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「理系は就職も結婚もできない?」女子生徒の疑問 化粧品会社の支援

「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」

2023年に開かれた「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式のパネルディスカッション
2023年に開かれた「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式のパネルディスカッション 出典: 日本ロレアル提供

目次

「女子が理系に進むと、職業選択の幅が狭まるのでしょうか?」。若手女性科学者を対象とした授賞式のパネルディスカッションで、招待された女子生徒が登壇者たちに尋ねました。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、女性研究者の割合が最低レベルの日本。理工系学部に進学する女性の割合も低いことが分かっています。授賞式を主催した化粧品会社は、「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」と訴えます。

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「職業選択の幅が狭まる?」

若手の女性科学者を支援するために2005年に創設された「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」。2022年からは、「科学について考えるきっかけになれば」と授賞式に文理選択前の生徒や理系を選択する女子生徒らを招いて、受賞者や識者らとパネルディスカッションを開いています。

「女子が理系に進むと職業選択の幅が狭まるのでしょうか?」

主催する化粧品会社の日本ロレアル(東京都新宿区)の堀田満代さんによると、2023年のパネルディスカッションで女子生徒からそんな質問が投げかけられたといいます。

しかし、女性研究者たちはそのイメージを否定していたそうです。

パネルディスカッションに登壇した自然科学研究機構長の川合眞紀さんは、「調査研究でダイバーシティーはとても大切。好きなことを突き詰めた結果が研究者という選択だったら、とことん好きなことをやってください」という趣旨のエールを送っていたといいます。

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式でのパネルディスカッション
「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式でのパネルディスカッション 出典: 日本ロレアル提供

背景にある〝親の思い込み〟

堀田さんは、女性の理系進出について女性研究者と意見交換をする際、「ロールモデルの欠如」や「アンコンシャスバイアス」が話題に上がるといいます。「気づかないうちに、ジェンダーの役割を生徒自身や家族、学校現場などで決めつけてしまっている。その結果、女性の選択が狭まっていることがあります」

女子生徒が持つ理系イメージの背景には、親や教師の〝思い込み〟もあると堀田さんは指摘します。

「『理系に進学すると進路の選択の幅が狭まり、結婚したくても結婚できない』と思い込んでいる親御さんもいるようです」

理系に進む女性が少なかった親世代には、その後の進路がイメージしづらいのではと推察します。

しかし、就職情報会社マイナビの「2025年卒大学生活動実態調査」によると、6月15日時点の内々定率は文系女子が77.3%、文系男子が76.3%に対し、理系女子は87.0%、理系男子は87.4%でした。

内閣府の調査によると、働く上でのイメージや進路選択において影響を受けた人は、女性は母親が多く、男性は父親が多いという結果になりました。

また、女性保護者の最終学歴が理系だと、自身の認識するタイプを「理系」、将来の進路を「理系」とする娘の割合は高くなります。

女性保護者が文系で娘が理系を目指す場合、「多様な選択肢に触れる機会を持ち、考えることが重要」と堀田さんは話します。

ロレアル財団が女性科学者支援のために掲げているスローガンは「世界は科学を必要とし、科学は女性を必要としている」。多様な考え方やバックグラウンドを持った研究者によって課題解決策を見つけていくことが科学のあり方だと考え、引き続き女子生徒の理系選択や女性科学者を応援していくそうです。

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式のパネルディスカッションを聞き、メモをとる生徒
「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式のパネルディスカッションを聞き、メモをとる生徒 出典: 日本ロレアル提供

「研究分野に興味を持つようになった」

日本ロレアル主催の授賞式やパネルディスカッションに参加した生徒は、どのように感じているのでしょうか。

2022年にオンラインで参加した、山形県立米沢興譲館(こうじょうかん)高校3年の和久井響さんは、「女性のロールモデルを知ったことで、研究分野に興味を持つようになった」と話します。

医療や薬学の道に進みたいと、同校の理系学科「理数探究科」に進学。研究者の道があることは認識していたものの、自分事として捉えていなかったといいます。

「自分の中に女性研究者のロールモデルがいませんでした。有名な研究者でパッと思い浮かぶのは全員男性。将来の仕事を考えたときに、漠然と『研究者は男性が就くもの』と思っていました」

パネルディスカッションに参加して印象的だったのは、「研究者として活動するなかで、『女性』だから大変なことはありますか?」という質問に対して、受賞者が「女性だから大変だということはない。応援してもらっていると感じるし、研究では男女関係ない」と答えていたことだといいます。

「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式でのパネルディスカッション
「ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」授賞式でのパネルディスカッション 出典: 日本ロレアル提供

「世界で活躍する女性研究者がいるんだ」と刺激を受けた和久井さん。「医学部や薬学部に進学し、病気のプロセスや治療法などの研究に携わりたいと思うようになりました」

臨床と研究の双方に力を入れる大学に進学したいと考えているそうです。

和久井さんの通う米沢興譲館高校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校として理数教育に力を入れています。

これまでも女性研究者のロールモデルを示すため、座談会や講演会を開いており、2022年のこの授賞式には、1、2年生の生徒167人がオンライン参加しました。

同校でSSH事務局長を務める髙橋渉教諭は、「科学者として活躍する女性を生徒に知ってもらう貴重な機会でした。ジェンダー意識が芽生えてきており、理工系の進学者の増加にもつながります」と話しています。

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