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雨降って、固まったのは? 飴屋さんの「巨大な塊」のその後
湿気で一塊になりました――。梅雨の湿気にやられ、売り物の飴が巨大な塊になってしまったという浅草の飴屋さんのX投稿が話題になりました。約6万円分の被害があったそうですが、お店を訪ねると、写真を投稿した店主はあまり落ち込んではいない、むしろちょっと嬉しそうなご様子。話題になった塊のその後や、飴屋さんの日常を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
話題になっていたのは、東京都台東区にある「浅草飴屋」の6月26日のX投稿です。
朝7時からクーラー付けて湿度下げたんですが、敵わなかった。湿気で一塊になりました。しばらくお店に飾っておきます。 pic.twitter.com/IDJm85Es7j
— 浅草 飴屋 (@asakusaameya) June 26, 2024
紅白模様の飴が巨大な塊になってしまったインパクト抜群の写真は多くのユーザーの目を引き、229万回以上表示されました。
「湿気怖すぎる」「恐るべき梅雨」といった反応や、「もう売れなくなっちゃうんですか」とお店を心配する声がありました。
また、「これは何ですか」という外国人とみられるユーザーからの質問に「It's candy.」と答える観光地ならではのやりとりもありました。
話題になったあの飴の塊は今どうなっているのでしょうか。
浅草のお店を訪ねると、店外からも見えるよう、ガラス窓の向こうにあの塊が鎮座していました。
店主の大貫大さん(52)は「こういう失敗をお見せする機会は少ないと思うので、しばらくはオブジェとして飾っておくつもりです」と話します。
固まってしまった飴はリンゴ味で、重量は全部で約6キロ。販売価格で約6万円分だそうです。
飴づくりに携わって17年ほどになるという大貫さん。
飴が湿気で固まってしまう現象を業界では「飴が泣く」「ベタが来る」などと表現することもあるそうです。
「湿気は飴の天敵ではあるのですが、ここまで大きな塊になってしまったのは初めてです」
決して安くはない被害額ですが、大貫さんの表情は明るく、ちょっと嬉しそうにも見えました。
実は、X投稿が話題になった後、複数のテレビ局から取材があったそうです。
スタジオでの撮影のため、飴の塊を貸して欲しいという依頼にも快く応じたという大貫さん。
「Xの投稿やテレビ番組を見た方が、塊を見ようと店を訪れてくれるようになりました。ここまで大きな反響があるとは思っていなかったので、驚いています」
商品の飴は乾燥剤と一緒にパッキングされており、店内は常にエアコンの除湿を効かせているそうです。
売り物の飴が湿気にやられることがないよう管理は徹底しているとのことですが、唯一、完全に湿気を防ぐのが難しいタイミングがあると言います。
「飴をパッキングする前、店内で作っている最中に雨が降るなどして湿度が上がると、どうしても飴がベタついてしまいます」
飴作りの様子をお客さんに見てもらおうと、店内の売り場と飴を作る場所が隣接する構造になっているため、外からの湿気を完全には防ぎきれないそうです。
そのため、飴を作るタイミングは「天気予報とにらめっこして決めている」とのこと。
リンゴ飴が塊になってしまったあの日も、予報は午後から雨。
「本来なら作るのを控える日ですが、リンゴ味が無くなりそうだったため、『午前中に作り終えれば大丈夫だろう』と決行したんです」
ところが、予報よりも天候が崩れるのが早まり、「ベタが来て」しまったそうです。
「設備の整った工場などではこうしたことは起きませんが、店先で手作りしているお店では時々起こりうることだと思います」
店内を見渡すと、飴の種類の多さに驚かされます。その数、50種類以上。
ラムネ味やミント味などの定番に、昔ながらのべっこう飴。
あまおうやパイナップル、夕張メロンなど、果物の飴には本物の果汁や果肉を使うというこだわりもあるそうです。
さらに、「豚骨ラーメン味」や「ビーフカレー味」などの変わり種も。
記者も豚骨ラーメン味を購入して食べてみると、しっかり豚骨とネギの風味がしました。
「『飴とはこういうものだ』というこれまでの概念を打ち破っていきたい」と語る大貫さん。
今回話題になった投稿について「禍転じて、ではありませんが、店を知ってもらうきっかけになったのはありがたいことです」と振り返りました。
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