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〝ポリ袋調理〟で注目の「アイラップ」 負担を減らしたい親のニーズ
ポテサラ・離乳食…時間を短く、洗い物を少なく
年々増えている共働き世帯。仕事と子育ての両立で忙しい親には、時間や労力をかけない「時短料理」も当たり前になっています。ポリ袋を使った調理レシピも発案され、子育て世帯で使われるケースが広がっているそうです。メーカーの担当者に話を聞きました。
「いま食品のポリ袋調理が脚光を浴びています。時短かつ『洗い物が増えない調理法』として話題になり、活用されています」
そう話すのは、ポリ袋「アイラップ」を製造販売している岩谷マテリアル(東京都)のツイッター担当者です。
発売から40年以上、「一部地域を除き、ほとんど無名に近いポリ袋だった」そうですが、近年はポリ袋調理の需要の高まりと共に、使われ方が「二極化」してきていると指摘します。
アイラップは、1976年に発売された高密度ポリエチレン製のポリ袋で、耐冷温度-30度~耐熱温度120度。発売当初は食品の温め直しや冷凍保存に使える商品として全国に流通していました。
その後、特許が切れて競合品や海外品が多数参入してきたことなどから売り場が徐々に縮小。しかし、新潟、山形、富山、石川、福井の日本海側5県では、地元スーパーなどの協力があり、「ポリ袋=アイラップ」の文化が根付いていったそうです。
もともと全国区の商品ではあるものの、一時は売り上げの75%が5県に集中していました。普及地では、漬けものを保存したり、食品をお裾分けする際に使ったり、保育園や幼稚園で着替えやおむつを入れたり、「ものを入れる」ことが中心だったそうです。
2018年、アイラップのツイッターアカウントが開設されると多くのユーザーの目に触れ、「何十年も前からポリ袋調理にぴったりなポリ袋があったんだ」と驚きと共に認知が広まりました。
担当者は、「東日本大震災以降、日本における『ポリ袋』自体の認識や地位の変化、鶏ハムなど低温調理ブームの広がりもあり、アイラップの再評価につながる下地が形成されていた」と分析します。
今ではポリ袋調理は、最小限の水で調理できる・洗い物も出さない点が注目され、災害時に応用できる「防災グッズ」としても浸透してきています。
SNSなどを通じてアイラップの認知度が上がった結果、2022年には関東への出荷割合が日本海側5県を上回ったそうです。
「普及していた地域での需要が減ったわけではなく、全体の出荷数が増え、新たにその他の地域の需要が伸びていました。普及していた地域では従来の使われ方が多いのですが、おそらく新規ユーザーの方はポリ袋調理としての需要が大きいのだと思います」
#アイラップ で備えよう…❗️
— アイラップ【公式】 (@i_wrap_official) May 13, 2023
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> #防災グッズ として使える袋 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
大切なのは…
_人人人人人人人人人人人人人人人_
> 普段使いとは別に確保する事 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄#防災 #地震 #ポリ袋 pic.twitter.com/C895FkUvdH
担当者は、ツイッターやインスタグラム、YouTubeなどを通して、ポリ袋調理での様々な使われ方を目にしています。
例えば、ポテトサラダ。切ったジャガイモをポリ袋に入れて電子レンジで加熱、そのままつぶしてほかの食材や調味料を入れてもみ込むだけで完成します。
野菜をアイラップに入れて電子レンジで加熱し、離乳食に活用するケースもあるそうです。
お弁当作りにも役立つという発信もあり、「主婦層やお子さんのいるご家庭で使われることが多いイメージです」と話します。
コロナ禍ではおうち時間が増え、お菓子作りの際に「アイラップに入れたクッキーの生地を子どもにもんでもらった」という声も。「子どもと一緒に何かを作るツール」にもなっていたそうです。
アイラップが調理や子育て層に広がっている背景について、担当者は「負担を軽減したい気持ちが根底にある」と分析しています。
「『手抜きではなく、手間抜き』という言葉がありますが、いかにめんどうな作業を減らせるかです。調理の時間を短縮できれば、別の家事に時間を使えます」
厚生労働省の2021年の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子どもがいる世帯のうち、核家族世帯は886万世帯(82.6%)。核家族世帯のうち、共働き世帯は594万世帯(67.1%)でした。
岩谷マテリアルの担当者は、「幼い子どもがいる共働きの親にとって、家事の時間を短縮することはとても重要視されます。SNSで便利な情報を探している人はたくさんいます。そういった方々にアイラップの存在が刺さっているのではないでしょうか」。
様々な使われ方が広がる一方、メーカーとして注意喚起するケースもあります。例えば、時短調理法として、アイラップに入れた食材とお米を一緒に「炊飯器に入れて炊く」行為です。
アイラップ【公式】のツイッターでは、くり返し注意を促すツイートを投稿しています。
「炊飯器での使用はとても危ない行為で、会社としても発信しなければなりません」と担当者。「パッケージに注意書きがない」という指摘も受けたそうですが、想定外の危険な使われ方をすべてパッケージに記載するのは現実的ではありません。
メーカーが想定していなくても便利で安全な使い方が広がることは歓迎しつつ、以下の3点は必ず守ってほしいとしています。
担当者は「これからも危ない使い方には注意喚起を続けながら、時短調理など役立つ使い方は見守っていきたい」と話しています。
※この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
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