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#13 「健康にいい」の落とし穴

プロテインどこから〝飲み過ぎ〟? 国内の目安、アスリート向けには

いわば“ブーム”の様相を呈するプロテインだが……。※画像はイメージ
いわば“ブーム”の様相を呈するプロテインだが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

近年、コンビニやスーパーなどで手軽に手に入るようになったプロテイン(たんぱく質)飲料。スープにまで追加された商品も発売されています。でも、そんなにたんぱく質を摂ってもいいのでしょうか。実は、国内にも目安がありました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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当然「多すぎても少なすぎても」NG

生活に浸透しつつある「プロテイン(たんぱく質)」という言葉。たんぱく質は筋肉の合成に必要で、大事な栄養素です。これが補給できるプロテインパウダーの市場は近年、拡大しています。

コンビニやスーパーには「プロテインXXg」などとうたわれた飲料が並び、スープにもプロテインが追加されたものが販売されています。いわば“ブーム”の様相を呈するプロテインですが、こんなに摂ってもいいのでしょうか。

結論から言うと、たんぱく質は摂らなすぎても、摂りすぎても体に良くありません。体にとってちょうどいい量を摂るには、一定の目安があります。

目安を紹介しているのは、厚生労働省の『日本人の食事摂取基準(2020年版)』です。同基準には「たんぱく質摂取量は、低すぎても高すぎても他のエネルギー産生栄養素とともに主な生活習慣病の発症および重症化に関連する」と記載されています。

たんぱく質が不足すると体にさまざまな支障が出ますが、近年、高齢者について特に問題になっているのが、フレイル=加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能など)が低下した状態や、サルコペニア=高齢になるに伴って筋肉の量が減少していく現象です。

逆に、過剰になった場合、もっとも考えられるのは腎機能への影響です。前述の基準は、目安を設定する上で、1日の全体の摂取エネルギーのうちたんぱく質の割合が「35%未満」であれば「腎機能を低下させることはないだろう」と結論づけた研究(※1)を根拠にしています。

また、同様に20%以上(または1.5g/kg体重/日以上または100g/日以上)の高たんぱく質摂取が腎機能に与える影響を通常または低たんぱく質摂取と比較した研究(※2)では「有意な違いは観察されなかった」ことも根拠に。

ただし、現時点ではこれらの根拠が上限量を設定するまで明確ではないという理由で、たんぱく質に関してはあくまでも目安のみが示されています。

※1 Van Elswyk ME, Weatherford CA, McNeill SH. A Systematic Review of Renal Health in Healthy Individuals Associated with Protein Intake above the US Recommended Daily Allowance in Randomized Controlled Trials and Observational Studies. - Adv Nutr 2018 ; 9 : 404 - 18.
※2 Devries MC, Sithamparapillai A, Brimble KS, et al. Changes in kidney function do not differ between healthy adults consuming higher- compared with lower- or normal-protein diets : A systematic review and meta-analysis. -  J Nutr 2018 ; 148: 1760 - 75.

アスリートは必要量が増えるが…

では、たんぱく質の摂取量の目安は、どのくらいなのでしょうか。日本人の食事摂取基準は推奨量と目標量に大きく分かれます。目標量の下限は、推奨量以上になるように設定されています。これは身体活動レベルによって異なります。

推奨量は18歳以上の男性で60~65g/日、女性で50g/日。目標量は、例えば「座位中心の仕事だが、職場内での移動や立位での作業・接客など、あるいは通勤・買物・家事、軽いスポーツ等のいずれかを含む場合(=身体活動レベルⅡ)」の30~40代男性では88~135g/日、同じ条件の女性では67〜103gとなります。
 
出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』 - 厚生労働省
出典:『日本人の食事摂取基準(2020年版)』 - 厚生労働省
プロテイン飲料を飲んだり、プロテインが追加された食品を摂ったりする場合は、これらの目安に収まるようにするのが、一つの基準になるでしょう。

なお、この基準では「特定の疾患の管理を目的としてたんぱく質摂取量の制限や多量摂取が必要な場合は目標量ではなく、そちらを優先すべきである」とされています。

では、さらに体を動かすアスリートなどはどうでしょうか。2016年のカナダ栄養士会・栄養と食事のアカデミー・アメリカスポーツ医学会の共同声明によれば、アスリートのような激しいトレーニングをする人は体重1kgあたり1.2g〜2.0gのたんぱく質が必要とされます。

国際陸上競技連盟のガイドラインでは、激しい持久的トレーニングおよび筋トレをしている選手は1.2〜1.7g/kg体重/日、つまり一般人の1.5〜2倍のたんぱく質摂取が必要だとされています。

とはいえ、これはあくまで特殊なケースです。基本的には食事から摂取するたんぱく質で目標量を賄うことを意識し、難しければ、プロテインパウダーや、飲料、プロテインが追加された食品を摂取する、というのが良さそうです。
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