お金と仕事
すき家はブラック企業?に社長が回答 調査が明かす過酷労働と不衛生
「すき家」を経営するゼンショーホールディングスについての調査報告書が31日、公開されました。弁護士らが指摘した数々の過重労働や法令違反、衛生問題をまとめました。


全国で約2千店の「すき家」を経営するゼンショーホールディングスについての調査報告書が31日公開され、経営陣が記者会見を開きました。
調査した弁護士らは、すき家の店舗で起きていた数々の「過重労働」や「法令違反」を指摘。「現場に“無理”をさせない限り、運営ができないことは明らかだ」と厳しく断じました。
全49ページの調査報告書には、「店が忙しくて家に2週間帰れない」「10時間以上休憩をとれず、トイレもいけない」「不衛生」といった労働現場の信じがたい実態が・・・。
要点をまとめました。


まず、調査報告書ではいきなり、弁護士らに「ダメだし」されます。
調査ではすき家に関わる社員やアルバイトにアンケートをしているのですが、社員の回答率が低すぎ。社員が協力的じゃないのか、管理職がきちんと指示していないのか分かりませんが、バイトより低い回答率って・・・。
しかも、会社側にアンケートが“検閲”されないよう、記入したアンケートは直接、第三者委に返送するよう指示していたのに、200人くらいは会社が回収してしまいました。

ZHD社はゼンショーホールディングスのこと。上場企業が社員の住所を把握しきれず、店長も形式だけとは・・・。
すき家の店舗数は2011年4月に1572店だったのが、2014年5月に1986店に急増。しかし、社員数は575人から561人に減っています。
こうした状況を、第三者委は「慢性的かつ深刻な労働力不足に陥っていたと認められる」と指摘しました。
ちなみに、2011年に入社した新卒社員は3年以内に58.8%が退職。社員が定着しにくい厳しい現場がうかがえます。

過酷な深夜の「ワンオペ」
第三者委は、「ワンオペ」と呼ばれるアルバイト1人の深夜勤務についても批判しました。
ワンオペは、接客、調理から清掃、ドライブスルー、在庫や金銭管理、翌日の仕込みまで、すべて1人でこなす激務です。

すき家が店舗の大量閉鎖に追い込まれた理由
今回の調査のきっかけとなったのが、店舗の大量閉鎖。なぜ人手不足に陥ったのか、「謎」が分析されています。


異常な残業、取れない休憩
「クルー」とは店舗で働くアルバイトのこと。月に100時間以上の残業や、サービス残業といった厳しい実態も浮き彫りになりました。

指摘された数々の法令違反 「2 週間家に帰れない」
深刻なのは「法令違反」の疑いです。24時間の連続勤務、高校生の深夜労働、賃金の不払い隠し、外国人就労の規定違反・・・。
調査で様々な問題が露呈しました。
このような過重労働は、多数の社員を過労で倒れさせ、又は鬱病に追い込むなど、社員の生命・身体・精神の健康に深刻な影響を及ぼしていた。
また、高校生クルーの親から、クルー相談窓口に対し、午後 10 時以降勤務させていることについて、多数の苦情が寄せられている。
Z 社からの高校生クルーの午後 9 時 30分以降の勤務禁止の指示は、現場では高校生クルーに対する当該時間以降の労働についての賃金不払いに繋がった例もみられる。
例えば、高校生クルーの親からの苦情の中に、午後 9 時 30 分又は午後 10 時以降も勤務させられたにもかかわらず、上司から、労働時間として申請しないように指示されたというものがある。
すき家には、上記ルールを遵守させていると述べる者がいる一方で、そもそも上記ルールを認識していない者もいた

従業員たちの声
こうした過酷な実態に、ボロボロになった従業員たちも。聞き取り調査に、次々と「告白」を寄せています。
「意欲も低下、慢性的人員不足でおかしくなりそうです・・・会社を守っているので私たちのことも守ってください」
「正直言わせていただくと、労働環境かなり悪すぎです。社員全員が平等に週休 2 日確保及び 1 回転[注:店舗において、24 時間連続で勤務すること]以上ないような労働環境にしてほしいと強く思います」
「ハードワーク、睡眠不足・ストレスで倒れた。車で事故が 2 回、体力の限界。」
「年末親に会い、20kg 痩せ見てられない、辞めてくれと頼まれた。」
「シフト時間、シフト調整により寝る暇がない。休みがない、3 ヶ月に 1 回あれば良い方。30 日間オフなし。ピークの時間ワンオペ、土日の昼ワンオペ。」
「誰も相談に乗ってくれず、つらかった。誰かに話しを聞いて欲しかった。」

「負のスパイラル」に陥っていたすき家
こうした実態や従業員たちの声に、経営陣はどう対応してきたのか?
第三者委は、問題に対する感覚が“麻痺”していた、と厳しく指摘しました。

こうしてさらに退職者が増加し、人手不足が加速されるという「負のスパイラル」に陥り、過重労働はさらに深刻化していった。
すき家の経営幹部とゼンショーHDの小川社長への聞き取り調査
第三者委は経営陣にも聞き取り調査をしています。
そこでは、従業員の労働環境について、取締役会がまったく機能していなかった事実が明かされます。
A「気づかないことであった。悪意はないが、意識がない」
Q「法令違反の指摘は重要だと思うが、ZHD 社取締役会に報告しないのはなぜか?」
A「感性が鈍いということ」
Q「ZHD 社取締役会で過労死リスクについて議論したことは?」
A「ない」
Q「この 3 月に起きたことを議論したことは?」
A「報告していない」
Q「とすると、ZHD 社取締役会では何をしているのか?」
A「月次の報告や人事の異動、M&A した子会社のことなど」

現経営陣が掲げてきた「ビジネスモデル」は限界に達している--。第三者委は強く批判しました。
次々と買収を繰り返し、「日本一の外食チェーン」と呼ばれるようになったゼンショーホールディングス。
第三者委は最後に、こう言い添えました。
小川社長、ブラック企業批判に答える
記者会見後、小川社長は記者らの囲み取材にこう答えました。
(報告書ご覧になって、ブラック企業と言われても仕方がない面もあったという思いはありますか?)
やはり僕らとしては、ブラックとかホワイトとか中身、定義がみんな違うわけですから、それでレッテルを貼られることは非常に不本意ですし、真面目にやってきているんですよね、みんなね。
社員からも、なのに、ブラックとかレッテルを貼られて非常に悔しいという思いが強いんですよね。
ですから、今回、第三者委にお願いしたのも、確かに色々問題あるかもしれない、そういったものを洗いざらい公表して、我々も最大限、それを受け止めて、改善すべきは改善しますと、記者会見をお願いしたのはそういう決意ですから。
経営としても、働いている社員の気持ちも考えて、いつまでもそんなレッテル貼りされたくないし、そういう思いですよね。
だから是非、レッテル貼りということを、辞めていただきたいというか、そういう思いが強いですよね。
だってそんな企業じゃないですよ。よく理解してください、というのが僕らが言っても、「お前らが言ってるだけだろ」となりますから・・・。
第三者の専門家、その中でもとりわけ厳しいといわれている久保利先生にあえてお任せしますから全部見て下さい、というお願いをしたという気持ちですよね。
その精神、ご理解賜りたい。その上で言われるのであればしょうがないですよ。