連載
#250 #withyou ~きみとともに~
TikTokが若者の〝悩み〟を募る理由 「居場所はほかにもある」
不登校生動画選手権では、TikTokが発信の場に。
10代の半数超が使うSNSのTikTokでは、「悩み相談」を企画してNPOや人気クリエーターと動画を作るなど、若者の抱える「生きづらさ」に対する発信を強化しています。なぜそんな取り組みを始めたのでしょうか? 話を聞きました。
総務省の2020年度の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、TikTokは10代の半数超が利用していると答えています。
そんなTikTokでは、8月31日まで「夏のTikTok #悩み相談」という企画を実施しています。
長期休みの前後は、抱えていた悩みが深くなりがちです。家族や学校、お金の悩みについて、専門的に取り組んでいるNPOと連携し、寄せられた悩みへの回答動画を人気クリエーターが作成して投稿します。
この企画、実は2021年から続けているもので、最初の年は「#悩み相談」で悩みを募ったところ、800件もの相談が寄せられ、今年はすでに1500件超の悩みが寄せられています。
2021年は、寄せられた相談を元に、8月には、67万人のフォロワーがいる悪役俳優ユニット「純悪」(阿部亮平さんと山根和馬さん)が、性の悩みや不登校、親との関係について、それぞれに取り組むNPOに質問をぶつけるライブ配信を実施しました。
@tiktoksafety_jp 部活の人間関係がつらくて学校にいきたくない・・・こんなお悩み、一人で抱え込んでいませんか? TikTok公式企画「 #悩み相談 」(2021年7月~8月)へ特に多く寄せられたこちらのお悩みについて、@純悪👊🏻 が #不登校 の専門家(@全国不登校新聞社 )に聞いてみました。 #tiktok安全推進 #スポンサーコンテンツ ♬ オリジナル楽曲 - TikTok安全推進チーム
2018年からは、青少年の安全安心への取り組みを推進するため、子どもたちに向けた相談事業などを行っているNPOなどが集う「セーフティーパートナーカウンシル」を設置。四半期ごとの集まりが、これまでに16回開催されています。
TikTok Japn公共政策本部の公共政策マネージャー・金子陽子さんは「生きづらさを抱えている子に対して、TikTokは『架け橋』としての役割を担いたい」と話します。
「信頼できる相談窓口や、同じ悩みを抱える子とつながることができ、つながらなかったとしても『知る』ことができます。学校や家が居づらいのであれば、それ以外の居場所があることも知ってもらえます」
今年は、不登校新聞社が開催する「不登校生動画選手権」をサポートします。
これまで「#悩み相談」の企画でも不登校新聞と協力してきた経緯があり、今回の企画では共催というかたちをとります。
金子さんは「『不登校はマイナス』だという考え方自体を社会の側が変えていく必要もあると思います」と話します。
「そうすれば、『学校に行かなければならない』という社会的プレッシャーで本人や保護者がつらい思いをするケースも減るのではないでしょうか」
「様々な理由で学校に行けなかったり行かなかったりする子がいます。そもそも不登校は『悪』とか『かわいそう』ではなく、あくまで選択肢の一つです。個性に合わせて行ける場を選べるように、社会がもっと多様な場を用意できればいいと思っています」と語ります。
今回の動画選手権では、TikTokが発信の場になります。
「不登校は、仮に周囲から『将来は良くなるよ』とポジティブなことを言われても、『いま』のつらさを消すことはなかなかできないこともあると思います」と金子さん。
「でも、別の側面から見れば、その経験があるからこそ、社会のあり方について、他の人にはない自分なりの視点を持ち社会への提案ができることもあると思います」と強調します。
「彼らだから発信できるメッセージが多くの人に届いてほしいし、社会の側も、それを受けて変化してほしい」
一方で、「発信する」という一歩が踏み出せない子もいます。
金子さんは「TikTokのいいところは、リラックスしながら眺めているだけでも色んな動画が流れてくるので、多様な情報に触れる機会があります」と言います。
「動画を発信しなくても、自ら動画を探しに行かなくても、同じ思いを抱えている同世代からのメッセージに出会ってもらえるいい機会になるのでは」と期待します。
「誰かの発信が、誰かの救いになる」と考え、投稿される動画を楽しみにしているという金子さん。
「どの動画も、がんばって発信してくれただけで『伝えてくれたで賞』じゃないでしょうか。また、動画を見ることで何かを感じてくれることも素晴らしいこと。それだけでも『発見してくれたで賞』ですね」
生きづらさを抱える10代に、相談先を届けるための企画「#withyou」を2018年から続けてきた記者は、若者たちが日常的に触れているSNSでこのような取り組みが続けられていることを、非常に心強く感じました。
テキスト情報だけでは伝わりにくくても、動画や音声で、より伝わることは多分にあります。
様々な立場の大人たちが、それぞれができる方法で、「生きづらさを抱えている、あなたの力になりたい」と思っていることだけでも知ってもらえたらいいなと思っています。
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