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お金と仕事

Taro Kamematsuさんからの取材リクエスト

W杯のパブリックビューイングを実施する場合、ライセンス料を支払わないといけないのはなんで?



【取材しました】非営利パブリックビューイングでライセンス料?

ワールドカップのパブリックビューイングをする場合、ライセンス料を支払う必要があります。でも、非営利の場合も必要なの?そんな疑問に答えて取材しました。

渋谷駅前に集まり、乱舞するサポーター=2013年6月4日、東京都渋谷区
渋谷駅前に集まり、乱舞するサポーター=2013年6月4日、東京都渋谷区 出典: 朝日新聞

目次

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取材リクエスト内容

ワールドカップのパブリックビューイングを実施したい場合、電通の子会社に申請して料金を支払う必要があるのですが、その法的な根拠が不明瞭です。著作権法では、家庭用テレビをみんなで見る場合は著作権者の許可を得なくてもいいとされているのですが、そのような場合でも料金を払わねばならないのかどうかも不明です。ぜひここは取材して、明らかにしていただきたいです。
http://publicviewing.jp/shop/2014worldcup/#ryokin Taro Kamematsu

記者がお答えします!

ユーザーからの取材依頼に応えようと設けた「これフカボリしほしい」機能。弁護士ドットコム・亀松太郎編集長から依頼が来てビックリしました。このテーマを初めて目にするユーザーにもわかりやすいように、基本からおさらいしてみます。(古田大輔)

非営利でも5万円のライセンス料

パブリックビューイングのライセンス料
パブリックビューイングのライセンス料 出典:パブリックビューイング.jp

ワールドカップ・パブリックビューイング事務局によると、パブリックビューイングを開く場合には商業イベントは20万~365万円、非商業イベントでも5万円を支払う必要が有ります。

ライセンス料は、ワールドカップを主催するFIFAの収入源です。ワールドカップや五輪など、大きなスポーツイベントの放映は巨額のお金が動く権利ビジネスです。誰もが自由にその映像を流し、集客してしまえば、ビジネスは成り立ちません。日本であれば、電通とFIFAがパブリックビューイングに関する契約を結んでおり、ワールドカップ・パブリックビューイング事務局が国内の申請窓口となっています。

でも、非営利だったらいいのでは?仲間内でテレビで見るのもパブリックビューイング?

FIFAのルールを読んでみた

パブリックビュイングに関するFIFAの規制
パブリックビュイングに関するFIFAの規制

まずはFIFAのルールから。文書はネットに公開されています=写真。

パブリックビューイングに関しては以下のように説明されています。「個人の住居以外の場所で聴衆にワールドカップの試合を視聴可能にするイベント」。

開催場所にはこんな例が挙げられています。「バー、レストラン、スタジアム、オープンスペース、オフィス、工事現場、石油掘削プラットフォーム、水上輸送船、バス、電車、軍事施設、教育施設、病院」。

非商業パブリックビューイングは「実施者が商業的利益を得ないイベント」と定義され、参加者5千人を超えなければ「ライセンスはいらない」と明記されています。

あれ?だったら、非商業イベントではライセンス料はいらないのでは?

事務局に聞いてみた 「法的根拠あります」

パブリックビューイング.jp
パブリックビューイング.jp

パブリックビューイング事務局に連絡し、担当者や広報の方を訪問。その後、電話やメールでも聞いてみました。以下に主なやりとりをまとめます。

古田「非商業イベントにもお金を払う必要があるのでしょうか」

担当「ライセンス料や商業、非商業などの分類はFIFAとの契約に基づいて決まっています」

古田「非商業イベントで5万円とありますが、家庭用テレビをみんなで見るような場合も含まれるのでしょうか」

担当「「小さなテレビで見るような場合は常識的に考えて、パブリックビューイングとは想定していません」

古田「例えば、フェイスブックで呼びかけて友人・知人と大勢で大型テレビで観戦する場合はどうでしょう」

担当「何インチ以上のテレビだったらお金が必要といった決まりはありません。人数や場所、イベントの内容によって、いろんなケースが考えられるので、すぐにはお答えできません。事務局に質問があった場合は、まずはイベントの概要がわかるように説明をお願いしています」

古田「非商業イベントであれば、申請もライセンス料もいらないのではないかという指摘もあります。ライセンス料にはどのような法的根拠があるのでしょう」

担当「法的根拠はあります。FIFAとの契約の際に法務のチェックは当然しており、法に反するようなことはありません」

古田「具体的にはどのような根拠に基づくのでしょうか」

担当「契約内容や、様々な法律の解釈にも関わるので、詳細は申し上げられません」

古田「どの法律の条文によっているのかだけでも」

担当「専門的な内容ですし、契約に関わるので回答は差し控えさせていただきます」

古田「FIFAのルールを読むと、非商業イベントはライセンスがいらないと書いてあります」

担当「契約は各国によって異なります。日本においてはこのような契約になっています」

具体的内容はわからず 「トラブルなし」

日本各地であったパブリックビューイング
日本各地であったパブリックビューイング 出典: 朝日新聞

弁護士ドットコムでパブリックビューイングに関して解説をしている高木啓成弁護士に改めて聞いてみました。


古田「非商業イベントでもライセンス料は必要なのでしょうか」

高木「著作権38条で、非営利の場合は公表された著作物は上映できるとあります。一方、100条でテレビ映像を拡大する装置を用いて放送する伝達権について定めています。こちらの方が関係しているのかもしれません」

古田「FIFAのルールでは、非商業イベントはライセンスが不要と書いています」

高木「FIFAと電通の契約の詳細がわからないとちょっと判断できません」

テレビ映像の伝達権が絡んでいるのか。事務局側にもう一度質問してみましたが、「契約の詳細に関わる」とのことで、回答はいただけませんでした。

今回のワールドカップでは、日本代表柿谷曜一朗選手の出身地・大阪市都島区が非営利のパブリックビューイングを企画。「委託先の手続きのミス」(市総務課)でライセンス料5万円の支払いをしておらず、外部からの指摘で支払うという事例がありました。しかし、都島区は指摘を受けてすぐに支払っており、パブリックビューイング事務局によると、支払いを拒否してトラブルになった事例は「把握していない」と言います。

何がライセンスの必要な非商業イベントで、何がライセンスの必要ない観戦なのか。今後、いままで以上に超大型テレビが安価に手に入るようになれば、判断が難しくなる事例は出てくるでしょう。そのときには、より詳細な説明を求める人が増えてくるのでは、と感じました。

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