話題
「誰にお礼言ったらいい?」誰かの仕事へ〝行き場のない感謝〟伝える
「日程調整ツール開発してくれた人。あれがなかった時代がもう思い出せないです」
「これ、誰にお礼を言ったらいいんだろう」。どこかの誰かが考えてくれたサービスやグッズ、仕事に対して、そう感じたことはありませんか? 11月23日の勤労感謝の日に合わせて、「誰かの仕事に対する行き場のない感謝」を集めた展示が開かれました。言われてみれば「確かにお礼を言いたかった!」「これのおかげで助かった」と気づくエピソードがたくさん集まっています。
「日程調整ツール開発してくれた人。あれがなかった時代がもう思い出せないです」
「エレベーターのボタンを2回押したらリセットする仕組みを考えてくれた人」
「スーパーやコンビニに子ども用の小さな買い物カゴを設置してくれた人」
「ETCカードが正しく挿入されているか教えてくれる音声アナウンス」
「ATMでお金を取る前にカードが出てくる仕組みにしてくれた人」
「コンビニで常温のドリンクを売ろうと言ってくれた人」
11月22日に東京都渋谷区のギャラリーで始まった「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」(24日まで)。会場には、50を超える「感謝」が飾られていました。
いずれも、リアルでの聞き取りやSNSを通じて集まった「誰かの仕事に対するお礼エピソード」です。
寄せられた約600点のうち一部が展示されていて、どれも言われてみれば確かにありがたい、「誰」にお礼を言ったらいいのか分からないエピソードでした。
中には、個人的な体験への感謝がつづられたものもありました。
「老いた両親が、買い物したものをそっくり置き忘れてしまいましたが、夕方スーパーに聞きに行ったら全て丁寧に取り置きしてくださっていました。サービスカウンターの方にも、そこに届けてくださった方にも感謝です」
「15年前、長男が着陸時にトイレに間に合わなくて座席におしっこをもらしてしまった時、笑顔で『大丈夫ですよ!』と言ってくださったCAさん。申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、救われました」
「2013年に浅草橋の駅前でおにぎり屋さんをやっていた方。当時小学生の私に、おかずをサービスしてくれてありがとうございました。塾に行く前にいつもあたたかい気持ちになっていました!」
企画は、何年経っても心に残る「お礼」を伝える機会にもなっているようです。
「#これ誰にお礼言ったらいいですか展」を主催するのは、人材派遣などに携わるパーソルホールディングス(東京都港区)です。「はたらくWell-being(満足感)」を高めたいと、2023年の勤労感謝の日に合わせてプロジェクトが始まりました。
担当する中山友希さんは、「働くことをポジティブに感じられる社会になるよう、貢献していきたいという思いがありました」と振り返ります。
社会にあふれる「この仕事いいね」「このサービスに助けられた」という思いを働く人たちへ直接届け、「普段の仕事が誰かの生活を良くすることにつながっている」と感じてもらうことを期待しました。
実際、寄せられたエピソードの中には、パーソルがその仕事の担当者を探し出したものもあります。
展示されている50点以上の「感謝」のうち14点は商品やサービスの開発担当者にたどりつき、開発した担当者の思いも添えました。
例えば、高速道路のサービスエリアなどにある「スマホ置き(小物置き)が鍵になっている扉」。
この「忘れ物防止トレー」を企画したのは、NEXCO東日本の担当者でした。
展示では、「目指したのは、忘れ物ができないトイレ」という企画意図が書かれています。
パーソルホールディングスの中山さんは、「直接その仕事に携わっていなくても、世の中にはこんなにたくさんの『お礼の気持ち』があると目にするだけで、『働くことはこうやってつながっていくんだ』と感じられると思います」と話します。
「『自分の仕事も、もしかしたら誰かの役に立っているかもしれない』と思いをはせていただけるのではないでしょうか」
規模が大きくなくても、派手な仕事でなくても、社会はたくさんの仕事で成り立っているーー。
「小さな工夫であってもそこには担当者の思いがあって、目立たないかもしれないけれど素敵なお仕事はたくさんあります。11月23日の勤労感謝の日は、様々な方にスポットライトが当たる日にしたいと思います」
展示は11月24日までですが、今後もホームページやnoteで発信していくそうです。
1/26枚