話題
1年前に死んだ、あの犬のこと 山口・連続放火殺人事件
山口県の山あいで2013年7月に5人が亡くなった連続放火殺人事件。謎の貼り紙や愛犬オリーブの突然死などが話題になりました。あれから1年。当時を振り返ります。
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山口県の山あいで2013年7月に5人が亡くなった連続放火殺人事件。謎の貼り紙や愛犬オリーブの突然死などが話題になりました。あれから1年。当時を振り返ります。
山口県の山あいで2013年7月に5人が亡くなった連続放火殺人事件。謎の貼り紙や愛犬オリーブの突然死などが話題になりました。あれから1年。当時を振り返ります。
参院選の投開票日だった2013年7月21日。開票作業が続く夜、火災発生の一報が入りました。
同僚が選挙取材を切り上げ、集落に駆けつけて撮ったのが現場隣家のこの写真。
《つけびして 煙り喜ぶ 田舎者 かつを》
のちに数年前に貼られたものと分かりましたが、尋常ではないムードが漂い始めました。
翌日には火災がなかった家でも2遺体を発見。 集落はマスコミと捜査関係者であふれかえりました。
山に囲まれて携帯電話が通じず、集落内にいる同僚とすら連絡できません。衛星携帯電話が使えるのも、南東の空が開けた集落中心部の限られたスペースだけ。
犯人はいぜん、逃走中。深夜、真っ暗な山道を一人で運転するたび、「バットを持った男が山から出てきて道をふさいだら、怯まず逃げられるか」と何度も自問しました。
保見被告が飼っていたゴールデンレトリバーです。推定7~8歳のオスで名前はオリーブ。被告宅から顔をのぞかせる姿がテレビで流れると、身を案じる声がネットでもリアルでも聞こえ始めました。
5人も命を落とした事件です。緊迫したなか犬の保護問題について記事を書くか迷いました。一方で、世間の関心は高く、警察署や市には「犬を助けて」「うちでひきとりたい」といった電話も相次いでいました。
県警関係者に取材するたび「犬は保護しないのか」と尋ねましたが、所有権の問題があり、どういう理屈でなら第3者の立場でも保護できるか考えているようでした。
そうこうしているうち、旧知の取材先から「犬が保護され金峰から降りてくる」との情報が。7月25日のことです。
オリーブは、まったく吠えず人見知りもしない穏やかな犬でした。「事件との関係を知らない人に新たな飼い主になってもらいたい」という思いで、しっかりとした飼育設備のある団体に預けられるといい、車に乗せられ旅立っていきました。
「オリーブは無事に保護されました」。そんな記事を書こうと思った矢先、「明日が山場になるかもしれない」と連絡が。身柄確保となれば、本社に一報や写真を送らなければいけません。午前3時前に帰宅しシャワーだけ浴び、雨でも車内で衛星携帯電話が使える場所を確保するため暗闇の集落に向かいました。
予想通り、時折激しい雨が降る中、早朝から大規模な山狩りが始まり、男が午前9時5分に無事な姿で確保されました。
ところが、予想外の展開が待っていました。
死因は心臓発作。オリーブの死亡時刻が分単位で分かるのは、直前まで元気だったのに急変して動物病院に運ばれ、獣医師さんが看取ったから。
その後、オリーブとともにポパイという犬も飼われており、地元の病院がご厚意で預かっていることも分かりました。
被告は犬を大切にしていた一方で、集落内外でさまざまなトラブルがあったことも明らかになっています。
オリーブは、被告の複雑な心情の「一端」を物語る存在。裁判がいつ始まるかは未定ですが、法廷では何が語られるのでしょうか。
集落の現在の様子などは以下の記事に詳しく書いています。