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「PTA強制加入巡り提訴」 問題はどこに
PTAへの強制加入は不当だとして、熊本市内の父親が訴訟を起こしました。子どもたちを支えるための任意団体ですが、その運営を巡っては議論もあり、各地であり方を模索しているのが現状です。

PTAへの強制加入は不当だとして、熊本市内の父親が訴訟を起こしました。子どもたちを支えるための任意団体ですが、その運営を巡っては議論もあり、各地であり方を模索しているのが現状です。過去に組まれた朝日新聞の特集記事などからポイントをまとめてみました。
退会届け「受理されず」
訴状によると、2009年に2人の子どもが同市内の公立小学校に転校した際、PTAに同意書や契約書なしに強制加入させられ、会費を約1年半徴収されたと主張。(中略)12年に退会届を出したが、「会則の配布をもって入会の了承としている」などとして受理されなかった。
フカボリのリクエストが来ていた案件ですが、着手前に会見という形で動きが出てしまいました。
訴訟についての詳細はこちらで。
2013年4月の記事で、首都大学東京准教授の木村草太氏(憲法学)が次のような指摘をしています。
強制・自動加入体制を敷いたり、参加しない保護者に圧力をかけたりするのはやめた方がいい。会員への労役強要や非会員への心理的圧力が過大になってイジメのような事態に発展すれば、不法行為として役員やPTAが損害賠償を請求される危険すらある。
有意義な活動もたくさん
PTAは、親と教師が連携を深めることで子どもたちの育成をサポートする組織。通学路の安全を守ったり、イベントを行ったりと、有意義な活動がたくさん行われています。
京都府亀岡市で2012年に集団登校中の小学生らが車にはねられ、女児2人と付き添いの保護者の計3人が死亡、児童7人が重軽傷を負った事故では、近くの小学校とPTAが自主的に看板を設置しました。

父親たちによる「おやじの会」も全国各地で子どもたちのために活発に活動しています。
こちらは筆者が山口県下松市で2012年に取材した事例。子どもたちの防災意識を高める狙いです。

AED(自動体外式除細動器)の使い方を実際の機器で学んだり、毛布と竹の棒で担架を作る練習をしたり。
蒸し暑い体育館の中、お父さんたちは大変そうでしたが、それでも子どもたちと一緒に生き生きとした表情を見せていました。
高齢者が増えゆく地域を子どもたちも加えて守る取り組み。頭が下がります。
PTA会費でエアコン?
一方で、PTAによっては委員会や行事が多すぎたり、特定の人に役員を押しつけがちだったり。
加えてPTA会費を学校の経費に充てる例も問題になっています。
調査対象は、全都道府県・政令指定市の計67教委(3630校)。2007~11年度の5年間で、学校の管理運営にかかる経費を保護者らが負担した例があるかどうかを尋ねた。41教委が「ある」と回答。高校数は全体の27%の993校にのぼった。
神奈川の記事は一例。ほかの地域でも過去の記事を調べると、グラウンドの砂を補充したり、パソコン関係の消耗品を買ったりしています。
教室へのエアコン設置・維持費に充てた例もありました。
流用やむなしの時代背景もあったようですが、近年の流用の一因には国の予算削減もあるようです。
各地で運営改善の動き
入退会の自由を周知する動きが各地で起こっています。
PTA会長(45)は「保護者が学校に協力する必要はある。ただ共働き世帯が増えるなか役員を嫌々引き受けたり、活動しない人を陰で非難したりといった状況を変えたかった。役員を2年経験し、運営はより効率化できるとも感じていた」
運営のスリム化と透明化がひとつのカギになりそうです。
この学校は2012年3月25日付の朝日新聞にも追跡記事が載っています。
任意加入だと周知した後、会費を2回に分けて集めたところ、前期は94%、後期は87%の家庭が納めたといいます。
非加入家庭の子への対応が課題の模様。
(中略)例えばバザーの屋台で使う食券なら、会員には枚数制限をつけずに前売りし、食材の仕入れ量の目安にする。一方、非会員には枚数限定で当日券のみ販売する、といった意見が出ているという。
PTAは「親」と「教師」による団体。影響が子どもたちに出ないよう、どう配慮するかも工夫のしどころです。
改革 サイトで公開のPTAも
札幌市立札苗小学校でのPTAは「議論の材料になるように」と専用ホームページを開設。
PTA改革関連の情報を開示しています。
開くと「原点から考え直すPTA」という文字が、まっさきに目に飛び込んできます。
都市部なのか、過疎地なのかなど、PTA問題も学校それぞれによって事情が異なるはず。
自分たちの学校にはどういう運営が合うのか、まずは情報を集めてみてはいかがでしょうか。