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グルメ

なぜそうなった? 福岡の「魔法のうどん」が食べても減らないワケ

 やわらかいと言われる福岡のうどんの中でも異彩を放つ「釜揚げ 牧のうどん」という店があります。食べてる間も出汁を吸って増え続ける「魔法のうどん」が、そうなったのには店のこだわりがありました。

福岡市民には馴染み深い「釜揚げ 牧のうどん」=福岡市
福岡市民には馴染み深い「釜揚げ 牧のうどん」=福岡市 出典: 朝日新聞

目次

 やわらかいと言われる福岡のうどんの中でも、ひときわ異彩を放つ「釜揚げ 牧のうどん」という店があります。食べてる間も出汁を吸って増え続ける「魔法のうどん」として有名。なぜそうなったのか訊いてみました。

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モッチモチの麺がいつまでも丼に

 まず「牧のうどん」を知らない方のためにざくっと解説。「釜揚げ 牧のうどん」は福岡県北西部にある糸島市が拠点のチェーン店です。1973年創業。製麺所の直営店として始まりました。佐世保や鳥栖など県外を含め、主にロードサイドに18店を展開中(2014年5月現在)。ちなみに「牧」は名字ではなく創業の場所の地名。「牧」にあるうどん屋、という意味です。

「釜揚げ 牧のうどん」空港店。食事時になると駐車場は満杯に=福岡市
「釜揚げ 牧のうどん」空港店。食事時になると駐車場は満杯に=福岡市 出典: 朝日新聞

 太めの麺で基本的にコシはありません。そのかわり、モッチモチです。Wikipediaでも解説されていますが、麺がどんどん出汁(スープ)を吸い込んでいくため、ゆっくりと食べているとなかなか減らず、丼の底にいけません。「食べても減らない魔法のうどん」と言われるゆえんです。
 女型の巨人に挑んだリヴァイ班のように速攻を仕掛けるか、腹を決めてふくらむ麺にマッタリとつきあうか。一応、固めんでも注文できますが…やわいです。

「釜揚げ 牧のうどん」のごぼ天うどん
「釜揚げ 牧のうどん」のごぼ天うどん 出典: 朝日新聞

 注文すると、小さなヤカンも一緒に運ばれてきます。「お冷や」や「お茶」ではありません。入っているのはスープ。麺に吸われた出汁を補うために、黙っていてもついてきます。かつてはおばちゃんが大きなヤカンを持って巡回していましたが、忙しい時間帯には行き渡らないことがあったため、10年ほど前からこのスタイルに変わったそう。
 ちなみに福岡のごぼ天は、ごぼうの天ぷら。ゴボウ入りのかまぼこなどではありません。

水で締めないから…では、なぜ締めない?

 さて、それではなぜそこまでやわらかいのか。牧のうどんでは「釜揚げ」の名の通り、ゆでた麺を直接どんぶりに移します。袈裟丸治常務によると、「水で締めないので、水分を吸う状態。だからスープを吸うんです」とのこと。
 ここまでは、知っている人もいるかも知れません。ではでは、なぜ麺を締めないの??

 【寿柳聡】袈裟丸治常務(61)は「締めないことで麺の表面と芯の水分量に差がつく。もちっとしながら軟らかいだけではない麺にする工夫」とこだわりを語る。
朝日新聞 (知っとーと?)福岡のうどん、なぜ軟らかい ゆで時間2倍、だしと一緒にズズズ

 袈裟丸常務によると、締めた場合は麺の中の水分量が均一に近くなるそう。「締めるとやわらかいだけの麺になるが、締めないことで表面から芯に向けて水分量に勾配がつき、もちっとした食感が出る」のだそうです。
 wikiには「省力化・時短化に基づくコスト圧縮」なんて文言がありますが、創業以来のモッチリ感へのこだわりが、真の理由。

夜になっても客足が絶えない「釜揚げ 牧のうどん」本店=福岡県糸島市
夜になっても客足が絶えない「釜揚げ 牧のうどん」本店=福岡県糸島市 出典: 朝日新聞

希望なら1時間 ゆで時間もハンパない

 そしてもうひとつのポイントは、ゆで時間の長さ。福岡の昔ながらのうどんや、讃岐うどんと比べるとよくわかります。

 昔ながらの福岡のうどんはゆで時間20分ほど。これに対し、本場さぬきうどん協同組合(高松市)の大峯茂樹理事長(65)は「讃岐は10分ほど」と話す。
朝日新聞 (知っとーと?)福岡のうどん、なぜ軟らかい ゆで時間2倍、だしと一緒にズズズ
 牧のうどんのゆで時間は「ふつう」で30分前後。さらに軟らかいものは40分から1時間近く。標準よりも硬めの麺を指定する客は2割に過ぎない。ラーメンは「バリ硬」「ハリガネ」などがもてはやされる福岡だが、うどんはやはり「軟」が人気だ。
朝日新聞 (知っとーと?)福岡のうどん、なぜ軟らかい ゆで時間2倍、だしと一緒にズズズ

 コシが命の讃岐うどんの大御所、大峯さんも「福岡に行った時には食べるよ。あれはあれで、うまい」とおっしゃってました。
 福岡に車でお立ち寄りの際には、ぜひ、この魔法をズズズっと味わってみてください。あ、ちなみにネギ入れ放題です。

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