お金と仕事
すき家、「ワンオペ」廃止約束も「いつになるかは未定」
牛丼チェーン「すき家」(ゼンショー運営)で退職者が相次ぎ、多くの店が休業に追い込まれた問題。第三者委員会の報告書を受けて、同社社長らが釈明に追われました。
お金と仕事
牛丼チェーン「すき家」(ゼンショー運営)で退職者が相次ぎ、多くの店が休業に追い込まれた問題。第三者委員会の報告書を受けて、同社社長らが釈明に追われました。
ゼンショーHDの小川社長、ゼンショーの興津社長はこの日の記者会見で、問題がここまで深刻化した理由と、改善の具体案について、説明に追われた。
会見での主なやり取りは、以下の通り。
――調査報告書の一番最後に「小川CEOの下に、強い意志を持った部下が集結し、昼夜を厭わず、生活のすべてを捧げて働き…」というすき家のビジネスモデルが限界に達したという指摘があるが、どう考えるか?
小川社長「朝から晩までというような、これはわかるんですが、実際32年、私がそれだったら3年ぐらいで死んでいます。確かに、私は初め、労働時間が長く、創業の頃は隣のそば屋から"セブンイレブン"と言われていました。創業メンバーは朝7時から23時過ぎまで働いていましたから。店数を増やす中で、大卒の新入社員も取り、そんなことを強要できるわけもないし、企業規模の拡大と共に休日を増やし、労働時間を減らしてきました。そういう企業の発展に応じてやってきたんですね。ただ、成功体験を持った幹部の意識を簡単に変えられなかった」
――調査報告書は、会社の文化自体を変えなければいけないと指摘しているが、その意味で経営の第一線から身を引く可能性は?
小川社長「『お前、辞めないのか』というお話しですが、分社化を決め、ガバナンスの強化もどんどん進めているわけです。ゼンショーホールディングス(HD)の代表取締役として、まずすき家の改善をHDで全面的にサポート、チェックしていくことが私の第一の責任であると考えています。またHDの代表の責任として、すき家で問題が起き、解決を急いでいるわけですが、他のグループ店舗は問題ないかという視点で調査を進めています」
――以前強盗が起きた時もワンオペ(アルバイト1人の深夜勤務)を解消すると言ったが、今回意気込みは違うのか?
興津社長「二人態勢を目指していますが、今の進捗率は50%ぐらい。1日も早く、これを100%にしたいと思っています。強盗という話がありましたけど、数は大きく減っております。これは、従業員が防犯ブザーをぶらさげるなど色々な努力の積み重ねがありまして、成果も出ています。今年の4月から7月の4カ月で1件でした。去年の同時期は6件、その前の年も6件、その前の年は多くて14件。早く、これをゼロにしたいと思っています」
――調査報告書の中身は、すべて認めたのか
興津社長「社内で少し時間をかけて精査しないといけないこともあると申し上げました。今日の11時に受け取りましたので、もう少し時間をいただきたい」
――残業時間45時間以内を目指すというが、行政指針なので当たり前では?
興津社長「6月30日に労基署に行って、署長さんから『社長さん、45時間の意味わかりますか』と聞かれました。『教えてください』と言いますと、署長さんからは『週休2日取ると、1日2時間。人間というのは睡眠、食事、通勤などあって、自由になる時間というのは1日2時間しかない。それを超えて仕事をすると、睡眠を削り、慢性化するとうつになったり、過労死につながるので45時間なんです』と教えてもらいました。それを受けて、少なくとも45時間以内にしないといけないと考えています」
――残業時間の45時間以内、いまだ進捗率50%のワンオペは、いつまでに解消しますか?
興津社長「"45時間"を達成する時期は、すき家全体ではまだ設定していないんです。『(分社化された会社の)CEOが各担当のマネジャーと話して下さい。その趣旨を良く理解してもらって、ブロック単位で、目標を掲げて、自分たちで考えてやってください』という話をしています。店を365日24時間開けながら、45時間以内に抑えるということは目標ですが、達成については各ブロック、各県によって違うのかもしれません。深夜の二人態勢についても1日も早く適正配置できるようにこれからも努力します」
――ワンオペを二人態勢にすると人件費が膨らむと思うが、他社と比べて安い牛丼の価格引き上げの可能性は?
興津社長「確かに一時的には、100%2人態勢にすると、人件費はかさみます。ただ、おいしい牛丼を提供することをし続けることで、必ず売り上げは上がってくる、お客様に支持されると思います。私たちはコストのために勤務態勢を抑えているわけではなく、やりたいんです。深夜に来店されるお客様に美味しい牛丼を食べていただきたいと思っています」
小川社長「昨今の情勢で言いますと、すき家では深夜が(売り上げが)一番伸びているんですね。都市部で色々な働き方が増え、ニーズは高まっている。こうした利便性のためにも、やはり2千店のすき家は大きく貢献していると思うので、その辺の役割を理解してほしい。従来からワンオペと言われているが、基本的な考えは時間帯の客数に応じた適正な労働投入なんですね。それをやってきましたが、2人勤務に増やせば、満足度は上がる、客数も増える、そういうポジティブなバランスにしたい。そうなると、お客様も会社も従業員もみんなハッピーじゃないかと」