感動
高校野球 白球とともに マネジャーたちの夏
野球に限ったことではありませんが、高校野球でも出場選手はもちろん、さまざまな仲間が、それぞれの思いを胸に奮闘しています。そんなマネジャーたちのエピソードをいくつか紹介します。

野球に限ったことではありませんが、高校野球でも出場選手はもちろん、さまざまな仲間が、それぞれの思いを胸に奮闘しています。マネジャーにまつわるエピソードを紹介します。
亡きカレシの夢 甲子園 「私が代わりに行く」

「マサヒロ」は初めての彼氏、藤井将宏さん。中学の入学式で一目惚(ぼ)れした。2回フラれた後の中学3年春から付き合った。野球部の中心選手で、ふと顔を上げた瞬間だけ二重になる目が好きだった。彼はよく言っていた。「甲子園に行って、プロ野球選手になる」
昨夏の大会で話題になったエピソードから。マサヒロは藤井将宏さん。2010年8月に川でおぼれて14歳で亡くなりました。棺に便箋10枚の手紙を入れた牧野さんは、決めたそうです。「私が代わりに甲子園に行く」。延学は女子マネジャーを募集していませんでしたが、1年春から練習に通い、怒られながら一から野球を学びました。

そして2013年夏。延学は甲子園出場を果たし、牧野さんもグラウンドに。チームは決勝まで進み前橋育英と戦って準優勝で夏を終えました。
次の恋は考えられない。「いつかどこかで会えると思うから」。代わりに、好きなものはある。「ドキドキして胸が熱くなる。野球が大好き」

牧野記録員は、持ち帰った甲子園の土を、中学時代の彼氏の父に渡し、あの時の約束を果たしきった。命の重みを知り、根性のある18歳。次の世界でも、輝けるはずだ。(渡辺芳枝)
目標はプロ 選手と女子マネ 二刀流


兄の影響で小1から野球を始めた今橋さん。高野連の規定で女子は試合に出られないが、男子とほぼ同じメニューをこなしています。一方で、体力差からどうしても一緒に練習できない時間には、ドリンク作りやデータ整理などマネジャー業をしてチームを支えます。
鼻を骨折 / 血豆つくりノック
選手として練習に取り組む女子部員は各地にいます。こちらは、舟入高校(広島市中区)の石下奈海さん(3年)。

「もう、かかってこいや」という気持ちで練習することにした。今は男子部員も音をあげる筋トレ「タイヤ押し」もできる。練習試合で放った安打は10本以上になった。
監督に代わりノックをするマネジャーたちもいます。

丸山さんは「男子部員はみんな守備の練習がしたいはず。このチームのためなら何か力になりたいと思った」。部員の練習が終わった後、バットを手に使い古したボールを打ち続け、手には血豆もできた。
「お前はチーフ!」相棒の遺志継ぐ
熊本ではこの夏、男子マネジャーのこんなエピソードが朝日新聞地域面に掲載されました。
「いいチームになった」。4月に亡くなったもう一人のマネジャー、梅本健優(けんゆう)(17)にも見せてあげたいと思った。

宮本くんと梅本くんは男子マネジャーコンビ。リーダーシップあふれる梅本くんがチーフ、宮本くんがサブを務めチームを支えていました。ところが、思わぬことが起きてしまいます。
《日本一のマネジャーに2人で努力したかったのにお前のそばに居てやれないことは、何より申し訳ないです。(中略)でもお前のそばに俺はおる! いつでも本当いつでも気持ちはそこにおる。(中略)チーフはお前がやってくれ!(中略)お前はチーフでベンチも入って、チームを引っぱる!(中略)最高のマネジャー相棒 梅本より》
2枚の紙にびっしりと文字が埋められていた。
宮本くんはクリスマスにも見舞いに行きチームの様子を話したそうですが、その数日後に梅本くんは意識を失います。
「今日、梅本が亡くなった」。林幸義監督(67)から伝えられた。
つらい思いを引きずるわけにはいかなかった。梅本が行きたがっていた甲子園に行くには、2人で目指したチーム作りを自分がやるしかない。宮本は選手たちに言った。「今のままじゃ甲子園に行けない。もっとまとまりをもって、声も出して、細かいところからやっていこうよ」。初めてチームに活を入れた。
宮本は梅本から手紙と一緒に「お守り」と書かれた紙をもらっていた。「笑顔」「俺を頼れ」など気持ちを鼓舞する言葉が箇条書きで並んでいた。
夏の大会は記録員としてベンチに入る。「梅本ならどうするだろう」。そう考えながら、選手に声掛けしようと思っている。お守りは学生服の尻のポケットに入れておくつもりだ。苦しくなったらお守りに触って力をもらおう。

地方大会から甲子園へ。選手もマネジャーも順次、区切りをつけてはそれぞれの新しい目標に動き始めていくのでしょう。健闘、祈ります。