お金と仕事
何でもありDMMがニュース参入? 艦これ、3Dプリンターに続き
動画配信からFX、ゲーム、英会話、太陽光発電、3Dプリンターなど脈絡なく拡大を続ける話題の企業DMM。なかなか表舞台に姿を表さず、幻の生物ツチノコとも称されるなんでもあり企業を取材。メディアへの進出も口にしました。
お金と仕事
動画配信からFX、ゲーム、英会話、太陽光発電、3Dプリンターなど脈絡なく拡大を続ける話題の企業DMM。なかなか表舞台に姿を表さず、幻の生物ツチノコとも称されるなんでもあり企業を取材。メディアへの進出も口にしました。
人気ゲーム「艦隊これくしょん」、AKB48の動画配信、注目を集める3Dプリンター――。ネットからリアルまで次々と新しいビジネスに乗り出すDMM。テレビや街頭のCMでも知名度を高めている。
AKB48をはじめとするアイドルのライブやアダルトなどの動画配信、大ヒットゲーム「艦隊これくしょん」などユーザー数900万・月間16億PVで、相当なトラフィックを処理している。なのに様々な企業のエンジニアが集まる会合や勉強会でもDMMの技術者は姿を見せない。一部では「ツチノコ」という呼び名までついていた。
ツチノコとは。DMMの次の狙いは。恵比寿のオフィスを訪問した。
まずはツチノコに、その技術力の秘密を聞きたい。
DMM.com松栄立也社長に「メディアに出るのは初めてで、恐らく最後」と紹介してもらったのが、インフラ部門のエグゼクティブディレクター新井章さん。「ツチノコ」と騒がれて以来、ブログを開設してDMMのインフラ技術を紹介している。
――なんで表舞台にでてこないんですか?
「実は出てるんですけれど、恥ずかしがり屋だから会場の隅でROMってるんです」
新井氏はDMMが設立された1999年当初からのメンバー。パイロットを目指して米国で飛行機操縦の免許を取り、帰国したが就職先が見つからず、実家のある石川県に戻っていてたまたま見つけたのが、DMMの前身、まだ地場の企業だった。
松栄社長の「セスナ飛ばせるって面白い」の一言で採用。IT知識はまったくなかったが、ネットで国内外の事例を調べ、ほぼ独学でDMMのインフラを築き上げていった。
「特殊な技術を使っているわけではないし、自分たちの技術力が格段に高いとは思わない。やるべきことを地道にやってきただけ」と新井氏は言う。
入社した頃は多角経営は始まっておらず、アダルトな動画配信が中心。98年につくった最初のサイトは1.5Mbpsの回線がすぐにパンク、3Mbpsに倍増させた回線も半年もたなかった。それが今は3千台を越えるサーバーを管理し、ピーク時のトラフィックは100Gbpsを越える。
「大きなイベントを集中的に配信する場合と違い、アダルト動画配信のトラフィックは振れ幅が大きくなく、右肩上がりでなだらかに増えていきました。それにつれて技術も一歩一歩磨き上げられていったんです」(新井氏)
その技術は雑誌「WEB+DB PRESS vol.78」で特集されている。
FX取引、オンライン英会話、太陽光発電などなど、関係ない分野でも、ビジネスとして成立しそうなら挑戦する。新規プロジェクトの承認からサービスの公開までは2週間~4カ月。見切りをつけるのも早く、2010年に始めたクーポン事業は8カ月で撤退している。全体の方針を決めるのは、石川県で創業した前身の「北都」時代からDMMグループを率いる亀山敬司会長だ。
デザインを統括する役員の赤坂幸雄氏も創業当時からのメンバー。
「会長はアダルトで基盤つくって、多角経営で拡大するぞと最初から言ってました。ここまでになるとは私も想像していませんでした」
昨年7月に始めた3Dプリンター事業では1年で国内オンラインプリントのシェア1位に。全国から3Dプリントの依頼でアップロードされるデータ件数は当初の月800件が6千件にまで延びている。世界的に有名なロボット企業からの依頼もあったという。今年6月にはPhotoshopとの連携も発表された。
膨大なトラフィックをさばく技術に注目が集まったことや、ゲーム「艦隊これくしょん」のヒットなどで、DMMを志望するエンジニアは飛躍的に増えているという。2年半前にDMMに加わった城倉和孝CTOは「オープンな社風で、年齢や社歴に関係なく意見が言えるとこも魅力だろう」と話す。
亀山会長に誘われてDMM創業に加わった松栄氏は「最初は人がいないからホームページビルダーを使って自分でサイトを作った。なんでも自分でサッサとやれ、というのが社風。規模が大きくなって縦割りな部分がでてきつつあるが、それを壊してスピードで勝負したい」と話す。
――今後の目標は?
「ニュースも含めてメディアをやりたい。社内でいろいろと検討中で、どういうものになるかはわからない」
すでに既存メディアの関係者と接触し、情報収集と人材獲得に動き始めているという。取材中の記者(古田)もニュース業界について逆取材を受け、「一緒にどう?」と声をかけられた。
方向性が定まれば動きは早いDMM。新しいネットメディアやキュレーションサービスが次々と生まれる中、何でもあり企業が次の台風の目になるかもしれない。