思い出して集中できないでいるという。

 一方で「家族みんなで前に進む気持ちも芽生えて」いるともつづった。生徒の2人の弟は通学しており、「先生や友人の優しさにふれながら日常を取り戻す第一歩を踏み出した」という。

 事件の原因や経緯については「詳しく知らされていませんが、防げたのではないか」と指摘。学校には、事件前の少女の問題行動について警察や児童相談所に通報してほしかった、としたうえで「同じ事件を繰り返さない教育や対応を望みます」と求めた。
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被害生徒の両親が9月18日に代理人弁護士を通して発表したコメント
被害生徒の両親が9月18日に代理人弁護士を通して発表したコメント 出典:朝日新聞デジタル

専門家の見方

 佐世保の事件を専門家はどう見ていたのか。

 児童精神科医で岐阜大学准教授の高岡健さんは、今回のような未成年者の猟奇的な殺傷事件について、「個人に原因を求めるだけでは、根本的な解決にはなりません。近年の日本社会が普遍的に抱える『関係の貧困』という課題として、とらえていくべき」と指摘する。

 7月に起きた長崎県佐世保市の女子高生による同級生殺害事件は、母の死や父の再婚など、様々な話題が取り沙汰されました。報道された限りの情報で私が着目したのは、女子生徒がせっかく選抜されたスケートの国体出場を嫌がり、「足が痛い」と言って棄権したことです。さらにもう一つ、小6のときに起こした給食の異物混入騒ぎのきっかけが、友達から「勉強ばかりして」と言われたことだったという話も、カギではないかと思いました。

 おそらく女子生徒は両親の期待を背負い、他人より秀でなければいけないという彼らの価値観に合わせてきたのでしょう。成功を目指して努力し、いい大学に行けば幸福が約束される。そんなシナリオがもはや幻想であることを、大人もそして誰より子どもたちが気づいている時代なのに、自分のチャンネルを変える発想がないように見える両親に、従おうとした。逆にいえばそういう選択肢しか、彼女にはなかったんだと思う。
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高岡健さん。53年生まれ。岐阜赤十字病院精神科部長を経て現職。著書に「精神現象を読み解くための10章」など。ひきこもりや不登校の問題でも発言。=時津剛撮影
高岡健さん。53年生まれ。岐阜赤十字病院精神科部長を経て現職。著書に「精神現象を読み解くための10章」など。ひきこもりや不登校の問題でも発言。=時津剛撮影 出典:朝日新聞デジタル

 一方、1997年に神戸市須磨区で起きた小学生連続殺傷事件の少年審判を家裁で担当した井垣康弘さん(元裁判官・弁護士)は、加害未成年を「被害者と同じ視点」だけから見ることに異議を唱える。

 今回の佐世保事件では、15歳の少女が自分の人生を捨てる決心をせざるを得ないような状況に追い込まれていたことに心から同情します。しかし、社会では彼女に対して「かわいそう」という声が全く出ません。凶悪事件を起こしても子どもは保護されて生きる機会を与えられることを知っている世間は、被害者と同じ視点で彼女を加害者としてだけ見ます。
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彼らがなぜこういうことをしたのか社会は克明に知るべきです。生きる意欲を失った経過、社会に対する恨みの内容、一撃を加えたいと思った理由などは家裁の調査で判明します。詳しくわかれば、事件を防ぐ方法も見つかる。そのために家裁は克明な決定書を公表すべきで、メディアも審判の代表取材を求めるべきです。社会が何を教訓としたらいいのかを知らせなくてはいけないと思います。
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井垣康弘さん。40年生まれ。67年裁判官に任官、05年の退官後に弁護士。退官直前にがんを患い声帯を摘出、笛式人工喉頭(こうとう)を使う。著書に「少年裁判官ノオト」など。=豊間根功智撮影
井垣康弘さん。40年生まれ。67年裁判官に任官、05年の退官後に弁護士。退官直前にがんを患い声帯を摘出、笛式人工喉頭(こうとう)を使う。著書に「少年裁判官ノオト」など。=豊間根功智撮影 出典:朝日新聞デジタル
10歳以上の少年10万人当たりの刑法犯検挙人数の推移
10歳以上の少年10万人当たりの刑法犯検挙人数の推移 出典:朝日新聞デジタル

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