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王者ワコール、ついに本気で世界進出
王者ワコール、ついに本気で世界進出
国内首位の下着メーカー、ワコールがついに本気を出した。フランスのパリで3日、ワコールにとっては欧州で初めての大規模な新作ショーを開催。会場にはシャネルなど高級ブランドが使う伝統の「グラン・パレ」を選んだ。
女性のブラジャー所有枚数はフランスで9.8枚、ドイツ10枚。日本の8.6枚を上回る。つまり、市場はある。
しかし、百貨店など大型店で売るスタイルの日本と違って、欧州は小さなブティックで売るのが主流。ワコールは1990年にフランスに現地法人を作ったが、欧州女性は新興ブランドに手を伸ばしてくれず、長く赤字が続いた。
現在、大手百貨店プランタンのパリ本店にある売り場も、欧州のライバルより小ぶりだ。ランジェリー部門バイヤーのアリス・バルディ氏は、寄せて上げるといった胸の形を整える技術で「ワコールはライバルの3年先を行っている」と評価しつつ、弱点も指摘する。「身につけたら良さがわかる。でも、ブランドが知られていない」
この状況を変えるためにワコールは2012年、英国の下着メーカー、イヴィデンを約200億円で買収した。同社が培った販路を生かしつつ、欧州で本腰を入れるための体制づくりを進めてきた。
パリでのショーは、その完了を意味する。
買収した会社「イヴィデン」は来年から「ワコール・ヨーロッパ」に社名を変える。ブラジャーなら5千~1万円の中高級品を中心にしていく方針だ。
ワコールの日本での市場シェアは30%ほどで、2位のトリンプはその半分。ワコールは現在、圧倒的な「王者」だが、欧州ではトリンプなど地元勢に及ばない。
ワコールホールディングスの井出雄三常務は「ここで認められれば、世界に通用する」と話す。