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IT・科学

トップ退任のグノシー年商40億円規模へ スマホのポータルめざす

 共同CEOだった木村氏の突然の辞任が臆測を呼んだニュースアプリ「グノシー」。だが、その後もダウンロード数は堅調に伸び、拡大路線は止まっていないという。福島CEOに聞いた。

Gunosyの福島良典CEO=古田大輔撮影
Gunosyの福島良典CEO=古田大輔撮影

目次

 8月末に共同最高経営責任者(CEO)だった木村新司氏(36)が突然退任し、様々な臆測を呼んでいたニュースキュレーションサービス「グノシー」(東京都港区)。テレビCMを打ち、機能を増やし、海外に進出する拡大路線に変化はないのか。創業者であり、木村氏が去って唯一のCEOとなった福島良典氏(26)に聞いた。

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550万DL、広告売上も増加 路線に変更なし

 8月28日に14億円の赤字決算を公表し、同時に木村共同CEOがプレス発表をせずにひっそりと退任。「赤字が原因か」「かつて広告会社を売却したグリーに競業避止義務違反で訴えられる可能性を考慮した」などと騒がれた。

 退任後の木村氏は公の場に姿を現しておらず、記者(古田)もインタビューを申し込んだが断られた。

7月にインタビューに応える木村氏
7月にインタビューに応える木村氏 出典: 朝日新聞

 木村氏はグノシーが2012年11月に創業した当初から出資し、創業メンバーの福島氏らに経営のアドバイスをしてきた。1年後に共同CEOに就任すると、KDDI、ジャフコ、B Dash Venturesから24億円を調達。社員を増やすとともに、テレビCMを積極的に打ち、ダウンロード(DL)数が一気に500万件を超えるなど、拡大路線を進めた。

 福島CEOは「会社の土台を作ることが木村の役割で、それを終えた段階での退任は既定路線だった」と話す。プレスリリースを出さなかったのは「小さいベンチャーがそこまでするのもと遠慮した」(伊藤光茂最高財務責任者=CFO)。グリーとの訴訟回避説については「我々は何も聞いていない」と述べるにとどまった。

 拡大路線に変わりはない。すでにDLは550万件を超え、来年7月の段階で800万DLとしていた目標を年内に達成する見込みだという。この数字には、auのスマートフォンに入っているプリインストール版は含まれていない。

 ユーザー数増加に伴い、広告売上も伸びている。DL数が300万台だった5月段階で広告の月間売上が推定で約2億円。「数字は公表しない」(伊藤CFO)としているが、月間売上は年内にも3億円を超えると見られる。年商にして40億円規模だ。

 現在、アルバイト含めて44人体制だが、2015年5月末には社員数を80人に増やす予定。現状で人件費や事務所費などの固定費が月間2千万円。これが倍に増えても、広告収入で十分まかなえ、余った分はテレビCMに回せる。近々、より広いオフィスへ移ることも検討しているという。

「編成に人の手を入れる」

 業績が堅調に伸びるなか、ニュース編成手法は大きく変える。福島CEOは「現状では、記事を編成する最後の部分ではアルゴリズムより人の方が優れている。人による編成を取り入れていく」と明らかにした。

福島良典CEO
福島良典CEO

 アルゴリズムで記事を収集しつつ、それらをトップページに並べる際にはアルゴリズムによる順位づけだけでなく、人が最終判断を下す。それによって「釣り見出しで内容が薄い記事やアダルト記事などをはじける」。テーマが同じ記事の中から内容がより充実しているものを選ぶことも可能になる。

 「グノシーはアルゴリズムの会社というイメージがあるが、目的はユーザーが求める情報を届けること。そのために必要なら編集に人の手を入れる」。すでに試行を始めており、成果を見ながら今後は専任の編集者を雇うという。

 参考にするのは、米ニュースサイト「バズフィード」だ。アルゴリズムと人の手で、エンタメ系ニュースやネコの写真などネット上でシェアされやすい話題を中心にニュース編成し、急成長した。現在は、記者を雇って独自の調査報道もしている。

 福島CEOは「ユーザーが求めるならば、編成だけでなく、編集部でオリジナルコンテンツをつくることもありうる」と述べた。

グノシー(左)とバズフィード(右)のアプリ画面
グノシー(左)とバズフィード(右)のアプリ画面

ニュースアプリを超えたスマホポータル

 グノシーの将来について、福島CEOはこう強調する。「たんなるニュースアプリではなく、スマホのポータルを目指すと最初から言っている」

 ニュースという毎日読む習慣性の強いアプリを入り口にして、そこに登場する商品の電子商取引(EC)などにつなげていく戦略だ。タクシーを呼ぶ機能なども計画を進めており、「いつリリースするかはまだ言えないが、期待してて欲しい」と話す。

 グノシーの競合として名前が挙げられる「スマートニュース」は、ニュースに特化し、アルゴリズムによる良質な記事の提供とユーザーインターフェース向上を突き詰めている。トップページには報道機関の記事が並ぶことが多い。エンタメ系記事が比較的多いグノシーとは、アルゴリズムを利用したニュースアプリといっても、編成のあり方も戦略も根本的に異なる。

スマートニュースのアプリ画面
スマートニュースのアプリ画面

 コメント機能が人気のニューズピックス、PCで圧倒的なシェアを握ってきたヤフー、無料通話・メールアプリからニュースにも進出したLINE。巨人グーグルもニュースキュレーションアプリを発表した。競合は多く、次々と新しいサービスが生まれている。

 福島CEOは「つぶし合いとかは考えていない。日本ではニュースを読む人は8千万人いる。数百万DLなんてまだまだ全然小さくて、これから伸びる市場。世界にはさらにその10倍以上の市場がある」と拡大路線に自信を見せている。

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